塩地博文寄稿ブログ「建築の近代化]大型パネル事業の進展(その1)ウッドショックの正体とは

☆巻頭の一言畏友、塩地博文さんは、病気療養中でしたが、すっかり元気になられました。また、ブログに復活してくださいます。ここでは塩地さんから寄稿された論文を、11月中に5日間、特別ブログとして掲載します。今日は、塩地ブログの第1号です。(椎野 潤記)

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年11月(№153)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(364) 大型パネル事業の進展(その1)ウッドショックの正体とは 2021年11月2日

 

☆前書き

今日は、ウッドショックの正体についてお話しいただきます。

 

☆引用

「大型パネル事業の進展」ウッドショックの正体とは       文責 塩地 博文

 

2020年末から2021年初頭にかけて、「大型パネルとは」と称して、椎野ブログに掲載させて頂きました(参考資料5、6、7、11)。ウッドステーションの塩地です。この度も、再びお声がけいただき、その後の事業進捗を読者の皆様と共有する好機を頂きました。また、全くプライベートなことなのですが、2021年4月に突然倒れて、救急車で運ばれました。その後、ゆっくりですが、回復に転じており、ご報告を継続しづらかったのです。でも、私の病気治療など何の影響も無いと思われるほど、大型パネル事業は大いに進展しています。今や地響きが聞こえてきそうな状況なのです。ここでは、何回かに分けて、著述させて頂きます。

 

ウッドショック! 今年4月より業界誌には連日「輸入全面高」の文字が踊っていました。欧州材、北米材は急騰し、買い付け量を確保できずに、価格高騰と供給不安が同時に押し寄せてきました。その不足感はたちまちに国産材に波及し、スギやヒノキの相場を引上げました。椎野ブログに於いても、急変した木材需給と題して、一文を寄稿させて頂く準備を進め、その文中で、『油断!』(堺屋太一著)を引き合いに出しながら、「木断になってはならない」と書かせて頂きました。その最中に病魔に襲われて、執務を中断する事になったのです。

 

「ウッドショックはいつでも起こりうる、それほど木材流通のサプライチェーンは脆く漸弱だ」。これが小職の持論です。主要構造材を海外材に依存している現状については、「大型パネルとは」で詳述しましたので、ここでは割愛します。ここは完全に依存していながら、買い付け方法は「当用買い」という状態なのです。中間に入った商社が、「このくらい買えば大丈夫かな〜」と見込みで発注し、それを本船到着後、懸命に売りさばくという昭和の商法なのです。主要構造材を海外に依存しながら、「今すぐ下さい」「いつもの量をお願いします」という、口約束、慣習ベースの買い付け方法なのです。これでは商社は買い付けリスクを全面的に背負う事になります。コロナ時代のような需給見通しが不明確なタイミングでは、「買い過ぎないように」と自粛してしまいがちです。木材は長期在庫に不向きの素材です。日本人の保守思考と長年染み込んだデフレマインドは、買い付け方に自然と、エンジンブレーキをかけてしまうのです。私は「きっと買い損ねる」と予感していました。予感は不幸にも的中したようです。一般紙やTV報道まで巻き込んだ、大慌てぶりは皆さんの知る処でしょう。

 

これと同時に「国産材に注目が集まる。しかし一過性に過ぎない」とも予感していました。国産材は、今も、「当用買い」以外の買い付け方法は確立していません。しかも、輸送距離の短い買い付けで、おまけに「当用買い」。海外材の空白を埋めるような在庫量、機動的な伐採活性化など、全く準備と計画がなされてないのです。今ある在庫を売りさばけば、それでお終いになるだろうと想像していました。海外材が入らない、しかし、国産材も入らない。それが日本の木材流通の現状なのです。

 

