林業担い手「脱3K」若返り図る 林業若手中心に新たな流れ NPO法人「熱海キコリーズ」

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年6月 (№116)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(327) 林業担い手「脱3K」若返り図る 林業若手中心に新たな流れ NPO法人「熱海キコリーズ」 2021年6月25日

 

☆前書き

林業を次世代林業に先導している牽引者を発見しました。「熱海キコリーズ」です。また、このような先導者たちを見付けて書いてくれている新聞記事を見付けました。それは2021年6月1日の日本経済新聞(夕刊)です。今日は、これを取り上げてブログを書きます。まず、この記事の「書き出し文」の引用から始めます。

 

☆引用

「担い手の若返りを進めようと、林業を手掛ける各地の会社や団体が、「3K(きつい、汚い、危険)」からの脱却に本腰をいれている。兼業を認めたり、海外製の作業着を採用したり・・。実際、若者の割合は増加傾向にあり、取り組みは、徐々に効果を顕していると言えそうだ。(参考資料1、2021年6月1日、日本経済新聞(夕刊)から引用)

 

☆解説

静岡県熱海市の山中の木を伐採している異色の林業集団「熱海キコリーズ」に、私は、特別の注目の眼を向けています。熱海キコリーズの最大の特徴は、20人のメンバー全員がもう一つ別の仕事をしている点です。代表の能勢友歌さん(39)は「異色の人が関わることで、発想が多様になる」とその意義を強調されています。

能勢さんは、この勤務形態を、「副業」と言わずに「兼業」と言っています。すなわち、「本業」があって「副業」があるのではなく、「本業」が2つあるのです。これが、この集団が、この上なく最大にユニークなところです。

また、能勢さんは、2拠点居住(デュアルライフ、注1)の生活をしています。これを、私は2021年5月11日のブログ(参考資料2)に書いていますが、これは、最近、にわかに注目さてきた生活様式です。

でも、能勢さんは、2016年から、既にやっていたのです。結局、2拠点居住の大先導者なのです。そんな先見の明がある能勢さんが、牽引してきた「熱海キコリーズ」は、凄い集団に違いありません。

能勢さんの熱海での居住は週末の2日だけです。でも、能勢さんの第一居住地は、熱海でしょう。何故なら、能勢さんとって、「熱海キコリーズ」は、生涯を懸けているものなのですから。東京居住の若い人の中で、東京を第2居住地にする人が現れたのも、ごく最近です。能勢さんは、ここでも前例破りです。結局、「熱海キコリーズ」は、次世代林業に向けた偉大な先導者なのです。

でも、このような次世代林業を誘導する取り組みが、各地で始まりました。東京都あきる野市の森林整備業「山武師」は、都会的な雰囲気の海外製の作業服を導入しました。格好い森林作業者の働く姿を、会員制交流サイト(SNS)に掲載しています。今、それに夢多き若者が集まっています。

私が、2021年3月2日のブログ(参考資料3)で、ネット討論した、和歌山県田辺市の造林ベンチャー(株)中川の中川雅也さんも、この記事にとりあげられていました。

中川さんは、このネット討論の中で、「木を伐らない林業」という「深い言葉」を述べておられました。林地残材の活用に力を注いでおられます。すなわち、バイオマス発電所まで、ガソリンを使って運ぶのではなく、もっと近い、スモールエリアでの地産地消を着実に実施していたのです。

また、苗木・資材の運搬ドローン「いたきそ」を開発し、見事に若者の安全労働を確立し、重労働を削減しました。若者の働きたい職場を作りました。これまで多かった、林業職場での若者の離職を止めました。コロナ危機の到来で、若者の入門希望が急増しています。記者の問いに答えて中川さんは「今いる若手も、将来は独立して、それぞれの形での林業をして欲しい」と期待を述べておられました。(参考資料1、2、3を参照して記述)

 

☆謎の団体「熱海キコリースズ」の徹底探検

私は謎の団体「熱海キコリーズ」に、いよいよ、興味津々となりました。それで、これの徹底探検に出かけました。

ユウカ団長(能勢友歌さん)が、みなさま(日本のコンシューマー)に、わかりやすく話しかけた文章が2つあります。「熱海キコリーズ(参考資料4)」と、「謎の団体熱海キコリーズの徹底解剖(参考資料5)」です。ここでは、これを引用させていただいて書きます。

