企業 コロナで都心脱出 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年6月 (№115)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(326) 企業 コロナで都心脱出

2021年6月22日

 

☆前書き

地域にある諸資源を使って活動する地域企業(コミュニティ・ベースド・カンパニー、CBC、注1)が、全国各地に誕生しています。2021年5月30日の日本経済新聞は、これを記事に書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。

 

☆引用

「企業立地の都心一極集中が転機を迎えている。日本経済新聞が国税庁のシステムを使って国内企業の所在地情報を分析したところ、2020年度に東京都心から本社を移転した企業は、2019年度に比べ2割以上増えた。資産を持たない中小サービス業を中心に郊外や地方都市に拠点を移す動きが目立つ。コロナ禍で進んだ働き方の変化が企業の移転を促している。(参考資料1、日本経済新聞、2021年5月30日(朝田賢治、宗像藍子)を引用)

 

☆解説

国内企業が本社所在地を変更した場合、会社法は変更登記を義務つけています。日本経済新聞は、国税庁の「法人番号公表サイト」の機能を使い、2019年1月以降に所在地を移転登記した39万件を対象に、移転先を分析しました。東京都区部から外部に移転した企業数は、2020年ごろから急増しています。2020年度の転出数は、6700社で前年度比24%増えました。都区部への転入数は4600社で、転出が4割以上多いのです。大阪市から市外への転出は、前年度比23%増、名古屋市は15%増と他の大都市でも流出が加速しています。

2020年以降の都区部からの移転先をみると、都心への距離が適度な郊外を選ぶ企業が多いのです。最多は横浜市の770社で、川崎市、さいたま市、埼玉県川口市が、上位に並びます。

横浜市に転出した機械メーカーは、テレワークが増えたことで2020年10月に移転しました。社員は30人で、通勤などの交通アクセスの良さが決め手になりました。

那覇市などのリゾート地のほか、宇都宮市や茨城県つくば市など、鉄道の便のよい首都圏近郊の都市も目立ちます。神奈川県鎌倉市のように、IT企業の移転誘致策を打ち出している自治体も上位に入りました。

また、日経新聞は、2020年度に都心から移転した企業の業種を調べています。経営コンサルタントが570社と最多で、ソフトウエア開発受託は380社でした。都心に事業所がなくても、オンライン対応ができる身軽な業種から移転が進んでいます。

規模別では、中小企業が多かったのです。日経が財務データを入手できた1328社のうち9割が、売上高100億円未満でした。100億円を超す企業は、コネクター大手のヒロセ電機や茶専門店のルピシアなど22社と少なく、移転先に工場などの拠点が既にある企業が中心でした。

 

☆まとめ

企業が移転すれば、自治体にとっては、地域経済の活性化や法人住民税の税収増につながります。コロナ禍での移転需要をつかもうと自治体も誘致に動きます。

横浜市は条例を改正し、2021年4月から助成対象となる企業規模を、従業員100人以上から50人以上へと緩和しました。IT関連企業などの移転が増加し、同市の担当者は「中規模の企業は意志決定が速い」と手応えを感じています。

2020年12月に埼玉県所沢市に移転したソフトウエア開発のクリアコードの南慎一郎取締役は「もともと東京西部に住む社員が多かった上、IT企業も利用できる助成金があったことがきっかけになった」と話しています。同市には、2020年4月以降、クリアコードを含む46社が都心から移転しています。」(参考資料1、2021年5月30日、日本経済新聞(朝田賢治、宗像藍子)から引用)

 

所沢市は、もともと、都心に通勤する人達の居住地でした。でも、地域で事業を運営する中小企業も多かったのです。ここへ、最先端AI(注1)、IoT(注2)を駆使して、新しい事業を展開するソフトウエア開発会社などの本社が、都心から移転してきました。そうなると、この地の次世代に向けた進化は、急加速すると思われるのです。

市当局が、移転してきた46社にヒヤリングして、移転してきたあと「市が対応してくれると、事業拡大の楽しみが増えるところ」を聞くと良いのです。市がこれに対応し、各社の事業の拡大が始まれば、この評判は、瞬く間に拡がり、地域の活性化はさらに促進されます。そして、これは永続的に続くことが期待できると思います。

このような処は、全国各地に多数あります。国としても、積極的に取り組むべきです。これは地域創生の最高の国家戦略のはずです。(参考資料1、2021年5月30日、日本経済新聞(朝田賢治、宗像藍子)を参照して記述)

 

(注1)コミュニティ・ベースド・カンパニー(CBC、地域企業):地域にある資源や人材を生かして、共感をひろげながら活動する企業や団体。

(注2)AI(artificial intelligence)=人工知能:「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。人の頭脳の代わりに、記憶し考える機械システム。

(注3)IoT(Internet of Things):モノのインターネット:あらゆる「モノ」がインターネットで接続され、情報交換により相互に制御する仕組み。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年5月30日。

 

[付記]2021年6月22日。

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