林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年5月 (№106)
□ 椎野潤(続)ブログ(317)鳥取県智頭町スタートアップと連携 林業課題をビジネスで解決 山間地域における産業創造を目指す事業開発 2021年5月25日
☆前書き
鳥取県智頭町(注4)は、林業従事者と異分野の事業開発経験者が出会い、自然と人間・産業のサステイナブルな(持続可能な)関係を実現する活動を推進しています。2021年5月7日の日本海新聞は、以下のように書いていました。
☆引用
「[森林活用の事業創出へ連携協定]智頭町と起業家支援企業(スタートアップ、注1)のSpero(東京)は、森林資源を活用した新事業を目指す連携協定を締結した。同社は、町外から新規事業の立ち上げを望む個人を呼び込み、町内の林業家などと連携し新事業創出と雇用確保につなげる。
起業を支援する林野庁の事業の一環。同社は新事業の立ち上げを目指す人の応募を2021年8月2日まで受付け、参加者は9月に、同町で視察や林業従事との交流をおこない新事業の検討をする。
2021年4月28日に、オンラインで実施された協定式で、金兒英夫町長は「林業を再興し、町への定住につなげていきたい」とあいさつ。同社の高橋ひかり社長は「後継者不足で、林業を続けるのが困難な中、智頭町から課題解決につながる事業を生み出したい」と抱負を語った。(参考資料1、2021年5月7日(浜中雄一郎)から引用)
☆解説(1)
この智頭町の事業は、林野庁事業のアクセラレーター(注3)「SUSTAINABLE FOREST ACTION(注2)」と連携したものです。これは、林野庁が推進している、林業従事者と異分野の事業開発経験者が出会い、自然と人間・産業の持続可能な関係を実現するために、「林業」と「森林づくり」、また中山間地域における産業創造を目指す、事業開発プログラムです。
また、これは私が、今、書いている林業を再生し、山村を振興させるために、早急に実施しなければならない重要な課題です。それが最も産まれ出て欲しい処で、具体的産まれ、力強く成長し始めています。私は、この上ない喜びを感じ、大きな期待に胸を膨らませています。
現在、このプロジェクトには、参加希望者が殺到しており、大変な盛り上がりのようです。智頭町と連携しているスタートアップ(注1)のSperoに電話してみましたら、「この電話は、現在、大変混み合っております。通信希望量が溢れており、通話をお受けすることが出来ません。もう少し後にお掛け直しください」と言うアナウンスが流れていました。
智頭町企画課の酒本和昌さんから、貴重な資料をいただきました。ここでは、これを参照・引用して、ブログを書きます。
☆まとめ(1)
私は「林業再生と山村振興」が、日本の未来のために、最も重要な課題だと考え、それのブログ上での記述に、日夜、苦闘しています。そこで私は、これを実現するために、異業種のスタートアッブに林業界に関心を持ってもらうことが、突破口だと考えていました。新事業開発に熱い情熱を持っている異業種スタートアップの、「林業・山村」に対する関心を引き出し、そこで新事業を発掘してもらうのです。そして、林野出身のスタートアップを湧出する。これが「林業再生・山村振興」の出発の、最高の道筋だと思っていました。ところが、智頭町と提携しているSperoは、まさに、これを実践していたのです。これは、まさに「林業スタートアップ」でした。
☆解説(2)
また、実施する地域、智頭町(注4)は、最高の地域なのです。これを記すると、以下のごとくです。
(1)自然環境が素晴らしい。
(2)山間地域として、次世代に向けて進めておくべきことを、全て周到に進めている。
すなわち、日本の地域創生(山村振興)を、牽引するものとしては、今、最も期待できる存在なのです。そこで、この「智頭町とは、どんなところか」から、少し書きはじめましょう。
[智頭町はどんな処か]
「智頭町は鳥取県東部、岡山県北部に隣接する町面積93%の森に囲まれた杉の町です。古くから因幡街道と備前街道が交差する要衝で、参勤交代の宿場町として、明治以降は林業の町として栄え、人を呼び、職を生み、文化を創ってきました。その象徴が宿場町の中心にある石谷家住宅です。全国から銘木と職人を集め、10年かけて建てられた他では類を見ない豪華な屋敷で、今は観光の中心になっています。
また銘木の「智頭杉」は有名ですが、こればかりでなく、山の奥にはブナ、ミズナラ、トチやカエデの巨木が立つ原生林が広がっています。この豊かな森が雨・雪を蓄え、ろ過された綺麗な伏流水を生み、その水は酒作りや豆腐作り、農業に生かされています。最近では、森林浴を楽しむ森林セラピーをはじめ、五感で森を満喫できるアクティビティも盛んです。」(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (智頭町について)から引用)
私は、智頭町を調べていて、「この町は、町全体がセラピー基地だ」と感じました。
「山と人が森を介して繋がり、長い時間をかけて育まれたのが智頭の「暮らし」です。恵みをいただく山への信仰は集落ごとで神事にささげる伝統芸能を生み、今なお大切にされています。日常の中には、昔から伝わる生活の知恵が受け継がれ、暮らしを支えてきた食文化が残り、人は自然と共に生きています。智頭町は、森が育む「人の暮らし」を実感できる場所です。」(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (智頭町について)から引用)
