林業で一戸町に火を灯す-柴田産業

□ 椎野潤ブログ 株式会社 柴田産業 代表取締役 柴田 君也

岩手県一戸町で林業から製材・建築まで一貫して手掛ける柴田産業、会社を率いる柴田君也社長に、北信州森林組合の堀澤氏が話を聞きました。

堀澤:北信州森林組合で働く中で、林業ICTの活用や建築までの一貫生産など、柴田産業にとても興味を抱いていました。今日はよろしくお願いします。最初に、御社の創業から事業継承まで、またその際のご苦労などについてお聞かせ頂けますか。
 
柴田:もともと祖父がやっていたのは土木と採石の仕事です。それで少し土地を持っていたところに、ある人が製材をやりたいから土地を貸してくれと言ってきたのです。しかしその人は途中で廃業してしまい、そのタイミングで祖父と父が林業を始めました。30年前にはハーベスタを購入していて、国内でも相当早い取り組みだったと思います。
 私は大学を出て2年ほど仙台で商社マンをしていましたが、遊ぶ余裕もなく、実家に帰れば少しはマシだろうという軽い気持ちで戻りました。経理を担っていた母が祖母の介護をするようになり、自分が引き継いでみると、全く収支があわず、赤字続きだと分かりました。父は頭が切れて技術も高かったが、経営にはまた別の資質が求められるものです。そこからは、いかに山の資源を現金化するか、そのことで頭が一杯でした。今から25年ほど前、30歳前後のことです。
 売り上げを伸ばしたくても、製紙会社へのチップ納入は序列が決まっていて、自分達に価格決定権はありません。製材品の売り上げを伸ばすために、畜産に手を伸ばすことにしました。鶏舎や豚舎などの非住宅は一般住宅用のプレカット加工機に向かないので、自分達で機械を自作し、カラマツなどの地域材を活かせるように「ブーメランフレーム」という工法を開発しました。地域の中で最大限、お金にすることを考えてやってきました。

堀澤:なるほど、今につながった経緯が見えてきました。続いて取り組んでおられるCTL(短幹集材)などについてお伺いできますか?

柴田:簡単に言えばキャタピラかタイヤか、という話です。国内の多くの現場ではクロウラー式の機械が使われていますが、もっと生産効率のいいハーベスタとフォワーダーのシステムが欲しいと考えて採用しました。しかし7,500万円もするハイランダーを買うか、そのお金で普通のハーベスタを2台買うかは悩ましいところです。専務がチャレンジしたいと言うのでハイランダーを一台購入しましたが、十分に活用できていない面もあります。その後中古でもう一台購入し、グレモの10トン(フォワーダー)と組み合わせて運用しています。

堀澤:各部門で働く方の人数はどんな内訳ですか? また現場の課題はどんな事でしょうか。

柴田:社員は全部で50人、山が15~16人、製材・プレカットと建築で20人、チップ製造が3人、他に運転手や事務員がいます。問題は人、全てはそこです。各部門に非常に優れた部門長がいる反面、意思疎通が難しい場合があります。山には一番投資していて、本来なら6万m3くらい生産できるスペックがあるはずなのに、実際は4万3千m3に留まっています。世の中には、機械の故障とか雨だとか、できるはずの事にすぐにブレーキを踏む人がいるのです。班員の意欲や安全面への配慮はわかりますが、生産計画を守らないと次の行程に支障が出てしまいます。口で言うだけでは改善しないので、山林部の生産計画・管理を事務部でサポートしています。現場生産のシステムは必要ですが、人材の育成ができてから社内に取り入れないとうまくいかないと実感しています。

堀澤:ブレーキを踏む人、自分にも経験があるのでよくわかります。森林経営に関してはどんな方針で臨んでいますか?

柴田:自社林は買い増しして500ヘクタールほどありますが、今後は誰かに保有してもらって管理だけする、1000ヘクタール規模のファンドとの契約も検討しています。

堀澤:地域に貢献する取り組みもなさっていますね。産業と地域の一体化についてお考えを聞かせて下さい。

柴田:単に、ここに住む人がいなくなったらうちの会社で働いてくれる人もいなくなる、それで町の困り事を相談できて、解決につなげられる窓口を作ろうと思いました。それが「鳥コ kid’s station」で、地域のみなさまや子どもたちの集いの場として運営しています。本来は行政のやる事なのですが、活動を通じて一戸に面白い会社があると思ってもらえたらそれもいいかなと。例えば空き家を何とかしたいと言われたら、うちには木材があり大工もいるのでリフォームできる。すぐには利益にならなくても、過疎化が進む鳥越地区に、小さな灯火を灯したいと思っています。他にも子育てハウスを10棟建築中ですが、そこにはペレットストーブを設置し、弊社で作るペレットを買ってもらう計画です。町の問題に行政が追いついていないので、民間の力が重要だと感じており、やれる事は全部やります。

堀澤:今後の展望とか、やりたい事はありますか?

柴田:大きな目標は特にありません。(会社や地域を)今より一個でも良くしたい、それを続けていくだけです。

                                           以上

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