地域環境をNPOと磨く 観光NPOの強力な体制作り 全国第一位鹿児島県

☆巻頭の一言

最近、テレビなどで、「困っている人を熱心に助けている」NPOのリーダーの方々の明るい積極的な発言を、特に良く聞くようになりました。この人達の発言は社会を明るくするので、みんなが前向きに元気になるのです。ですから、社会の中に、このような活動を、どんどん増やしていくのは、地域活性化にとって、とても良い方法です。

ここで引用した日経新聞では、人口百万人当たりの観光NPO数を算出して、活力のある明るい人の利用が進んでいる地域と立ち遅れている地域を識別しています。各地で自分の住む地域の消滅を心配している方々には、この指標を参考にしていただいて、自分地域の実情に合わせて、どしどし、この活動をレべルアップして行っていただきたいのです。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

2022年5月(№209)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(420) 地域環境 NPOと磨く 観光NPOの強力な体制作り 2022年5月20日

 

☆前書き

今日のブログ執筆で、参照引用した2022年4月9日の日本経済新聞は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「地方の観光振興の支えてとして、NPO法人(注1)の存在が重要になっている。人口当たりの観光NPOの数で、全国最多の鹿児島県は、旅行消費額の伸び率が全国平均の3倍だ。民間企業が採算面で参入しづらい地域で、独自の観光資源を磨きあげようとするNPOの知恵と熱意は、新型コロナウイルス禍で注目を集める「マイクロツーリズム(近場の旅行、注2)時代に生きてくる。」(参考資料1、2022年4月9日、日本経済新聞から引用)

 

☆解説

NPO法人は、特定非営利活動促進法(NPO法、注1)に基づき活動する非営利の民間法人です。活動分野は、医療、教育、災害救援など20分野あります。全国に5万超の団体があります。ここでは、観光振興を目的に活動する法人の内、事業目的を定める定款に、「観光」の記述のある団体を、「観光NPO」と定義しました。2022年3月1日時点で、761団体ありました。

都道府県別に、観光NPOの数を調べてみましたら、最も多いのは鹿児島県でした。高知や大分、徳島、秋田がこれに続きます。

こうして整理してみますと、民間投資を呼び込みにくく、観光振興を担う財政余力も限られる過疎地域ほど、観光NPOの存在感が大きい実体が、浮き彫りになります。自治体にとっては、民間企業よりも、非営利活動に法律のお墨付きがあるNPO法人の方が、連携しやすいのです。

 

観光NPOの数が全国首位の鹿児島県の状況について、まず、記述します。鹿児島県出水市のNPO法人「出水麓街なみ保存会」は、武家屋敷の指定管理団体としての業務のかたわら、地域の歴史を発信するイベントに力を入れています。特に、甲冑(かっちゅう)の着付けは、外国人にも人気が高いのです。地元で生れ育った、この保存会の川添健志理事長は「地域全体が観光資源です。生れ故郷の歴史や文化を、なんとしても遺したいです」と話していました。

鹿児島県を主な目的地とした日本人客の旅行消費額は、2019年に3820億円で、2010年比で2割増えました。伸び率は全国平均7%を、大きく上回っています。民間企業も、その集客力に注目して、武家屋敷の一部を、今年6月には、1泊2万5000円以上のホテルに、生れ変わらせる計画を進めています。

 

観光NPO数が全国第二位の高知県も、地域に眠る自然を、観光資源に劇的に変貌させています。2021年度の顧客の集客が2018年度の50倍になったスポットがあります。その客の9割は県内客です。

これは高知県越知町を拠点に、仁淀川支流でカヌー体験を手掛けるNPO法人「仁淀ブルー」です。底が見えるほどの透明度を誇る清流の「SNS映え(注3)」のスポットとして、人気を集めています。このツアーの参加費には地元のカフェ「池川茶園」の飲食代を含んでいます。池川茶園の担当者は「活気が戻ってきた」と大喜びです。(2022年4月9日の日本経済新聞(上林由宇太、山下宗一郎)を参照引用して記述)

 

☆まとめ

このブログ執筆で参照引用した2022年4月9日の日本経済新聞には、人口100万人当たりの観光NPO数を示す図(注4)と「人口減が進む自治体ほど観光NPOは多い」と題する図表(注5)が掲載されていました。確かに、人口減が特に著しい苦しい自治体ほど、観光NPOの数は多いのです。これらの図・表から読み取りますと、以下の諸点が言えると思います。