私は、地域創生(山村振興)を出発させるところとして、ここは最高の地だと確信しました。
[まちの概要]」
「杉のまち
智頭林業の植樹の歴史は、350年以上といわれ、町内には「慶長杉」と呼ばれる樹齢300年以上の人工林が残り、吉野・北山と並ぶ歴史ある林業地として、全国的に有名です。
智頭材は、建築材としてだけでなく、木目が均等に詰まった木質や、桜色に染まった心材など、智頭杉の美しさは、内装材としても広く利用されてきました。近年、林業従事者の高齢化・後継者不足等により、林業は全国的に衰退傾向にありますが、智頭町にとって林業は「まちの基幹産業」として、地域活性化の核となるものです。町内の森林所有者、森林組合、林業団体、行政が一丸となり、林業再生へ向けた取り組みを継続しています。」(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (まちの概要)から引用)
「観光のまち
智頭町では、「歴史と文化を活かしたまちづくり」をテーマに、まち全体がエコミュージアム(生きた博物館)であるという理念のもと、観光に取り組んでいます。
智頭町では、まちの自然や景観、歴史的な町並みや集落の伝統文化を大切に保存・継承し続けています。このまちに住む人々の生活そのものを見てもらい・触れてもらい・体験してもらうのが観光だと考えています。それらが新たな出会いや発見、驚きを生み、観光客が智頭町を満喫してくれることを目指して、整備を進めています。(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (まちの概要)から引用)
本当に、智頭町は「まち全体が『生きた博物館』です。
「石谷家住宅
智頭宿(当時の宿場町)の中央に位置する石谷家住宅は、古くから屋号を「塩屋」といい、元禄4年(1691年)頃に鳥取城下から移り住み、本拠を現在の智頭宿内に構え、分家をつくり繁栄してきました。広く地主や山林経営をしてきた家柄で、3代目の石谷伝四郎氏は、大正8年(1919年)から約10年間の歳月をかけて改築し、現在の石谷家住宅の姿となりました。平成12年(2000年)に智頭町に寄贈されました。」(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (まちの概要)から引用)
「新田のまちづくり
新田集落では、この村を訪れる人や、出て行った人が「いつか住みたい!」「いつかは故郷に帰りたい!」と思うような集落を目指し、農林業体験の受入などの交流事業を活動の柱として、地域振興や古くから新田集落に伝わる人形浄瑠璃などの伝統文化の継承に取り組んでいます。(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (まちの概要)から引用)
智頭町は、日本文化の原風景が見える地です。私は、ここが地域創生(山村振興)の出発点だと思います。
[智頭町への移住について]
人口減少が続き、衰退が進行している地域においては、その再生を達成するには,「移住」が極めて重要です。移住には、受け入れ側の町村が、本気で受け入れ準備をしてくれているか、住民が、熱い心で受け入れを望んでいるかが、鍵をにぎります。
智頭の地名の由来には、道が合流すると言う意味があり、元々は「道頭(ちず)」、道の頭という意味から出発したと伝えられています。江戸時代の智頭宿は、山陰地方最大の宿場として栄え、参勤交代の重要拠点でした。日本海沿岸の要路から、関西・関東を結ぶ難路の重要拠点でした。冬の吹雪の中で苦しむ旅人を助ける機会も多かったのでしょう。この長い歴史が、智頭の人々の人を助ける暖かい心を育んだと思います。
智頭は、これからの日本で、地域再生(山村振興)のリーダーになっていく資格を、大いに持っている土地柄だと言えるでしょう。
「移住」につて、智頭町のホームページ(参考資料4)は、優しい言葉を連ねています。以下に記します。
[智頭町ホームページの移住の記載]
移住をするには、様々な準備が必要です。智頭への移住を考えている人に、事前に知ってもらいたい情報を紹介します。移住を考えはじめてから実現するまでの基本となるステップを示します。
家族で移住について話し合う
移住を考えた際は、まず家族と相談しましょう。
移住して何をしたいか、どのような家に住みたいか、仕事はどうするかなど具体的に移住後の生活について話をすることが大切です。
情報を収集する
まずは智頭町がどのようなところかホームページを見たり、資料請求をして智頭町の情報を収集しましょう。
暮らしを体験する
智頭町の情報を集めた後は、実際に智頭町での暮らしを体験してみましょう。
智頭町での暮らしを気軽に体験したい方は民泊を、智頭町での暮らしをじっくり体験したい方はお試し住宅を利用してみてください。
智頭の癒しの宿 (民泊)
智頭町には、森林や豊かな自然環境と、かつて宿場町として栄えた歴史ある街道筋など、魅力的な素材が数多くあります。また、田舎で暮らすおじいさん、おばあさん、おじさん、おばさんが、都市住民を暖かく受け入れる、人情味あふれるまちでもあります。智頭町では、このような地域の資源(人、モノ)を活用しながら、都市住民との交流や移住定住の促進に力を入れています。その一環として「森林セラピー」や「疎開保険(参考資料4、5、注9、コメント参照)」を足掛かりに「民泊」を推進しています。
