ぎふ フォレスター協会設立 岐阜 小森胤樹さんの次世代林業を目指した活躍 (その3)

林業再生・山村振興への一言(再開)

2020年9月(№31)

 

□椎野潤(続)ブログ(242)なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか(その3) 目的とゴール 2020年9月1日

 

☆前書き

今日のブログは、前回の続きです。今回は小森胤樹(注1)さんから「ぎふフォレスター協会」の目的とゴールを、伺います。(聞き手=椎野潤)

 

☆インタビュー

[今日は、「ぎふフォレスター協会」の目指す方向性とゴールを、お話していただけますか]

「ぎふフォレ協」の目的は大きく二つあります。 市町村林務行政支援体制の構築と組織化 岐阜県地域森林監理士及び森林総合監理士としてのスキルアップです。

 

市町村林務行政支援体制の構築と組織化

森林総合監理士基本テキストに書かれているように、われわれは「地域の森林・林業の牽引者(リーダー)として、企画立案、合意形成、構想の実現について、市町村を支援すること」が期待される存在であると考えています。

フォレスターとして活動していく中で、われわれは民間フォレスターであることに、その存在価値を顕したいと考えています。これは依頼していただければ、どこででも仕事ができるということです。今の人事制度を変更しない限り、異動の無いフォレスターとして、公務員がその任に就くことが出来ないからです(奈良県は異動の無い公務員フォレスターを奈良県フォレスターアカデミーで、本年度から育成することを発表した)。 われわれは、依頼してくれる限り継続的に支援をしていきたいと考えています。

日本の森林は、全国の地域によって、 植生も異なり状況も異なります。われわれの知識で、すべての市町村にアドバイスができるとは考えていません。理想は各都道府県に民間フォレスターの組織が存在することです。しかし現状は、そのような状況ではありません。

 

われわれは、全国に仲間を増やしていくことが必要だと思います。現状から考えると、全国の市町村が、その地域に依頼できる民間フォレスターがいない場合は、われわれを含め、他地域から呼ぶしか方法がないのです。でも、その場合でも、その地域にも、将来フォレスターに「成り得る人材」は、居るはずです。そこで、その人達と一緒に、市町村の林務行政の支援を行うのです。

しかし、われわれは将来にわたって、地域に、ずっと異動なく居続ける人間ではないのです。その「成り得る人材」と一緒に仕事をすることで、バトンタッチしたいと考えています。

また、スピード感もって仲間を増やしていく、もう一つの方法は、定年退職する行政フォレスターが地元に戻る際、民間フォレスターの立場で市町村の仕事をすることです。この「インタビュー記事」をお読みの森林総合監理士の資格をもつ、行政フォレスターの皆さんは、その時が来たら、是非その任に就いて欲しいと願っています。

 

前倒しで配布されている森林環境譲与税は、15年が経過して、2035年になりますと、継続的な地域の森林監理の財源として定着します。この頃になると、都道府県に民間フォレスター組織があり、それを統括する全国組織が存在するレベルにまで到達すると思います。私は、これを一つのゴールと考えています。

民間フォレスターは、将来的には、しっかりとした資格制度になるべきだと考えます。すでに述べたように、 日本の各種資格のポジションは曖昧です。現状は、林業の現場技能者から始めて、キャリアアップしていく制度設計になっているでしょうか。 キャリアアップとは、明確な技術と能力に裏付けされて、それに見合った給与が得られるということなのです。

現在、地域林政アドバイザーの制度を利用して、 フォレスター的役割を委託しようとする市町村は多いようですが、その委託業務の単価はフォレスターの能力を正当に評価しているのかには疑問があります。

 

岐阜県地域森林監理士及び森林総合監理士としてスキルアップ

個人で活動していると、情報の入手や スキルアップの方法に、どうしても困ります。岐阜県地域森林監理士や森林総合監理士の資格試験に合格したら、もう充分と言うことではありません。ここがスタート地点なのです。

 

森林、林業の分野は、関われば関わるほど、多様な分野の知識が求められます。多くの知識を持っていないと、対応できません。自分の基盤(ベース)を引き上げ、多様なニーズ に応えることができるように、その任を辞すまで学習が続きます。

「ぎふフォレ協」として、技術研鑽のための情報収集と研修会を実施していきます。一般社団法人として、志を同じとする会員を増やしていき、同志会員5人が、その人たちとともに、切磋琢磨していくことを目指しています。

 

日本は人口減少社会に入りました。今後は、これまで経験したことのない社会になっていきます。私が林業の世界に入った2002年(平成14年)と、現在を比べると、世界が森林資源に求めているものは、著しく大きくなりました。 日本の国土の68%を占める2500万haの森林、その内、1000万haを占める人工林を、この減少する林業従事者で維持管理していけるのでしょうか。林業の業界に、他の業界と遜色ない安全管理、雇用管理、キャリアアップ制度が用意されることが、今、極めて重要です。個々人の頑張りだけを頼りにしていたのでは、人は長くいてくれません。

民間フォレスターが林業界を、キャリアアップできる職業に、いち早く育てないと、この業界には、若手が来てくれなくなると、私は強く危惧しています。(聞き手=椎野潤)(参考資料1から引用)

 

☆まとめ

小森胤樹さんは、全国に先駆けて、民間フォレスターを組織化し、フォレスターとは、どんな役割を担う組織かを、実例をもって示してくれました。全国の困っている市町村が、これに助けられ、大いに勢い付くでしょう。私が応援している「林業再生・山村振興」も、強力な牽引者を得ました。

 

(注1)小森胤樹:一般社団法人 ぎふフォレスター協会代表理事、森林総合監理士、岐阜県地域森林監理士、林業技士(林業経営)、郡上エネルギー株式会社 代表取締役、株式会社郡上割り箸 代表取締役。

 

参考資料

(1)小森胤樹:なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか、2020年8月。

 

[付記]2020年9月1日、椎野潤記]

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