再生エネルギーによる電力を熱に変えて貯蔵 コスト電池の 1/5 「蓄熱発電」 米スタートアップ 脱炭素促す

☆巻頭の一言

脱炭素のもう一つの課題は、「火力発電」を「風力発電」や「太陽光発電」に切り換える対策です。それには、大幅なコストダウンが必要です。今ここに救世主が現れました。

再生可能エネルギーで生成した電力のコストを劇的に低減させる、凄い技術の開発が進んでいます。それは「蓄熱発電」です。

 

林業再生・山村振興への一言(再出発)

 

2022年3月 (№188)

 

□椎野潤(新)ブログ(399) 再生エネルギーによる電力を熱に変えて貯蔵 コスト電池の1/5 「蓄熱発電」 米スタートアップ 脱炭素促す 2022年3月8日

 

☆前書き

2022年1月21日の日本経済新聞は、この記事を報じていました。今日は、これを取り上げます。

 

☆引用

「太陽光や風力発電など天候が出力を左右する再生可能エネルギーでつくった電力を熱などに変え、電池の5分の1のコストで大量にためられる「蓄熱発電」の大規模施設が2024年に登場する。独シーメンス系や、米アルファべットから独立したスタートアップが担い手だ。電力を数日ためて再生エネ出力を平準化する。脱炭素に向けた有望なテックとして注目を集めそうだ。」(参考資料1、2022年1月21日、日本経済新聞から引用)」

 

☆解説

蓄熱発電は、電力を熱や化学エネルギーに変え、玉石などに蓄えます。再び発電する際には、熱から水蒸気を作ってタービンを回すなどをします。蓄電コストは、現時点で1キロワット時あたり約1万円で、リチュームイオン電池の5分の1です。設備を大型化すれば、さらに安くなります。

再生可能エネルギーは、天候で出力が変動します。電力は需要と発電量を一致させないと停電が起こります。そのため出力の調整が必要です。2010年代の後半に、欧州を中心に、再生エネルギーの普及が急速に進んだ頃、高価な蓄電池では電力を支えきれずに電力が余り、ほぼ無料で市場で取引される例が増えました。そのようなことから、今、蓄電池の代替え手段として、安価な蓄熱発電が注目を集めています。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、リチュームイオン電池の価格は、2020年には現在の1/3にまで安くなると予測していますが、それでも蓄熱発電の方が安いのです。

先頭を走るのはアルファベットの研究所から独立した米スタートアップのマルタです。2021年に、カナダのNBパワーと同国東部に、1ギガ(ギガは10億)ワット時の電力をためる施設を建設すると発表しました。これは、2024年の稼働を目指しています。規模は、5万〜10万所帯が1日に使う電力に相当する電力量です。

欧州諸国では、様々な取り組みが行われています。独シーメンス・エナジーの子会社でスペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーは、2020年代半ばに、コンクリートの建物内に並べた大量の小石に熱を蓄える施設を建設します。熱した空気で水蒸気を作り、タービンを回して再び発電します。(2022年1月21日本経済新聞を参照引用して記述)

 

☆まとめ

蓄熱発電は、熱を玉石などに貯めるといった、大昔からある地味な技術です。これが、次世代をになう中核技術になると確信し、一途にこの道を歩いてきた米スタートアップの創業者も、まさに、「生きているシステムの心(参考資料2)」を持った人だと驚嘆します。この人は、苦しい環境の中で営々と生き続け、ついに大発展した特別な生物そのものです。

米スタートアップ、マルタの創業者、ラミヤ・スワミナサン最高経営責任者(CEO)は、「この技術によって、二酸化炭素排出の実質ゼロの未来へ移行させることができる」と断言しています。この人は、河原で玉石を拾ってきて熱する。こんな、ごく地味で普通なことを日々積み重ねて、小さな実験プラントを経て、効率的な設備や運用を可能にして、商用施設が出来る段階まで登ってきたのです。

この創業者は、未来に実現される理想社会を明確に見定め、日常生活を常に合わせるフィードフォード制御(注1)を、毎日実施して生きているのです。それは、河原から玉石を拾ってきた日がら、一貫して続いてきました。普通の人のように、「こうすれば、これだけ儲かる」というフィードバック制御ではないのです。

また、この経営者と周辺に集まる人たちの間に、小さい「自己組織化(注2)」が日々続発していたはずです。「5年間、毎日、失敗してきました」と微笑みながら、こともなげに語っていた、九州の森林組合の名物流通部長を、思い出します。この人が毎日失敗してきたということは、毎日、小さい成功(自己組織化)を達成してきたと言うことです。

そして管理(統制)は、完璧を目指さず、常に緩く行ってきたのです。すなわち、この人の活動システムの中には、常に「自己組織化」が生じることが出来るだけの余裕があり「未完結」なのです。私は、ここでも九州の名物部長を見た気がしました。このような人でないと、このような地味な仕事の積み重ねによる大改革は実現できません。

これから未来に向って、AI・IoTなどの先端技術が先導する時代になりますが、このような「生きている」リーダーが、周囲の人々に「自己組織化(注2)」をうながす「生きている集団」も、各所に無数に生成し、次世代を担っていくと思います。

みなさんの周囲にも、いろいろ、現れはじめているでしょう。探してみてください。

 

(注1)フィードフォワード制御:目的を定め、これを達成するあるべき状態を推定し、これと合わせる制御。

(注2)自己組織化(self-organization):物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たないのに関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のこと。自発的秩序形成とも言う。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年1月21日

(2)椎野潤(新)ブログ(395) 過去の研究(その1)生きていることの徹底的な究明(1) 生物的システムの特徴 2022年2月22日

 

[付記]2022年3月8日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:次世代産業社会へ 脱炭素抜本改革戦略 そのためにスタートアップを徹底的に育てる 脱炭素に貢献するスタートアップに投資する特化型ファンドの拡大に期待する 2022年3月4日]

 

大谷恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

エンゼル投資家は原石を見いだす眼力を持っていました。しかし、それではもう柳の下にドジョウはいませんから、有望スタートアップに出資したいと考えている出資希望者を探しているベンチャーキャピタルが現れました。すごい発想です。

対象はこれまでには存在していなかった事業領域です。そのお眼鏡にかなうには、「システム的に生きている方」!、前回のブログに登場された塩地さん大谷さん達のような「みんなで笑って未来に向って前進している仲間集団」だと思います。

 

酒井秀夫

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