サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2023 実施報告

椎野潤ブログ(伊佐研究会第14回)  サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2023 実施報告

 

紅葉に色づき始めた秩父の森で、10月28日(土)に「サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2023」を開催することが出来ました。参加者120名とスタッフを含め総勢約150名、そしてサザエさん、マスオさん、波平さん、フネさん、タラちゃんも加わった賑やかな植樹、製材所見学ツアーとなりました。「サザエさん」は長谷川町子作の国民的漫画ですが、今年の4月にサザエさん一家は、林野庁と長谷川町子記念館の協力体制構築のもと、森林資源の持続的利用を推進する「伐って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用の普及に関する「森林の環(もりのわ)応援団」を林野庁から委嘱されております。その関係を活かし、海にまつわる名前のサザエさん一家と一緒に森へ行き、都市部の人たちの手によって植樹をすることは、都市生活者と環境を支える森林を繋げ、木材消費者と木材生産を繋げるということで、とても有意義で未来に、そして全国へつながる文化的な活動になったと嬉しく思います。

横浜と秩父、海と山をつなぐ列車「S-TRAIN」の3両を貸し切りにし、参加者には「元町・中華街」「 横浜」「自由が丘」「渋谷」「所沢」いずれかの最寄り駅から乗車してもらい、その中では普段気がつかない様な海辺から街中、また里山へと景色が変化する中での木々、森の変化などにも目を向けてもらいました。飯能駅からはいよいよサザエさんも合流して車内で参加者と触れ合いながら目的地へと向かいます。

「S-TRAIN」の終点、西武秩父駅へ到着した一行を、秩父市の北堀篤市長や、秩父市のイメージキャラクター「ポテくまくん」が出迎えてくれ、大いに歓迎してもらいました。秩父は森林が市の面積の87%を占めます。北堀市長からは「森林を整備することで、森が水を蓄えて自然のダムとなり災害を防ぐだけでなく、森が水を浄化してくれるので環境にもやさしいのです」というお話しをいただきました。一同バスへの乗り、植樹地であるその秩父の山へ登って参ります。

植樹地は広葉樹が多い森の中で、埼玉県の施設の跡地の広場です。東京芸術大学名誉教授坂口寛敏先生のデザインのもと、去年植樹した木々もすくすくと育って若い森になり始めている隣に、今回の植樹エリアを設けました。27種類で400本を超える広葉樹の苗木を皆で手分けして植樹いたしました。植樹は生態学者であられた宮脇昭先生の「宮脇方式」にならい、その土地植生の複数の苗をまんべんなく近い距離で植える混植、密植型の植樹方法です。これは植えられた木々が共存しながら競争し合うことで、すみやかに植生が推移し、極相林(注1)が早く生成する方式でもあり、国内外で注目されている森づくりです。参加者がとても楽しそうに笑顔で植樹作業を行う様子は清々しく、それぞれポット苗をとても大事そうに両手で扱い、苗木たちもとても喜んでいるようでした。藁敷きなどもする植樹方式を一時間ほどみっちり行い、植樹エリアはさまざまな苗木で彩られ整然と美しいものでした。

昼食時にはサザエさん一家との触れ合いの時間があり参加者は嬉しそうに写真を撮っておりました。秩父経済新聞の記事(参考1)によれば参加された長谷川町子美術館川口館長は「サザエさんと山を訪れたのは恐らく初めて。海をきれいにするためには、海の上流の川、森、山がきれいでないといけない。日本一仲の良い家族で、海を連想させるサザエさん一家が海と山をつなげて、良い循環になれば」と話されたとのことです。また参加された埼玉県庁の方から、令和7年度の全国植樹祭が埼玉県秩父で開催されることの説明もありました。

植樹の後は、そばの森の中に場所を移し、ツアー監修をしてくださった東京農業大学の上原巌教授に森のお話しをうかがいました。多くが直線的なもので構成される都市部に比べて、森の中ではさまざまな曲がりでつくられる「ゆらぎ」によって副交感神経が刺激されてリラックスするということ。人に便利な同じ木だけが集まる土地は、特定の栄養分が取られて土が痩せてしまいナラ枯れなどの虫害の被害にも遭いやすくなること。さまざまな木を密に植えることで木が競争し、土の栄養も偏らず、病気にもかかりにくいことなど、多くのことを楽しく教えてくださいました。上原先生の話を聞いて皆で落ち葉の上に寝転がり森を全身で感じる時間はゆったりと豊かで、熟睡する男の子もいました。その後の森林アクティビティでは「木の赤ちゃん探し」を行いました。地面をよく見ると、どんぐりから芽を出したミズナラやアカマツの小さな木が生えていることに気がつきます。ある小さな女の子が実生(みしょう)の芽を見つけとても嬉しそうに教えてくれました。皆の中で一番評価が高い木の赤ちゃんを見つけた女の子には、先生から素敵な森の本のプレゼントが贈られました。

