首都圏1都3県、山梨県、空き家率改善した処 悪化したところ

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年6月 (№114)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(325) 首都圏1都3県、山梨県、空き家率改善した処 悪化したところ 2021年6月18日

 

☆前書き

今回は、世界に誇る大都市東京と、これを囲む地域の空き家の推移を観察してみましょう。関東地方と山梨県に的を絞って、2013年から2018年までの間で、空き家が順調に減った地域と逆に増加してしまった処を、分析します。

2021年5月29日の日本経済新聞が、これを記事に書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。まず、この記事の書き出しを引用します。

 

☆引用

「2018年の関東1都6県と山梨県の空き家率(注1)は、山梨県が21.3%とトップで、栃木県17.3%、群馬県16.7%と続いた。一方、東京都や近接の千葉県、神奈川県、埼玉県は、10%超。2013年比で1都3県と山梨県以外は悪化し、栃木県は、最も数値が悪化した。数値は賃貸向けや別荘も含むが、1都3県と周辺県で問題の深刻度に開きがある。」(参考資料1、日本経済新聞、2021年5月29日を引用)。

 

☆解説

引用文が指摘している空き家率の改善と悪化を、さらに明確化するために、以下のように、8都県の中の優等生と遅れた処を、順位付けして示してみました。

 

順位 都道府県  改善幅ポイント 2018年の空き家率

1 山梨県   0.7(改善)  21.3(%)

2 埼玉県   0.6(改善)  10.2

3 東京都   0.5(改善)  10.6

4 神奈川県  0.4(改善)  10.8

5 千葉県   0.1(改善)  12.6

6 群馬県  −0.1(悪化)  16.7

7 茨城県  −0.3(悪化)  14.8

8 栃木県  −1.0(悪化)  17.3

(注)改善幅は前回調査(2013年)との比較

 

すなわち、山梨県は、ダントツに優秀で、その下に東京と隣接3県が続き、東京から離れた地域は遅れています。具体的には、以下です。

 

改善幅(ポイント)の第一位は、山梨県でした。山梨県は、空き家を活用し、地域活性化に貢献する事業を認定する「空き家活用事業認定」制度を、2020年4月に始めました。複数の空き家活用や複数市町村での実施見込みを条件として、これまで県内外の事業を認定しています。甲府市内でシェアハウスに再生された物件が運営されています。また、所有者が空き家を認定事業者に賃貸する際の改修費を、上限500万円まで補助する制度も導入しています。これも既に、複数の交付決定が出ています。この制度の出だしは順調で、改善幅のポイントは0.7と、この記事に登場した都県の中で第1位になりました。

第2位は埼玉県でした。埼玉県では、新型コロナウイルス禍で、テレワークが注目され、移住希望者に、空き家の活用を促す動きが拡がりました。埼玉県小川町では、町内への移住希望者に空き店舗を仲介する「移住サポートセンター」を設けました。そして、東京圏からの移住を促そうと、テレワーク勤務の移住者への助成制度を開始しました。移住希望者向けの空き家内覧会を開くなど対策を進めています。

少子高齢化が急に進む秩父地域では、秩父市や横瀬町、小鹿野町など5市町が共同で「ちちぶ空き家バンク」を開設しました。豊かな自然や池袋駅から特急で70分というアクセスの良さもあり、同バンクに登録され、2020年度に販売・賃貸された町内の物件は急増し、前年度の2倍になりました。

第3位の大都市東京都でも、都内の僻地で面白い実例が生まれています。東京都奥多摩町では、2020年4月、老朽化が激しく、住居としての活用が難しい空き家の無償引き渡しを仲介する「0円空き家バンク」制度を始めました。町の中心部から遠く「10〜20年以上放置された物件」なのです。でも、その全てに引き取り手が現れて、修繕などを経てアウトドア拠点や、アトリエ、飲食店として使われることになったのです。

第4位は神奈川県です。神奈川県の空き家率は、0.4ポイント改善しましたが、戸数で見ると空き家は48万戸で、都道府県別で全国3番目に多いのです。所有者が不明だったり、所在が分からなかったりする空き家は、増加傾向です。県は市町村と情報を共有して、鋭意対策を進めています。

千葉県は、東京に隣接する3県の中て、改善幅のポイントでは最下位ですが、県としての取り組みは、一番進んでいます。千葉県では、県や市町村が参加して、「すまいづくり協議会空き家等対策検討部会」を定期的に開催しています。所有者不明の空き家の対処法に関する手引きを整備しました。また、空き家の実態把握調査を市町村が行う場合、事業費の4分の1を補填します。県として熱意を持って進めている千葉県は、これから改善幅の実績が増大してくるだろうと、私は感じています。

この記事に取り上げられている地域の中で、改善幅がマイナス組の茨城県にあって、立派な業績をあげている市町村があります。茨城県常陸太田市です。常陸太田市は、上限100万円でリフォーム費用の半額を助成し、家財処分にも20万円補助する制度を空き家バンクとともに展開しています。延べ100軒以上が登録し、うち7割以上が成約しています。(参考資料1、2021年5月29日、日本経済新聞を参照し記述)

 

☆まとめ

空き家を地域活性化事業の柱にする発想に至った山梨県は空き家を活用した地域創生で立派な成果をあげていました。また、県としては、改善幅はマイナス組に止まる茨城県の中にあって、茨城県常陸太田市は、市として空き家活用の立派な実績を遺していました。

2013年から2018年までの空き家率の改善活動では、優等生であった1都3県は、それぞれ、努力が重ねられていましたが、どの都県をみても、都をあげて、県をあげて、目標をさだめて、全面的に一致団結する動きには、まだ、至っていません。各都県内で、団結して進められるようになれば、もっと、大きな動きを生み出せるはずです。これにより、空き家に着目した地域活性化は、凄く大きなうねりになると思われます。さらに、日本各地の中核都市とその近隣県で、このような動きが産まれれば、日本の地域活性化(山村振興)は、大きく前進します。1都3県の強力な連携による、次世代への爆進を熱望しています。(参考資料1、2021年5月29日、日本経済新聞を参照し記述)

 

(注1)空き家率:空き家の総住宅数に対する比率。空き家の数を総住宅数で除した数値。

(注2)改善幅:2018年の空き家率を2013年の空き家率と比較した増減値。改善幅の数値(+)=改善。(−)=悪化。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年5月29日。

 

[付記]2021年6月18日。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です