住まいと仕事を探す
移住をする際、重要となるのが住まいと仕事を見つけることです。住まいには家を新築・賃貸・空き家をリフォームする等、様々な方法があります。土地や空き家を探す際は「智頭町空き家・土地情報バンク」を参照ください。仕事については町内で就労しようとした場合、主に中小企業での勤務となります。また本町の中心地から車で30分ほどにある鳥取市等に通勤している人もいます。新規創業や農業、林業に就業される際には、各種支援制度を準備しています。是非、活用下さい。
移住する
移住の準備が終われば、引っ越しなどの手続きを進めていきましょう。引っ越しが終わったら、地域の自治会や近所への挨拶を行い、地域に溶け込んでいきましょう。また、地元の集まりや行事に積極的に参加して、地域の人達と仲良くなりましょう。
仕事さがしの支援
智頭町で仕事を探す人、起業を考えておられる人には、町だけでなく鳥取県や関係機関への紹介を行っています。特に農林業に関心がある人については、県の研修制度や助成制度がかなり手厚く整備されています。相談してください。
住居・生活に関する支援制度
住居・生活に関するさまざまな支援制度を手厚く準備しています。活用できます。ご検討ください。(参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ から引用)
☆まとめ(2)
智頭町の対策は、本当に至れり尽くせりでした。住民の熱い熱意も感じました。林業従事者と異分野の事業開発経験者が出会い、自然と人間・産業の持続可能な関係を実現するブロジェクトの実施場所としては、智頭町は、まさに最適でした。私は、このプロジェクトは大きな成果を上げる事と期待しています。
(注1)スタートアップ=スタートアップ企業:新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社。また、その新規領域開発者を支援する会社のこと。
(注2)SUSTAINABLE FOREST ACTION:林業従事者と異分野の事業開発経験者が出会い、自然と人間・産業のサステイナブルな(持続可能な)関係を実現するために、「林業」と「森林づくり」、また中山間地域における産業創造を目指す事業開発プログラム。
(注3)事業のアクセラレーター:事業の目標達成力、機能・性能を増強するため付加するもの。アクセラレーター:加速器、加速装置、促進剤などの意味を持つ英単語。ITの分野では機器やソフトウェア、システムなどに追加して性能を向上させるモノを指す。何らかのシステムの追加要素として提供され、もとになるシステムの性能を強める働きをするものの総称。
(注4)参考資料2、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000056075.html
(注5)参考資料3:林業人材と事業開発経験者が出会い、共に森をつくるサステイナビリティアクセラレーター『SUSTAINABLE FOREST ACTION 2021』募集開始のお知らせ (2021年5月13日) – エキサイトニュース (excite.co.jp) )
(注6)参考資料4:鳥取県智頭町ホームページ (town.chizu.tottori.jp)
(注7)参考資料5:https://www1.town.chizu.tottori.jp/1/
(注8)参考資料6:atc_1594910445.pdf (sanin.jp)
(注9)疎開保険:智頭町は、ストレスの多い被災地から「疎開」する場所を提供する「疎開保険」用意している。疎開保険は、智頭町が全国で初めて独自に企画した制度。 災害に会って被災地から智頭町へ疎開した場合、1日3食7日分の宿泊場所を提供。 智頭町の米や野菜、工芸品などの特産品を提供。 智頭町内での民泊、森林セラピーは費用半額。
参考資料
(1)日本海新聞、2021年5月7日。
(2)【鳥取県智頭町×Spero】中山間地の事業創出を目的とした包括協定を締結 〜智頭町を舞台に林業課題をビジネスで解決〜林野庁事業アクセラレーター『SUSTAINABLE FOREST ACTION』とも連携、2021年4月30日。
(3)林業人材と事業開発経験者が出合い、共に森をつくるサステナビリティアクセラレーター「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2021」募集開始のお知らせ、2021年5月13日。
(4)鳥取県智頭町ホームページ 。
(5)智頭町疎開保険、災害時の仮住まいの備えに、もうひとつの「ふるさと」を持ちませんか、鳥取県智頭町、2021年5月13日。
(6)ちづ暮らしの道しるべ、一ノ、ひとりノ、生に寄り添える町へ、第7次智頭町総合計画、2017〜2025、2017年3月。
(7)椎野潤(続)ブログ(313) 2拠点居住(デュアルライフ) 地方に活力 郊外自治体 若者呼び込む、2021年5月11日。
[付記]2021年5月25日。
[コメント] 智頭町創設疎開保険。
最近、流行語になっている「デュアルライフ(2拠点居住、参考資料7)」からみれば、第一居住拠点が東京、第二拠点が智頭の場合は、東京は本拠、智頭は疎開地。その逆では、智頭は第一居住地で移住地。この場合東京は、最先端技術と刺激、緊張を持続させるため、時々滞在する第二住居地。智頭町は「災害時の仮住まいの備えに、もうひとつの「ふるさと」を持ちませんか」と呼びかけています。(参考資料5、注9参照)