地域の消滅を防いできた国家創生総合戦略 これに基づき全国に作られた 小さな「創生拠点」 先頭を走ってきた鹿児島県 追う兵庫県・山口県

☆巻頭の一言

今日のブログは、このブログを書いて感受した深い感動を、この「巻頭の一言」に、先に書きます。それは以下です。

まず、その感動の第一は、鹿児島県の中山間地域(注1)に散在する小規模集落の中で「このままでは、わが地域は消滅してしまう」という大きな危機感を持ち、強い心で活動を進め、これを全国に広めてくれた人たちがいたことです。

鹿児島県鹿屋市柳谷集落で、2007年に発足した「やねだん故郷創生塾」に、深い感謝の念を持ちました。これが出発したのは、今から14年前です。私が鹿児島県鹿児島市のベンシステムと一緒に「鹿児島建築市場」の構築を進めていたのは、2004年ごろでした。同じ鹿児島で同じ頃です。当時、当事者は、お互いに知り合っていたかもしれません。

この塾の凄いところは「自らの集落内の活動」を、集落内だけに止めず「地域をいかに自立させるか」を徹底的に議論し、この活動を全国に広げたことです。この塾の参加者からは、幾多の先導者が生れました。広島県神石高原町の入江嘉則町長など、地域活性化を先導してくれた首長を5人も輩出しました。これが、今日の日本の地域創生に与えた影響は大きなものであったと思われます。

国はこれを受けて、今から8年前の2014年に、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しました。このブログで全国展開を紹介した「創生拠点」という名の拠点作りが、ここから各地に広がったのです。今、全国の中山間地=中山間地域(注1)で、各地の人達の必死の努力が重ねられています。日本各地の地域創生活動は、こうして拡大してきたのです。

この発祥の地鹿児島県は、現在、創生拠点の増加率で、ダントツトップを走っています。日本国・日本人は、みんなで、今後一層、これを学ぶべきです。

 

創生拠点増加率2位になった兵庫県にも、学ぶべき点は多いのです。私が、兵庫県から学んでいるのは、兵庫県の増加率第2位は、県自治体が誘導して実現していることです。

この兵庫県と県職員の懸命な努力もあって、兵庫県神河町長谷地区では、地域の住民300世帯が出資して、株式会社を設立しました。

この会社は、中山間地(=中山間地域、注1)の人口が減少し続ける中で、農協が撤退せざるを得なくなった日用品販売やガソリンスタンドの運営を引き受け、住民の送迎・宅配サービス・高齢者の安否確認など、住民の不安の解消をはかり、生活の利便を支える多くの活動を引き受けました。さらに、町役場支所の職員が撤収したあと、住民票など証明書交付業務を町から受託しています。株式会社を自ら作って、自らの困り事を自ら解決しようとした住民は、もとより、凄い人達なのですが、役所の壁を取り払い、そこへ誘導した自治体と職員も、また、凄い存在なのです。

近年の日本では、人口減少で地域の維持が難しくなってきている処の中で、周辺地区と協力して機能集約化し、活性化に成功している地域が増えています。今日は、これを取り上げてブログを書きます。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

2022年5月(№208)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(419) 地域維持に生活圏集約 先頭を走る鹿児島 追う兵庫 山口 2022年5月17日

 

☆前書き

今日のブログ執筆で、参照引用した2022年4月2日の日本経済新聞は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「少子高齢化が進むなか、地域の利便性の維持には機能集約が欠かせない。国が進める中山間地=中山間地域(注1)を中心とした創生拠点は現在、全国に1408カ所ある。2016年度から倍増した。牽引する鹿児島県や兵庫県では、空き家を活用した拠点などを整備し、雇用も創出した。最新技術を使った新たな取り組みも始まりつつある」(2022年4月2日、日本経済新聞から引用)

 

☆解説(1)

中山間地=中山間地域(注1)は国土の7割を占める一方で、全人口に対する居住人口は、約1割です。小規模集落が分散していることもあり、コミュニティや生活インフラの維持は容易ではありません。国は、改善を目指し2014年、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、「創生拠点」を定義しました。周辺集落などと協力して「市場」を広げ活性化を狙っています。

創生拠点は2021年時点で、わずか5年前の2016年比で、1.9倍となりました。拠点を構成する生活圏は、1カ所あたり平均15.1集落で、2291人です。国は、2024年度までに、市町村版総合戦略と位置付けた拠点を、1800カ所に増やすことを目標にしています。

 

創生拠点の増加数のベスト10を、都道府県別にみますと以下の通りです。(2016年度から2021年度に至る増加数)

 

2016年度(カ所数) 2021年度(カ所数)  増加数(カ所数)

(1)鹿児島   89         165           76

(2)兵庫    35          80           45

(3)山口     0          43           43

(4)島根    58          99           41

(5)大分    31          66           35

(6)栃木     2          35           33

(7)長野    16          48           32

(8)宮城     5          36           31

(9)広島    32          63           31

(10)高知   31          58           27

 

このベスト10を見ると、鹿児島県がダントツのトップです。鹿児島県が、この活動を始めたのは、今から14年前の2007年です。随分、歴史が長いのです。このような活動は、やはり、長年月を要します。

