塩地博文寄稿ブログ [建築の近代化]大型パネル事業の進展 (その4)  建築・建材DXの萌芽

☆巻頭の一言

今日は、塩地ブログ第4号の報告です。塩地さんは、大型パネル作りを全面的にデジタル化しました。さらに、このデジタル化の波は、外装・屋根・内装・床・天井へと波及していきます。(椎野 潤記)

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年12月(№158)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(369) 大型パネル事業の進展(その4)建築・建材DXの萌芽 2021年11月19日。

 

☆前書き

 

☆引用

「大型パネル事業の進展」〜建築・建材DX(注1)の萌芽     文責 塩地 博文

 

大型パネル事業の事業進展は、「普及のための武器を整備し、地域事業者に理解してもらう活動を行い、事業実績を積み上げる」段階を卒業しました。大型パネル生産パートナー会の加盟社は100社に近づき、ウッドステーションの呼びかけに多くの事業者が賛同しています。次に目指すステージは、林業再生・山村振興という本ブログの根幹テーマへの挑戦であり、その具体的な内容は「林業の再生と循環を促し永続化、持続化させるシステムの開発」です。また、そのシステムの「運用と維持」です。でも、掛け声だけでは、森林・山村は再生も振興も実現しないのです。ウッドステーションでは既に、システム開発に着手しています。

 

そのシステム設計に入る前に、事業設計について以下のように感じていました。数々の木材サプライチェーンシステムが生まれては、使われずに放置されています。公費も使われているのにも関わらず、デジタル化が進んでいないのです。中には、多層的になっている流通を改善する目的でシステムを開発しながら、その流通費よりシステム費が上回って使われない場合もあります。「IT費用に奪われて、実のあるシステムが不在だ」との感想を持ちました。

概算の数字ですが、木材建材市場は10兆円規模で、木材、それも国産木材の市場総額は2000億円程度と思われます。2000億円の経済規模のシステムであれば、相応のコスト負担が生じるのは当然です。また国産材事業者は規模が小さく、負担費用的には、これを抱え込むことはできません。償却見通しの立たないシステム開発になってしまいます。10兆円の市場と重ねて、木材建材と国産木材とを合体するシステムを考えれば、システムの負担費用の割合は格段に縮小するはずだとの仮説を立てました。

 

ここでは国産材が主語であるシステム設計ではなく、『国産材も主語の一つであるシステム』が必要なのだと、私は過去を振り返って総括しました。

 

既に「WSpanel」という独自ソフトウエアを開発し、設計情報の連動に成功した事は、本ブログでもお伝えした通りです(参考資料2、3、4)。この「WSpanel」を、先ずは「国産材だけでなく、建材に繋げてみる事から開始する」との構想で、システムの全体設計を開始しました。

 

それは、外装・屋根分野です。その市場規模は1兆円内外と思われます。残念ながら、この分野においても、国産材と同様に、「歩留まり率の低さと現場廃棄品の多さ」という課題を長年抱えています。「WSpanel」で生み出した「施工図」では、構造躯体を頼りに施工・加工する外装・屋根分野が連動する必然性が高いのです。躯体情報が無ければ、外装・屋根の施工図は出来上がらないのです。言い換えれば、大型パネルが無かったために、外装・屋根分野までも非効率になっていたのです。

 

早速、外装・屋根分野での現状調査を行い、その実態を把握しました。これは事業情報であり、その詳細は割愛しますが、調査結果は想定通りでした。「WSpanel」を応用すれば、たちまち外装・屋根分野は、デジタル処理に切り替わり、現場加工、現場廃棄という無駄が一掃される事がわかりました。

 

この結果を内装材メーカーにも情報開示しており、強い賛同を得ています。これを推進していけば、外装・屋根に留まらず、石膏ボード、床材等々に一気に拡散していくはずです。

大型パネルは、アナログ情報をデジタル化し、それをソフトウエア(WSpanel)までにグレードアップさせたものです。それは施工図のデジタル化です。その施工図は、躯体(大型パネル)と連動して成立する領域です。具体的には、外装、屋根、内装、床、天井とデジタル化のウエーブを連動させるシステムです。

 

[デジタルウエーブ]

スタジアムの観衆は、横から押し寄せるウエーブを次の観衆へと繋いでいきます。それと同様の情報連動が実現したのです。大型パネルは木造躯体という核をデジタル化しました。その外側、内側、上、下でデジタル化が始まっていくのです。その効果は、「歩留まり率の改善」「現場廃棄の減少」「物流の効率化」「職人手配の効率化」などへ拡大し、利益という形でシステムをより強化させていくのです。言い換えるなら、システム費用の負担者が急増しているのです。

 

このように、『国産材も主語の一つであるシステム』の開発を企図しています。そのシステムの受益パートナーの中に、国産材メーカーだけでなく、建材メーカー、物流企業、加工企業も招聘しようと思っています。(参考資料1、塩地論文から引用)

 

(注1)DX(デジタルトランスフォーメーション、digital transformation、略語DX):トランスフォーメーション (transformation): 物の形態、外観、性質などをかえること。変革・変形。デジタルトランスフォーメーション: デジタル技術で事業を変革すること。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの。略語がDXである理由は、「Trans」を「X」と略すことが一般的な、英語圏の表記に準じているため。

 

☆おわりに

塩地さんは、大型パネルを中核にして、家づくり全体をデジタル化して行きます。これにより、家づくりの効率化は極に達し、合理的になります。日本中の木造住宅生産者が、これに学んで動き出せば、日本の未来の産業・社会に明るい灯が灯ります。(椎野 潤記)

 

参考資料

(1)塩地博文著:「大型パネル事業の進展」〜建築・建材DXの萌芽、2021年11月30日。

(2)椎野潤(続)ブログ(275)大型パネル事業のサプライチェーン構築により「大工」救済「国産材」復活  塩地博文著「大型パネル事業とは何か」 2020年12月29日。

(3)椎野潤(続)ブログ(276) あけましておめでとうございます 2021年 夢拓く大型パネル、 2021年1月1日。

(4)椎野潤(続)ブログ(279) 塩地博文の大型パネル事業(4)「大型パネル事業とは何か(その5)」大型パネルにより国産材は海外材に勝てる 2021年1月12日。

 

[付記]2021年11月19日。

 

[コメント]

塩地さんが独自ソフトウエアを開発し、設計情報の連動に成功したことを記したブログは、参考資料2です。参考資料3、4を読まれれば、2020年末から2021年の年初の塩地さんの活動が良く解り、今回の連載の理解が深まると思います。

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