結論を急ぎましょう。要は、当用買いという、今の目の前に起きた需要に対応する買い付け方法では、責任は果たせないのです。予約販売、先物市場といった先行需要とのマッチングを果たして、生産量の機動的な運用を行わない限り、日本には何度でもウッドショックが襲って来るでしょう。従って、ウッドショックとは一過性の現象ではなく、生活習慣病と言える木材流通の慢性疾患なのです。

 

小職はこの生活習慣病を正す方法として、3つの原則を提案しています。

仮想木材という「事前建築データ解析システム」を通じて、実需を割り出し、データを先行させることで、需給想定をシミレーションする事。

サプライチェーンを広域設定せず、地域内完結に留めて、量的な拡大より、需給想定の確実さをノウハウとして身につける事。

海外材に依存している真なる正体とは何かを徹底的に解析する事。例えば、梁桁という構造材を国産材化する方法は無いのかを充分解明し、国産材のウイークポイントを無くしていく。

 

でも、ここは提案だけではありません。既に佐伯広域森林組合では大型パネルを生産販売しています。また、和歌山県の老舗木材企業である山長商店も大型パネル生産を開始していきます。次は佐伯広域森林組合で何が起きているのかをレポートし、ウッドショックを見事に活かして大成長している現状を書いていきます(参考資料12塩路論文を引用)。

 

☆おわりに

塩地さんの療養中に弟子たちは、大型パネルを、どんどん進展させていました。コロナの悪魔の襲来で、多くを破壊された日本社会・産業の中で、具体的に驚くほど進化させていました。コロナの悪魔は、その強大な破壊エネルギーで社会や産業の壁を破壊しました。これが追い風となって革新的なシステムの導入は、大きく前進したのです。

でも、これは塩地さんが、近年の日本の社会・産業の閉塞を破るために、何をなさねばならないかを、弟子たちに、丁寧に指導していたことが大きかったのです。これがコロナ危機というチャンスに、凄く生きました。この論文は、ポストコロナでの日本再生に、大きく寄与すると思います。この塩地論文は、日本の人達に、今、大いに参考になるでしょう。このブログは、11月2日、5日、16日、19日、30日の5回にわたり特別ブログとして掲載します。(椎野 潤記)

 

参考資料

(1)塩地博文著:大型バネル事業とは何か(その1)、2020年12月10日。

(2)塩地博文著:大型バネル事業とは何か(その2)、2020年12月11日。

(3)塩地博文著:大型バネル事業とは何か(その3)、2020年12月12日。

(4)塩地博文著:大型バネル事業とは何か(その4)、2021年1月5日。

(5)椎野潤(続)ブログ(273)木材建築 無形文化遺産に登録 塩地博文の大型パネル事業 1)木造住宅の次世代に向けた大改革 2020年12月22日。

(6)椎野潤(続)ブログ(274)塩地博文の大型パネル事業 2) 塩地博文「大型パネル事業とは何か(その1〜3)」原文 2020年12月25日。

(7)椎野潤(続)ブログ(275)塩地博文の大型パネル事業 3)塩地博文「大型パネル事業とは何か(その4)」施工図自動作成システム 2020年12月29日。

(8)椎野潤(続)ブログ(270)鹿児島県大隅半島での「林業再生・山村振興」の動き(その1)南大隅町の森田俊彦町長からの手紙 2020年12月11日。

(9)椎野潤著:続・椎野先生の「林業ロジスティクスゼミ」、IT時代のサプライチェーン・マネジメント改革、全国林業普及協会、2018年3月15日。

(10)椎野潤(続)ブログ(236)木材トレーサビリティで流通改革 原木原価を引き上げ林業再生に貢献(その2)2020年8月11日。

(11)椎野潤(続)ブログ(279) 塩地博文の大型パネル事業4)「大型パネル事業とは何か(その5)」大型パネルにより国産材は海外材に勝てる 2021年1月12日。

(12)塩地博文著:大型パネル事業の進展(その1)ウッドショックの正体とは 2021年11月2日。

 

[付記]2021年11月2日。

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