私は、2022年2月22日のブログで、古い研究「生きていることの徹底的な究明」を再発掘しました。そして、生物は環境と共生して生きており、地球は、生物と同様の営みを行っている存在であると見るとき、人類は生きている地球と共生して生きていると見るのが正しいと、強く再確認しました。
すなわち、人類が、永続的に生存していくことを望むのなら、地球に永続的に生き続けてもらわねばならないのです。
今、世界の人々が広く協力して進めている「脱炭素」やエネルギーの「再生可能エネルギーへの転換」などは、そのための大きな運動の流れです。
日本人は「京都議定書」の時は、別人のように、このことの重要性を認識できて、俄かに力強い活動を開始し、世界の人たちを驚かせ、世界の人たちは、日本人に大きな期待を寄せました。そしてまた、別人のように、消極的になり、世界の人々を失望させました。
新型コロナの到来で、これまで遠い未来の世界のように見えていた次世代の社会経済が、ぐっと身近に近づいてきている今は、大いなるチャンスです。日本人は、ここで、一気に覚醒しなければなりません。日本人は、これが出来る人種なのですから。
林業再生・山村振興への一言(再出発)
2022年3月 (№187)
□椎野潤(新)ブログ(397) 次世代産業社会へ 脱炭素抜本改革戦略 そのためにスタートアップを徹底的に育てる 脱炭素に貢献するスタートアップに投資する特化型ファンドの拡大に期待する 2022年3月4日
☆前書き
世界の経済社会が、戦後永きにわたり、順調に拡大基調で推移してきたのは、米IT巨大企業5社、アップル,アルファベット(グーグルの子会社)、マイクロソフト、フェースブック、アマゾン・ドット・コムの存在が甚大だったのです。
これらの各社の創業者たちは、歴史上に残る、幸運に恵まれています。創業者たちは、学生時代、創業時の資金不足の大ピンチにあったとき、有名な「エンゼル投資家」に出会えたことが、幸運だったのです。彼らは、この難関を乗り越え、世界を代表する大企業に成長しました。そして、奇跡的に成長した5社が、世界経済を永きにわたり、安定的に成長させたのです。
日本は、今、コロナで打撃を受けた経済を、なんとしても大復活させねばなりませんが、今、ここで、日本国内に「エンゼル投資家」が続々と湧出してくれる奇跡が起きてくれないかと、祈る気持ちで願っていました。でも、その奇跡が起こりそうなのです。 私は、これに大いに喜こびました。それでこれを取り上げて、ブログを書くことにしたのです。
2022年1月26日の日本経済新聞は、これを取り上げて記事を書いていました。記事は以下のように書いています。
☆引用
「脱炭素に貢献するスタートアップ(注3)へ投資する特化型ファンドが広がってきた。ベンチャーキャピタル(VC、注4)のANRIは、運用額100億円規模を目指すファンドを新設した。環境関連技術を意味する「クリーンテック(注1)」への関心が高まるなか、トヨタ自動車やKDDIも脱炭素戦略の一環で設立している。」(参考資料1、2022年1月26日、日本経済新聞から引用)」
☆解説
トヨタ自動車とKDDIは、脱炭素戦略の新事業を拓く、若いスタートアップを募集しています。これは、奇跡の到来とは言えません。日本国内でしかるべき立場にいる大企業が、未来に向けて最も重要な処に、先頭を切って乗り出してくれたのです。
トヨタは、自社の経営戦略を支援してくれるスタートアップ(注3)を探しています。水素の製造や貯蔵、輸送など、自社の脱炭素戦略の事業に関連して、新しい発想を見付けてくれて、事業化の道を開いてくれるスタートアップ、さらに、トヨタの戦略の一部を担ってくれるスタートアップの有望な若者を探しています。
KDDIが新設した資金提供組織(ファンド、注2)は、50億円規模です。KDDIは、データセンターや基地局の省エネルギー化対策を、進めようとしているスタートアップへの投資を、積極的に開始しました。
私に、奇跡の到来を予感させたのは、ANRIです。ANRIは有望なスタートアップに専門に投資する投資家を発掘するベンチャーキャピタル(注4)です。同社は、脱炭素に貢献するスタートアップに投資する「投資家」を発掘し、その人たちの投資金を、新時代の開拓を目指す「開発者のスタートアップ」に投資する特化型ファンドを立ち上げました。
ANRIの鮫島昌弘ジェラルパートナーは、このファンドの設立の狙いを、以下のように述べています。「グローバルで通用するクリーンテック(環境関連技術、注1)企業を日本に作る」。すなわち、その視点は、広く世界の市場を見つめており、かっての米国の「エンゼル投資家」と共通点を持っています。
既に、関西電力のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC、注4)のK4ベンチャーズなどから約40億円を集めました。投資先との相乗効果を見込める電力・ガス会社や電機メーカーなどに引き続き、出資を募っています。
ANRIの自らのポジションは、有望スタートアップへの融資を考えている人の資金を集め、これを有望スタートアップに投資して、これを育てることを目指しているベンチャーキャピタル(注4)です。ですから、トヨタやKDDIのような「作る人」、「売る人」とは、基本的に違うのです。
