次世代産業社会へ 再生エネルギーのスタートアップを 2000億円で買収 ENEOS脱石油・成長にらみ巨額投資

今、巨額の投資資金を保有しながら、次世代に向けて衰退産業の筆頭にいるのは、石油元売り企業です。日本において、その最有力企業であるENEOS(注1)が、この重大な時期に、見事な決断をしてくれました。迅速に事業の大転換をしなければならないと考えていた同社が、中期経営計画で、2023年までの改革投資資金として準備していた4000億円の1/2の2000億円を、再生エネルギーの超有望スタートアップの買収に投じる決断をしてくれたのです。アフターコロナの産業改革の牽引者として、まさに適任者の登場でした。コロナの悪魔の吹き荒れた強風は、日本の巨人を動かしました。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年11月 (№160)

 

□椎野潤(続)ブログ(371) 次世代産業社会へ 再生エネルギーのスタートアップを 2000億円で買収 ENEOS脱石油・成長にらみ巨額投資 2021年11月26日。

 

☆前書き

2021年10月8日の日本経済新聞が、この日本の巨人の決断を報じていました。今日は、これについてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「ENEOSホールディングス(注1)は、再生可能エネルギー振興企業のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京・港、注2)を買収する方針を固めた。買収額は2000億円程度の見通し。世界ではエネルギー大手による太陽光発電や風力など再生エネ投資が拡大している。脱炭素時代を見据え、石油依存からの構造転換を加速する。(参考資料1、2021年10月8日、日本経済新聞から引用)」

 

☆解説

ENEOSは、2010年の設立時において、当時の世界規模の産業危機を乗り越える切り札として登場した存在だったのです。すなわち当時も、金融危機による景気後退や環境問題に端を発する石油製品の需要減といった状況がありました。そこで、規模拡大による生産力・販売力の強化が不可欠と判断されていたのです。国内石油卸で当時1位の新日本石油と同6位の新日鉱ホールディングスとの経営統合は、業界内では1999年の日本石油と三菱石油の合併以来10年ぶりの大型再編でした。

今、世界の産業の潮流は、脱炭素の流れです。自動車では、電気自動車へのシフトが急速に進んでいます。政府は2050年に温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指しています。この状況の中で、石油の需要の急速な減少は必定なのです。その中で、エネルギー大手は、再生エネルギーに活路を求めています。このような状況のもとでENEOSも、大型投資に踏み切りました。

ENEOSは、再生エネルギー事業において、次世代に向けて、きわめて先進的なスタートアップである、ジャパン・リニューアル・エナジー(JRE、注2)に、巨額の「のれん代」を支払って、同社を買収する決断をしました。同社の2020年12月期の売り上げ高は36億円、純利益は6億7800億円ですが、このスタートアップの買収に、2000億円の巨額な投資をして、JREの株主である、米ゴールドマン・サックス(注3)とシンガポール政府投資公社から、全株式を取得します。日本国内の石油元売り大手による再生エネルギースタートアップの大型買収は初めてです。(参考資料1、2021年10月8日、日本経済新聞を参照引用して記述)

 

☆まとめ

産業社会の大改革には、強力なリーダーが必要です。また、日本人は、空気を読めて和の社会を創れると言う凄い美質を持っています。でも、その裏側には、集団全体を変革させる動きは極めて遅いという弱点があるのです。

すなわち、日本では、産業や社会を変えるには、まず、空気を変える必要があります。そして、それに合わせて和の社会を新しい姿に変えていくことが求められるのです。ですから、集団みんなの改革には、空気を変える能力のあるリーダーが、是非とも必要になるのです。

米ゴールドマン・サックスは、そのようなリーダーシップのある体質の企業です。また、社会が危機に直面したときに、それを突破するために、大きな視点に立って行動できるENEOSのような企業が、なんとしても必要なのです。その点から言いますと、このブログには、ENEOSやゴールドマン・サックスといった産業・社会改革の大事をなすための適任者が勢ぞろいしていました。

また、この改革の行動の切っ掛けを創るには、先行しつつある次世代産業社会の特徴的なモデルを、周囲に先んじて実装している先進的なスタートアップを、高額の「暖簾代」を支払って買収するのが、一番、有効な方法なのです。これも、この「機」に、この「対策」ともいえる、ぴったりの選択でした。

ENEOSは、石油元売り業者の中で、現在、トップの座にいる存在です。また、石油業界は、今、消滅の危機を迎えており、日本の産業界には、同じ立場の企業が多く存在しています。そして、この力のある企業集団には、現在では、まだ、巨額の資金が廻っているのです。すなわち、金融機関と投資家がついているのです。

この集団が群れをなして、次世代にむけて動きだせば、日本のポストコロナの経済再興の大きな推進力になるはずです。これで、次の日本の産業社会に、希望の灯(あかり)が灯りました。私は日本の未来に、大きな期待を持ちました。(参考資料1、2021年10月8日、日本経済新聞を読んで考えて記述)

 

(注1)ENEOSホールディングス(ENEOS Holdings, Inc.):2010年4月1日に設立されたENEOSグループの持株会社。石油精製・販売大手の新日本石油株式会社と新日鉱ホールディングス株式会社が、経営統合を目的として共同で株式移転を実施し設立された。日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄の一つ。

(注2)ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE:Japan Renewable Energy Corporation):事業内容:発電プラント(風力発電、太陽光発電、バイオマス発電その他自然エネルギー発電)に関する事前調査、計画、設計、関連資材調達及び販売、土木工事、電気工事、建設、運転、保守点検事業並びに売電事業。本社、東京・港。設立、2012年8月。

(注3)米ゴールドマン・サックス:アメリカ合衆国の企業であるザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インク(The Goldman Sachs Group, Inc.)、または同社を頂点とする金融系企業グループを指す。金融グループとして、株式・債券・通貨・不動産取引のブローカー業務、貸付・保険・投資銀行業務に加え、プライベート・バンキングも実施。

 

参考資料

日本経済新聞、2021年10月8日。

 

[付記]2021年11月26日。

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