2026年頭にあたって 塾頭 本郷浩二

□ 椎野潤ブログ(塾頭 本郷浩二 年頭所感)

皆様、輝かしい新年を迎えられたことをお慶び申し上げます。

今年は、閣議決定計画である森林・林業基本計画の改訂の年になります。急転直下の政局のおかげで、スケジュール的に令和9年度以降の予算要求の基本方針になる骨太の方針の前に閣議決定できるかが厳しくなってしまったように思いますが、林野庁ほか関係者の皆様のご努力を期待したいと思います。
現行の計画は、5年前に私が林野庁にいるときに策定したものでしたが、想定より早く新設住宅着工数の減少が進んでしまい、木材需要量は伸び悩んでいます。この先、住宅需要のV字回復は見込めないように思いますので、それを踏まえた施策が課題になります。
国産材の供給量は燃料材の急増により増加傾向ですが、おおどころの住宅着工数の減少を受けて、製材・合板・パルプチップ材などの用材供給量は減少しており、令和7年度目標を大きく下回りそうです。
このような供給側にとって苦しい状況ですから、まずは需要拡大をどう図るかということが課題です。現行計画では、主に横架材の国産材シェアの拡大、非住宅建築物・中高層建築物の木造化・木質化、木材(製品)輸出を掲げていましたが、次期計画で何か新しい術が見いだせるかどうかが注目されるところです。
木材を使ってもらうための手段として、SHK制度やLCC算定など、企業の建築物関係において、二酸化炭素の排出や環境負荷が少ない木材を積極的に使うといった観点が昨年大きくクローズアップされました。今年はその発進の年になるでしょう。二酸化炭素問題よりは、木材が人に与える心理的、身体的な良さを強調したいところですが、企業等には数値化がなにより重要なようですので、その研究開発もお金をかけて急ピッチで進めて欲しいものです。
木材製品の輸出は、アメリカに対して、フェンス・デッキ材に加え、いよいよ本丸になるツーバイフォー建築部材としての輸出が昨年始まりました。まだ先駆けといったものですが、アメリカで認められることで、住宅産業と連携してアジア、オセアニア諸国へのツーバイフォー建築部材の輸出として広めていくことも進めていかなければなりません。
このような取組の推進はこれからも重要ですが、量ではなく、価値を拡大するという方策もあります。手入れが十分に行われてきた人工林から生産される木材の利用に対して付加価値の高い利用や製品の開発を発案することや、パルプチップ材や燃料材になってきた広葉樹材を建築や生活空間にもっと取り入れる取組を進めて、国民の関心を得ていかなければなりません。
しかし、いかんせん日本の経済力、国民の消費力が縮んでしまっている中では、これからはどちらも拡大よりも持続に視点を移すべきなのでしょう。基本計画が国の計画であるからには、経済の成長という国全体の方向性から外れるものを主流にはできませんが、そのような成長・拡大と違う観点で実行することにはビジネスチャンスがあると思います。現行計画では地域競争力と位置づけはしましたが、その政策的取り組みは残念ながら開花していません。今後、持続をキーワードとして展開していく道を開いていかなければなりません。
持続が国際的な産業活動の原理として定着するかは、資本主義あるいはグローバル経済の行先の中でどのように位置づけられるかによりますが、それを待たずとも、人口がどんどん減っていく日本は、この世界の中でどう経済、社会、文化を保っていくのかということを考えなければなりません。
以前にも書いたように、日本における人口が減り、労働者が高齢化し、減っていくという人手不足時代には、過去の人口が多い時代の人海戦術を中心とした対応を続けることはできないのです。無人・省人の機械、AIなどの手段を用いて、少ない人手で事業を実行しなければなりません。量の拡大はサプライチェーン全体が量の拡大に対応できる態勢を整えなければならないので、普通には難しい対応を伴います。ですから、自ずと量の拡大ではなくて、持続という観点で人手の抑制と生産物価値の拡大を図る対応が主流とは違う形で取り組まれることが必要となるでしょう。
主流と異なるということは個別個別の取組になりますから、政策として一般化するのは難しいのですが、別の観点に拠って立つ他省庁や自治体の政策も利用して、そのような方向性の行動が現在の木材利用の閉塞状況を破り、これまでにない需要の創出や地方の森林経営の再生に向けて様々なやり方で取り組まれていくという具体的な指針が打ち出されると良いと思う年頭です。

参加者の皆様の本年の大駆けとご多幸をお祈りしております。
どうぞよろしくお願いいたします。

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