すなわち、まず探すのは資金を求めているスタートアップではなく、有望スタートアップに出資したいと考えている出資希望者を探しているのです。ここでは、かっての「エンゼル投資家」とは、全く違うのです。かっての「エンゼル投資家」は、事業に大成功して、巨額な大資産を持っており、資金投資者を発掘する必要はありませんでした。
さらに、ANRIは、大学などで有望な研究成果を探し、スタートアップの新会社設立を促しながら、投資対象を発掘します。今の日本にとってこのような投資姿勢のファンドが、最も重要なのです。しかも、このような新しい発想の事業の、出発早々の成果としては、運用額100億円は、取りあえず巨額で見事なのです。凄いスタートアップが登場しました。
この人たちの目指しているのは、次世代で主流になる、これまでには存在していなかった事業領域です。このような事業者が、ぞくぞくと生れて来るようになるのは、新しい時代の幕開けです。
☆まとめ
私は、最近のブログでは、「企業が生きているかどうか(参考資料2)」に強い関心を持って書いています。また、そのような「生きている会社」の経営者は、人として「システムとして生きておられる方」だと思います。
そう考えるとKDDIは「生きている会社」に違いありません。不確定な環境への対応力があるはずです。自己組織化が、社内で、ぞくぞくと生れているはずです。また、その自己組織化が起ることが出来るように、企業組織の内部に、「未完結」な部分を温存しているはずです。すなわち、管理(統制)は、完璧は目指さず、あえて、緩く行うのです。
透明情報が、絶え間なく発信されているはずです。また、自社を未来へ向けて導いて行く道を直視しており、それに出来るだけ合わせて行くように指導しているはずです。すなわち、フィードフォワード制御が行われています。
そして、会社の経営トップは、ご自身も人間として「システム的に生きている」人であるに相違ないのです。
また、有望なスタートアップへの先行投資を考えている人たちも、「生物の生きている条件」と同様の「生きているモノ」の要素を多く持った人が多いでしょう。ですから、「システムが生きていることの徹底的な解明」を充分に勉強しておけば、巷の奥に隠れている投資志向者を発見するのが、きわめて、容易になると思います。
このようなことですから、投資を受けたいと希望するスタートアップ方々は、「生きているモノ」の条件に合致するように、自己研鑽を重ねて行くと良いでしょう。
「生きていることの徹底的解明」は、これからの新時代のリーダーの育成にとって、きわめて重要なテーマなのです。そして、これらが全て、現実に実現されて行くとしたら、日本で「エンゼル投資家が、ぞくぞくと生れる奇跡の時代」が到来します。
(注1)クリーンテック:環境関連技術(日経)。再生不能資源を使用しない、または利用する量を抑制した製品やサービス・プロセスを開発すること。
(注2)ファンド (fund):基金、資金。
(注3)スタートアップ:新しく設立された会社・企業のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社・企業。
(注4)ベンチャーキャピタル(venture capital:VC):将来成長が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業に投資する組織。ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のこと。ベンチャー企業:新しい技術やアイデアを使って、消費者や他の事業者にサービスを提供したり商品を販売したりする企業。キャピタル:事業の元手。
参考資料
(1)日本経済新聞、2022年1月26日
(2)椎野潤(新)ブログ(395) 過去の研究(その1)生きていることの徹底的な究明(1) 生物的システムの特徴 2022年2月22日
(3)清水博著:生きている状態とは何か(増補版4版)中公新書、1996年6月
[付記]2022年3月4日。
[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]
[指導を受けたブログ名:民間フォレスターによる市町村支援事業(その3) フォレスターズ合同会社が、市町村林務に対して、どんな支援ができるのか(2) 2022年3月1日]
大谷恵理様
ブログ配信ありがとうございます。
森林経営管理法が施行され、森林環境譲与税が市町村に譲与されることになりました。市町村にとってはその負担も大きいと思いますが、地域を熱くしていく大きなチャンスだと思います。そこに森林総合監理士が結集したフォレスターズ合同会社(フォレスターズLLC)が設立され、その設立説明会に60名を超える方が申し込まれたとのことで、強力な応援団ができました。
森林総合監理士1人ではオールマイティではありませんが、小森さんのような組織がチームワークを生かして伴走者になり、市町村を引っ張ってくれると、これからいろいろな成功事例が生まれてくるのではと楽しみです。
酒井秀夫