また、ここに顔を出して入っている10地域は、地域内の就職活動を積極的に推進して、住民の収入を増加させている常連の自治体です。

人口減少は、今後も続きます。どの地域でも、対策せずに放置しておけば、活性が失われて行くことは間違いありません。熱意のある自治体と住民がいる地域が、生き残って行けるのです。

 

☆解説(2)

このブログ執筆で、参照引用した2022年4月2日の日本経済新聞は、小さな創生拠点の増加数で、第一位と二位になった、鹿児島県と兵庫県について、その地域創生活動について、細かく記述しています。以下に参照引用します。

 

鹿児島県の東串良町柏原地区では、2016年、郵便局が撤退したことを機に、簡易郵便局業務の運営を受託し、周辺30集落の拠点としました。新たに地域住民を雇用したほか、空き店舗を活用した食品などの販売も始めました。高齢化が進む住民を支えるため買い物代行業務も担います。また、同県の鹿屋市上小原地区では、地区内の17集落が「上小原ふるさとの会」を結成しました。担い手不足で消滅の危機にあった伝統芸能「棒踊り」を継承しようと、共同で人材を確保しました。これが、鹿児島県の地域創生の実質的な本格活動の開始です。

 

でも、私が、ここで特に強調して書きたいのは、鹿屋市の柳谷集落での活動です。ここでは、自らの集落内の活動に止まらず「地域がいかに自立する仕組みをつくるか」を徹底的に議論し、活動を全国に広げたのです。

今から14年前の2007年に発足した「やねだん故郷創生塾」は当初、県内自治体職員を対象にしていましたが、次第に、県外からも塾生を集めるようになりました。現在は、塾生らが中心となり、特産品を生かした商品開発や古民家の活用を進めています。

この活動の参加者からは、広島県神石高原町の入江嘉則町長ら5人の首長を輩出しました。入江町長は、2016年に就任後、農業従事者の高齢化で売り上げ減が深刻となっていた「道の駅」の再建を主導し、郷土料理レストランを設けたり、観光協会を併設したりとリニューアルを推進しました。このような、首長たちが先導して、日本の地域創生は、ここまで進んできたのだと、私は思います。

 

兵庫県では、県が旗振り役となって拠点作りを後押ししています。2019年度〜2021年度に、500を超える地域団体に、最大100万円を支給して、再編などを促しました。

同県神河町長谷地区では、地元農協が、日用品店やガソリンスタンドの運営から撤退したのをきっかけに、地域の300所帯が出資して株式会社を設立しました。この会社が、各店舗の運営を引き継ぐとともに、生活上の不安を解消しようと、利用者の送迎・宅配サービスや高齢者の安否確認など、事業を多角化しました。町役場支所の職員が撤収したことを受け、住民票などの証明書交付業務も、町から受託しました。

 

地域の課題解決に向けて、最新技術を活用しようとする動きも広がりつつあります。長野県伊那市長谷地区内では、買い物が難しくなった高齢者などに向け、2020年8月に、ドローンで食品や日用品を宅配する仕組みを本格導入しました。午前中に注文すれば、夕方には近隣の公民館に、注文品が届きます。(2022年4月2日の日本経済新聞(瀬口蔵弘、笠原昌人、田村峻久)を参照引用して記述)

 

☆まとめ

日本全国各地の中山間地=中山間地域(注1)で、どこにも住民株式会社が出来て、役所も、商業者も、消費も、みんな自分達でやれるようになると、日本の中山間地域社会の目指すべき未来像は、まことに、希望を持てる姿になるでしょう。日本国と日本人が総力をあげて、これに向って進むべきです。(2022年4月2日の日本経済新聞(瀬口蔵弘、笠原昌人、田村峻久)を参照引用して記述)

 

(注1) 中山間地=中山間地域:日本における地域区分のひとつで、平野の外縁部から山間地にかけての地域を指す。日本の国土面積の約7割を占めている 。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年4月2日

 

[付記]2022年5月17日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(418) 林業の再生と山村復興への挑戦 対談 文月恵理VS塩地博文 再造林への道筋(その2) 2022年5月13日

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

海外でもサプライチェーン構築に一生懸命取り組んでいます。しかし、水平型のサプライチェーンは、会社ならば、意思が働き、利益は社内で分配されるのですが、業界となると多数の利益相反者、利害関係者がからむために、なかなかうまくいかないのが実情です。

そこで、文月さんの「垂直型協同組合」の発想です。地域で、再造林や森林資源の維持のために、関係者が協同して一つの組織となり、その利益を森林資源に優先して戻します。

儲けられる仕組みとして、塩地さんは、地域内木造建築需要を押さえて、収益性を高め、その利益を原資とすれば、林業従事者にも応分の利益が回ってくるとしておられます。さらに、誰もが納得し、地域で暮らす人達の暮らしを安定させるために『共益』の思想が提言されました。共益がなければ、森林資源の維持も活用も進まないとのことです。森林は個人の財産であっても、その公益的機能から社会で維持していかなければならないと思います。

資源を貿易に頼る弱さや、為替変動などのリスクを経験し、いま林業を見直すチャンスにあります。日本ではこれから人口減少が確実にやってきます。話を戻して、是非とも「垂直型協同組合」を実現したいです。

 

酒井秀夫

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