なお、私は、本文の「解説」では、「兼業」の一語に感動し、「キコリーズの本業」と「もともとの本業」を、「2つの本業」と書きましたが、ユウカ団長は、「(団員の)みなさまには、さまざまな本業があり、副業で「週末キコリ集団」(で働いている)」と書いておられます(参考資料5)。ですから、ここから後は、そのように書きます。解説の記述とは言葉を変えます。

 

[熱海キコリーズのメンバー紹介]

熱海キコリーズのメンバーの本業に、凄く興味が湧き、調べてみました。資料としては、謎の団体「熱海キコリーズ」の徹底解剖(参考資料5)のメンバー紹介欄から、引用しました。結果は、以下です。

 

氏名          本業             得意技

(1)能勢友歌   広告業/企画プランナー   間伐、森林管理、体験メニュー

リーダー・ユウカ団長、プロデューサー、営業、広報、ゆるキャラ、宴会部長…. なんでもこなす。

(2)大橋 弘道   コンピュータエンジニア   ツッコミ切り、火おこし

我らが副リーダー・大橋さん。冷静沈着に、きめ細やかにチームを率いってくれます。

(3)黒葛原 慶  ロミロミサロン&スクール経営、      玉切り

(4)三宅大樹       造園業              抜倒

(5)太田大翔      大工 内装業            森林浴

(6)山元和香子   造園業 福祉施設職員      木工体験インストラクター

(7)山内健生      看護施設長             受け口

(8)馬場咲綺   木材コーディネーター/営業      さわやかな笑顔

(9)渋谷美恵子     中古車販売           伐採後の枝払い

(10)海津雅弘      造園業             ロープワーク

(11)小松慎司      設備保全              薪割り

(12)いとう伸      自営業            古家と段々畑の再生

(13)田中雄一郎     特殊伐採          満載の背負い子で斜面上り

(14)加茂雅隆      不動産業            林業技能と環境保全

(15)川合一成      FT社員            工作とお絵描き

(16)石井友子      竹細工職人         軽やかに動くこと 力仕事

(17)山上 剛    Webデザイナー           林内高速移動

(18)大泉 裕    フォトグラファー        これからみつけます

(19)磯崎裕生     内装デザイン        間伐材のヒノキの素敵な活用

 

☆まとめ

団長の能勢友歌さんには、次世代の産業社会を見る眼があります。集団を導く方向性がはっきりしています。副団長の大橋弘道さんは、現職のコンピューターエンジニアです。最高のカップルです。

メンバーの「本業」は多彩です。大工・内装業、竹細工職人がいます。山で取れた資材で、すぐ、何かを作ります。木材コーディネーターの専門家もいます。木材産業の改革を考えてくれるでしょう。

造園業、不動産業は、家作り、マチ作りに強いでしょう。フォトグラファーも、内装デザインや造形が得意な人もいます。皆が力を合わせれば、次世代林業の創生は、ずんずん進むと思います。

また、みんなが働いている職場には、事業を支えてくれているお客様がいます。みんなは、週末の熱海での体験を、お客様にも話すでしょう。聞いた人達は、日本の森と国産材のファンになっていきます。

このキコリーズが、全国各地に広がっていけば、日本は、日本の森・国産材の愛に満ちた人々で溢れていくでしょう。これは日本の未来にとって最高です。私は「熱海キコリーズ」を、全国に拡げたいと強く思いました。

 

(注1)デュアルライフ(dual life):都市と農山漁村を行き交うライフスタイルを意味する和製語。 二地域生活、二拠点居住ともいう。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年6月1日(夕刊)。

(2)椎野潤(続)ブログ(313) 2拠点居住(テュアルライフ) 地方に活力 郊外自治体 若者呼び込む  2021年5月11日。

(3)椎野潤(続)ブログ(293)林業再生・山村振興ブログ 林業・山村スタートアップの先導者たち(その1)株式会社中川 2021年3月2日。

(4)「熱海キコリーズ」メンバー紹介(ネット情報)。

(5)謎の団体「熱海キコリリーズ」を徹底解剖(ネット情報)。

 

[付記]2021年6月25日。

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