植樹地を後にし、最後は秩父地域にある創業100年を迎える製材所の金子製材を見学します。金子製材は、伊佐ホームズと木材のサプライチェーンづくりを協議し森林パートナーズ設立に関わった製材所でJAS認定工場です。ツアーのこれまでは木が植えられて育つこと、また森のもつ様々な機能についてでしたが、製材所では伐られた木を使う、活用することについての見学です。植樹をした広葉樹とは異なり、ここでは特に木造住宅の構造材として主に使われる針葉樹、スギ、ヒノキになります。金子製材金子社長より、ただ木を伐って加工すれば、活用できる木材になるわけではなく、必要な品質をいかに管理しながら加工するかの話しやJAS工場のこと、日本の森林が毎年育っている量と国内で使われている木材の量が前者の方が大きいのに国産材が使われていない実態のこと、森林パートナーズの取組みとしての林業低迷回復のために需要情報を山に届け六次産業化させる意義、などを説明していただきました。また新しい木材活用として「木のプール」に使う木の玉の加工なども見学しました。木造住宅に住む多くの参加者が、その木材がどのように生産、加工されているかを意外と知っていないことに気づき、興味深そうに工場の加工現場を見学しました。またプレゼントの木の玉を握ったり、香りを嗅いだりしてスギやヒノキを体感して楽しそうでした。閉会に際し共同主催の日本ウッドデザイン協会の松崎裕之代表理事は「植樹や製材所の見学など、普段はなかなかできない学びがたくさんあった。木材は生活に必須なのに、都会に住むと森の恩恵を忘れがち。なかなか木が使われていないが、次世代に森をつなぐためにも、木材の利用を促して森林の手入れをしていく。活動を続けて、他の地域にもつなげていきたい」と話されました。その後西武秩父駅で参加者皆様と笑顔で解散することができ、大成功の裡に幕を下ろすことが出来ました。

伊佐ホームズとして毎年植樹祭を続けて参りましたが、今年は日本ウッドデザイン協会をはじめ、林野庁、秩父市、長谷川町子美術館など他にも複数の関係者や企業さま、一般のお客様にお声がけをして、大きく前進した植樹祭「サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2023」となりました。秩父は荒川の上流であり、奥秩父の三峯神社には漁業で栄えた築地市場の寄進が最も多く目立ちます。秩父の山は江戸時代には御用林が広がり、江戸の町を支える木材生産地として管理されていました。戦後のさまざまな変化の中で、森林と都市部の繋がりが精神的にも経済的にも薄れております。林業の低迷を知り、木造住宅を設計施工する地域工務店の立場の伊佐ホームズとして、秩父の林業家と手を握り合い、秩父世田谷間で都市と森林の繋がりを強くするプラットフォームのモデルをつくり、日本の林業、木材加工業、地域工務店を元気にしていこうと森林パートナーズを設立いたしました。森林パートナーズ設立の会にご参加してくださった元森林総合研究所森林環境部長の藤森隆郎先生のご著書「林業がつくる日本の森林」に次のような言葉があります。「工業化社会が日本の生きる道であっても、一次、二次、三次産業のバランスの取れた文化国家を目指すことが大事である。それは美しい森、美しい田園、美しい街並みが誇れる地域であり国である。そういう所に暮らすのを誇れるような国にすることが大事である。」今回の植樹祭では美しい森と美しい街並みを支える木材加工を都市生活者である参加者に伝えることが出来ました。伊佐ホームズは美しい家、美しい街並みをこれからも追究してお客様へ提供して参ります。生き生きとした家族の象徴である「サザエさん」のような家庭はその住宅、街が育みます。美しい森、美しい家、街並み、美しい家庭をつくり、美しい文化国家日本となるようつとめて参ります。

(注1)植物群落が遷移を経て極相に達した林。群落全体で植物の種類や構造が安定し、大きく変化しなくなった森林。

(参考1) 秩父経済新聞https://chichibu.keizai.biz/headline/556/?fbclid=IwAR2g5GZokNj30PKwLyw2psDzRKOMSSgOgohfJd8gGshKNP0VUqdzP6FhJI0

 

まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二

大きなイベントの実施、お疲れ様でした。色々な方を巻き込んで、協力、参加してもらって実施した植樹祭は、きっと、これから何かを拓いてくれるのではないかと期待しています。

宮脇式の植林の大事なところは、植える際に土を丁寧にほぐして混ぜて(まじぇーると宮脇先生は仰っておられました)、土壌の物理性を大きく改良してから植えることだと認識していますが、今回はどうだったのでしょう。参加者にもそのことが伝わっていれば良かったと思います。それはたいへんな労力が必要な作業になります。木を植えることのたいへんさや、簡単に木が育つわけではないことも街や海の人たちにわかっておいてもらえたらなぁと思いました。

参加者が木材がどのように生産、加工されているかを意外と知っていないのは、ながらく学校教育でそのようなことを教えられていないからでしょう。それは木材に限らない話なので、我々木材関係者が努めていくしかありません。今回のような催しのほか、家を建てるという暮らしの中の大イベントの際に、山から建築現場に木材が届く工程を見てもらうような手間をかけることが大事なんでしょうね。たくさんの人の手がかかっていることを知れば、木材を大事にしてくれるのだと思いますし、愛着も沸くものだと信じています。

これからも、どうぞ、頑張ってください。

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