(1)人口百万人あたりの観光NPO数が最も大きい(観光NPO数 15以上)地域は、鹿児島県と高知県です。この2県は、人口減少からみると減少率は大きいグループに属しています。

(2)人口百万人あたりの観光NPO数が、次に多い地域(観光NPO数13〜15)は、沖縄、岩手、山梨、静岡、和歌山、愛媛の7県です。この各地は、総じて人口減少は、厳しい状況にありますが、観光NPOの活動は非常に活発な地域です。

(3)一方、人口百万人あたりの観光NPO数が、最も少ない地域(観光NPO数:4未満)は、神奈川、埼玉、愛知、大阪、福岡の5地域です。この地域は、人口が増えている地域です。ですから人口減少の恐怖感は、それほど切迫していません。観光NPO数は少ない状況です。、

(4)残りの地域(人口百万人あたりの観光NPO数4〜13)は、地域再生の対策から考えると2群に分かれると思われます。すなわち、観光NPO数7〜13で、人口減少がー3〜―6%の第1群と、同数4〜7で人口減少がー1〜―4%の第2群です。

(5)この第1群に属している山形県、長野県、福島県、京都府、山口県は、地域創生の様々な活動で頑張っており、私のブログにも、しばしば登場しています。でも、その割には、この観光NPOの記事では、いま一つ目立たなかったとも感じています。

ここで、もう一度再点検して、一気に活動を活性化していただきたいのです。日本国民も、今、ようやく、このようなことが凄く大事だと、深く理解してくれるようになりました。今、国民との一層の対話を深める絶好のチャンスです。頑張ってください。

(6)第2群の中には、人口減に対する危機感が、まだ、希薄な地域もあるかもしれるせん。今、強力な啓蒙活動が必要だと感じています。ここで、手をさしのべれば、元気な先導者が飛び出してくる地域が続発するはずです。

 

最近、テレビでも、各地の各産業社会で活躍するNPOのリーダーの、明るい溌剌とした話を、良く聞くようになりました。この人達は、社会を明るく元気にしてくれる人達です。次世代に向けて、このような人達・集団を、どんどん増やして行かねばなりません。みなさん、この活動に積極的に参加しましょう。(2022年4月9日の日本経済新聞(上林由宇太、山下宗一郎)を参照引用して記述)

 

(注1)NPO法人=特定非営利活動法人:1998年(平成10年)12月に施行された日本の特定非営利活動促進法に基づいて特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、同法の定めるところにより設立された法人である。

(注2)マイクロツーリズム:自宅から1時間から2時間圏内の地元または近隣への宿泊観光や日帰り観光を指す。マイクロツーリズム商圏内の人口規模が小さい地域もあるが、リピート利用の潜在性は高く市場規模が小さいとは限らない。繰り返し利用してもらう仕組みを持つことで持続可能で安定したマーケットになる。

(注3)SNS(Social networking service):Web上で社会的ネットワーク(ソーシャル・ネットワーク)を構築可能にするサービスである。SNS映え:SNS上で評価される写真をSNS映えと言う。

(注4)人口100万人当たりの観光NPO数を示す図:NPO法人数は内閣府の資料より3月1日のデータを取得。人口は2021年1月1日時点。

(注5)「人口減が進む自治体ほど観光NPOは多い」と題する図表:人口増減率は2020年と2015年の比較。国勢調査をもとに作成。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年4月9日

 

[付記]2022年5月20日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(419) 地域維持に生活圏集約 先頭を走る鹿児島 追う兵庫 山口 2022年5月17日

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

冒頭で「地域をいかに自立させるか」を徹底的に議論し、この活動を全国に広げた鹿児島県鹿屋市柳谷集落「やねだん故郷創生塾」の取り組みが紹介され、この塾の参加者からは、幾多の先導者が生れまれ、さらに「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定につながったことが紹介されています。

地域の住民300世帯が出資して、株式会社を設立した兵庫県神河町長谷地区も紹介されています。

住民の送迎・宅配サービス・高齢者の安否確認など、生活の利便を支える多くの活動を農協から引き受けています。ホームページを見ますと、「楽し、珍し、美味し、美し」とあり、魅力があふれています。眠っていた宝の掘り起こしが凄いです。鹿児島県鹿屋市柳谷集落も兵庫県神河町長谷地区も共通するのは、住民がひとつになって徹底した議論でしょうか。

長野県伊那市長谷地区内の高齢者などにドローンで食品や日用品を宅配する仕組みは今後いろいろな形に発展、普及していくのではと思います。

 

酒井秀夫

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