塩地博文寄稿ブログ「建築の近代化]大型パネル事業の進展(その5) 仮想木材の完成 木造住宅との一体化 

☆巻頭の一言

今日は、塩地ブログ第5号の報告です。塩地さんの住宅作りのデシタル化は、無駄なき生産流通システムにまで昇華します。林業再生・山村振興の強い骨格となります。(椎野 潤記)

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年11月(№161)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(372) 大型パネル事業の進展(その5)仮想木材の完成 木造住宅との一体化 2021年11月30日。

 

☆前書き

 

☆引用

「大型パネル事業の進展」〜仮想木材の開発へ         文責 塩地 博文

 

「大型パネル事業の進展」と題した著述は、5回を予定しており、今回は最終稿となります。2018年に起業したウッドステーションは3年を経過し、4年目を過ごしています。大工不足は年々深刻さを増して、大型パネルの需要を掘り起こしており、成長路線が続いています。パネル生産者においても、地域の生産パートナーから手が上がり、工場新設、技術移転が始まっています。経済産業省の事業再構築補助金を申請するケースもあると、工場新設を決断した生産パートナー会員から聞いています。事業を開始しやすい環境が生じていると思われます。

 

大工不足、コロナ禍からの再生、ウッドショック、DX(注1)ブームと、次々に大型パネル事業拡大の追い風が吹いており、急成長が始まっていますが、この風を、本ブログの核心である「林業再生・山村振興」と繋げられるのかについては、現時点では正直、不透明としか答えられません。ウッドショックにより急騰した木材価格は海外市場、その先物市場から次第に沈静化が始まっており、ピークを打っていると解説されています。海外材が価格を戻して、再び日本市場に流れてくると、国産材は価格の下落が止められないかもしれません。ウッドショックの反作用は、国産材成長を反転させてしまうと思います。

 

従って、大型パネルには成長路線が見えていますが、それが国産材振興と合体するかについては不透明だと言えます。国産材は、サプライチェーンの確立において、「準備不足」と断じざるを得ません。ウッドショックが到来しても、海外からの梁や桁に対抗する品質の国産材商品を持っていない事、データの連携を進めるシステムが無い事、伐採から貯木に至るインフラが不十分な事、デジタル化への対応が進んでいない事など、そのチャンスを活かす準備が出来ていないのです。これでは、何度でも海外発ウッドショックは到来し、その度に、国産材市場は右往左往し、その結果、何の果実も得ないでしょう。急落した反動減だけが脳裏に残り、事業投資に臆病になり、拡大していかない負の連鎖を生んでしまうのです。

 

そこで仮想木材構想が出番であると考えます。仮想木材は生産を先んじるのではなく、データ化を先んじて、建築データと木材資源データの合体シミレーションにより、無駄を排除し、生産性を高める事を目的としています。「伐る 切る 運ぶ」の前に、木材と建築をデータを連結し、需給を細かくシミレーションし、その上で伐採、製材、プレカットなどの生産を開始するのです。その結果、生産連動が短いタイミングでも間に合うのです。

それは国産材だけが持ち、海外材には無い絶対的な優位性です。「場所メリット」の最大化であり、徹底的に差別化が出来るシステムとなり得るのです。誤解を恐れず単純化すれば、「先行予約システム」なのです。航空券の「先割り」「早割り」と捉えてもらっても良いのです。

 

大型パネルでは、使用される全ての細やかな木材断面情報を抽出する事が出来ます。その細やかな全ての断面を、製材に、原木に逆流させて、「仮想木材」を作成します。仮想木材は現実の製材や玉切りを行う前に、何度でもシミレーションを可能とし、歩留まり率の改善を促します。またデータは近隣の製材所と連動し、地域内の二重生産、過剰在庫を削減します。無駄なトラック配送も自然と減少するのです。国産材は海外材には無い、その絶対的な優位を活かして、歩留まりやコストを徹底的に改善し、無駄を洗い出し、その浮いた利益を、海外材との競争力向上に、ひいては再造林へ繋げる源資として拠出するシステムを、「仮想木材」と名付けているのです。大型パネルと国産材振興の連動とは、仮想木材の開発と達成以外に考えられません。

 

今、仮想木材の開発スケジュールを俎上に載せる好機が到来しています。でも、木材業界は、ウッドショックへの対応に追われるばかりで、解決策は今だに本格化していないのです。大型パネルの生産インフラの普及に併せて、仮想木材システムを合体させ、「海外材とは一線を画した、先行(先物)予約販売を作り上げて、これを無駄なき生産流通システムにまで昇華させ、林業再生・山村振興という社会の大義を実現する、今や絶好の好機です。このブログの掲載が、そのきっかけになるのなら、まさに最大の喜びです。(参考資料1、塩地論文を引用)

 

☆おわりに

塩地さんが提唱された大型パネル事業には、今、強い追い風が吹いています。でも、日本中の住宅作り・木材産業関係者への周知は、まだ、あまり進んでいないのです。ですから、また強烈なウッドショックが襲来したら、日本経済は混迷の渕に沈んでしまうかもしれません。それを防ぐために、塩地さんが5回の連載で力説された、この警鐘の書を、多くの人に広く読んでもらう必要がなります。(椎野 潤記)

 

(注1)DX(デジタルトランスフォーメーション、digital transformation、略語DX):トランスフォーメーション (transformation): 物の形態、外観、性質などをかえること。変革・変形。デジタルトランスフォーメーション: デジタル技術で事業を変革すること。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの。略語がDXである理由は、「Trans」を「X」と略すことが一般的な、英語圏の表記に準じているため。

 

参考資料

(1)塩地博文著:「大型パネル事業の進展」〜仮想木材の開発へ:2021年11月30日。

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