長野の新卒 リモート勤務  立川のIT32社と茅野市連携

林業再生・山村振興への一言(再開)

2021年3月(№85)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(296) 長野の新卒 リモート勤務 立川のIT32社と茅野市連携 2021年3月12日

 

☆前書き

IT技術者に、やってもらいたいことは山ほどある。しかし、その人材は、なかなか集まらない大都市の悩み。一方、市民の流出が続き、危機感を強める地方都市。この両者が手を組んで、お互いに希望の道を歩もうという取り組みが、始まりました。これが巧くいけば、全国の山村振興活動にも応用できて、未来への一筋の光の基になるかもしれません。

日本経済新聞の1月29日の朝刊は、以下のように書き出していました。

 

☆引用

「東京都立川市のIT(情報通信)関連企業と長野県茅野市は、就職後地元でリモートワークで仕事をすることを前提に、同市の学生を立川市の企業が採用する事業で連携する。IT人材の不足を解消したい立川市内の企業と、人口流出に歯止めを掛けたい茅野市との間の思惑が一致した。2022年新卒の採用から事業を本格展開する。」(参考資料1、2021年1月29、日本経済新聞から引用)

 

☆解説

立川商工会議所のIT関連企業32社からなる「たちかわIT交流会」と茅野市が、共同で事業を進めます。交流会の企業は、仕事をリモートワーク(注1)で行う採用枠を設けます。茅野市内の公立諏訪東京理科大や茅野市出身で、多摩地域を中心とした首都圏の大学生を対象に、採用活動を行います。採用した学生には就職後、原則茅野市内の自宅か自宅周辺のシェアーオフィスで、リモートワーク(注1)をしてもらいます。

交流会会長を勤める東洋システム(立川市)の飯田哲郎社長は、「交流会の企業全体で年間50人の採用を目指したい」と話しています。重要な打ち合わせなどで、立川市内の本社に来てもらう場合も、JR中央線特急で立川〜茅野間を1時間40分で結ぶ地の利が生かせるとみています。

IT関連の人材は、膨らむ需要にエンジニアの育成が追いつかず、不足気味です。パーソンキャリア(東京・千代田)が1月21日に発表した2020年12月の中途採用求人倍率を、業種別にみると「IT・通信」は5.78で、5倍を超えています。しかも、交流会の飯田会長は、「都内でもIT人材は都心に偏り、多摩地域の企業は、採用で不利だ」と見ているのです。それで優秀な人材確保に、万全を期していきたいと考えているのです。(参考資料1、2021年1月29日、日本経済新聞を参照して記述)

 

☆まとめ

一方、茅野市は、2008年をピークに、人口減少に転じています。若い世代は、働く場所がないと言って、県外の大学に進学の後、戻ってくる人が少ないのです。茅野市は、これに強い危機感を持ち、2020年から5年間の地域創生総合戦略で、「若者に選ばれるまち」を掲げ、主力産業である製造業や観光業以外の業種の就職先を増やす方針を掲げています。そして特に、IT産業の誘致に力を入れました。

茅野市のこの経営戦略では、具体策として、同市内出身の学生たちに、東京立川のIT企業のIT技術者に、茅野市内に在住のまま、仕事をしてもらうという戦術をとりました。そして、JR茅野駅前のビルに、茅野市自身がシェアオフィス(注2)「ワークラボ八ヶ岳」を設置して、補助金を出して、学生たちの利用を、熱心にさそっています。

また、今年の就活の支援として、2021年3月に、諏訪東京理科大学生を招いて就職説明会を開催し、就活生たちに、立川のIT企業のインターンシップ(注3)への参加を呼びかけています。これにより、茅野市内の大学生を、市内在住のまま、東京立川のIT企業に就職させるように、きめ細かく段取りしているのです。

今、日本各地の地域では、地域発のIT技術者を、地元につなぎ止めようと苦闘しています。また東京などの需要地では、優秀なIT産業就職希望学生を、獲得したいと総力を結集しています。

この両者の思惑が一致した、今回の取り組みは、これから各地に広がっていくと思われます。特に山村振興にとっては、市街地でなく、市内の山間部の居住者が、自宅にいるまま、リモートワーク(注1)で、駅前のワークショップを使って、東京などのIT企業の仕事をしてくれることは、最も望ましいことです。この若者たちの頭脳と技術が、自然に山村を、先端技術に強い思考の社会に導いていってくれるからです。

結局、この試みにより、茅野市内の山村部出身の学生の、自宅居住での東京企業リモートワーク勤務が実現すれば、日本全体の山村振興にとっても希望の光になるでしょう。(参考資料1、2021年1月29日、日本経済新聞を参照して記述)

 

(注1)リモートワーク(remote work):類似した語義を持つ語にテレワークがある。リモートワークは remote(遠隔)+ work(働く)、テレワークは tele(離れた場所)+ work(働く)、と、どちらも2つの英単語を組みあわせた造語。両語ともオフィスから離れて働くことを意味しており、語義に大きな相違はない。テレワークは、1970年代に使われ始め、日本では、1980年代に、この働き方が広まった。現在、国や自治体は、「テレワーク」を統一用語としている。一方、リモートワークは、新しい用語。主に民間の企業で使われている。特に、IT関係やフリーランスで働く人は、「リモートワーク」を用いることが多い。フリーランス:会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する人のこと。

テレワーク(telework):勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。

(注2)シェアーオフィス:自社のオフィスとして1か所のオフィスを使うのではなく、複数社で同じオフィスを共有するオフィスを指す。

(注3)インターンシップ(internship):特定の職の経験を積むために、企業や組織において労働に従事する期間のこと。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年1月29日。

 

[付記]2021年3月12日。

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