地図大手ゼンリン 地図卸から脱皮 次世代産業・社会での中卸の消滅に備えて 情報小売への脱皮

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年5月(№105)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(316) 地図大手ゼンリン 地図卸から脱皮 次世代産業・社会での中卸の消滅に備えて 情報小売への脱皮 2021年5月21日。

 

☆前書き

地図大手ゼンリンが、地図卸のビジネスモデルから脱却し、地図の小売への転身を進めています。これは次世代産業・社会の中で、大企業向け卸売ビジネスが先細りになる懸念に備えて、かねてから進めてきた改革です。これがコロナ危機の到来で、一気に加速しました。2021年3月16日の日本経済新聞は、以下のように書いていました。

 

☆引用

「地図大手ゼンリンが、2021年1月、中小企業向けのサブスクリプション(定額課金、注2)サービスを開始した。調査員が足で稼ぐ正確な住宅地図データを活用し、料理宅配や不動産営業を支援する。背景にあるのは、カーナビなど大企業向けビジネスの伸び悩みだ。『地図卸』を主軸とする収益モデルを転換し、データを組み合わせる「情報小売り」への脱皮を目指す。」(参考資料1から引用)

 

☆解説

地図大手のゼンリンが、地図のデジタル化に着手したのは、1982年でした。日立製作所と三菱電機の協力を得て研究を進め、1990年代に入り、紙の売れ行きが落ち始めた頃、カーナビを主役にする業態変換を進め、これに成功したのです。2000年代に入ると、自動車業界向けが稼ぎ頭になり、物流会社などに販売するオーダーメード地図など、大企業向けの地図が主力になりました。

しかし、カーナビのような、大企業向けのビジネスは、販売者としては、受け身の面が強いのです。顧客の戦略や業績次第で、収益が減るリスクが大きいのです。地図の卸売ビジネスも、先細りの危惧が大きくなってきました。

新型コロナに襲われ、国内の全ての企業が、危機を迎える中で、ゼンリンが「地図卸」の収益モデルを転換し、データを組み合わせる「情報小売」への脱皮を目視したのには、そのような背景もあるのです。

マイル醤油は、2020年末から、同業の宅配事業を代行し始めました。醤油や味噌に加えて麺類なども届け、事業基盤を強化しようとしています。同社は、この2カ月で、新たな配送先を100以上増やしました。一方で、ルート選定が新たな悩みとして浮上しました。

そこで選んだのが、ゼンリンの「らくらく販促マップ」です。これは地図上に住宅の表札名まで表示される、月額1100円のサービスです。インターネットの無料地図で路地裏などに入ると、現在地がわからなくなることがあるのです。ゼンリンの地図なら途中で近隣の表札を確認しつつ、確実に目的地にたどり着けます。

このらくらく販促マップの土台になっているのは、調査スタッフが足で稼いで蓄積したデータです。ゼンリンでは1日1000人が全国を回り、入り組んだ路地や建物の入口まで目視して確認しています。

しかし、近年,このモデルは、中小企業や消費者に直接提供するモデルに転換することが、必要になってきました。2021年3月期の連結売上高は、前期比2%減の585億円と、2年前のピークに比べて8%減る見込みなのです。新型コロナウイルスの影響で、新車が売れず、稼ぎ頭のカーナビ関連に逆風が吹いている今は、まさに、未来を見据えて、新たな転換を決断すべき時です。(参考資料1、2021年3月16日の日本経済新聞(山田健一)を参照して記述)

 

☆まとめ

コロナの悪魔の襲来で、十年以上先になると思われていた次世代社会・産業の到来が、直近の未来に、前倒しになりました。こうなると私は、ダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C、注3)への対応が、重要になると感じています。ゼンリンも、今までの足で集める地道な情報収集に加え、新たな対応が必要になります。SNS(注4)やインスタグラム(注5)を通じて、クラウドデータベースに蓄積した膨大なコンシューマー(注6)のデジタルデータを、AI(人工知能、注7)やIoT(注8)によって解析して、多様な興味を持つコンシューマ(個々人)を満足させる「次世代情報小売」を目指す必要があります。

日本のデジタル情報データベース構築の先駆者であり、常に新時代ICT(注9)の先導者だったゼンリン(注1)には、凄く広く深い知識と技術があります。これに、近年、俄かに重要度を増してきた、ディープテック(注10)の一層深い知識と最先端技術が加われば、これまでの発想を超えたデジタル地図新時代の、地平を超えたリーダーにも、なれると思います。

 

林業再生・山村新興にも、是非、ゼンリンに一肌脱いでいただきたいのです。まず、山村新興について言えば、ゼンリンの巨大データベースの中には、多くの埋蔵情報があると思います。

ゼンリンは、創業者の大迫正富さんが、1948年に別府市で開設した観光文化宣伝社が出発です(参考資料2)。大迫さんは、きめ細かく掘り出した地域の情報を、豊富に地図に埋め込みました。大迫さんは、これを全国に拡げ、各地の精密で新鮮な情報を、人手をかけて調べ上げ、情報更新を進めてきました。ですから、山村新興に役立つ情報も多数、地図に埋め込まれています。特に、観光に関しては、濃度が濃いのです。これから山村新興に役立つ情報を、ゼンリンの巨大データベースから、検索し直す作業が重要です。

でも、ゼンリンの出発から74年、世界の観光産業も、大きく変わってきています。大手旅行会社が、旅行者を量産する「サービス量産旅行業」から、コンシューマー(注6)個々人が、自分の行きたいところを自ら発見して動く姿に、大きく変わってきたのです。

マーケッティングは、その対象セグメントを、次々と小さくしてきましたが、ついに個人に至ったのです。これは「ダイレクトコンシューマー観光」です。泊める側も個人、泊まる側も個人のダイレクトです。それを繋ぐネットワークは、インスタグラム(注5)とSNS(注4)です。それを登載したデジタル地図が、今後の「山村新興」を牽引をします。

 

ここまでのブログのダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C、注3)では、売り買いするのは、サービスでした。でも、むしろ、物の売り買いのD2Cの方が多いのです。その代表的な産業がアバレル産業です。

私は、2019年11月17日に、ダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C)のブログを初めて書きました(参考資料3)。その中で、日本が世界に誇るアパレルメーカー、ファーストリテーリング(ここでは、皆が良く知っている「ユニクロ」という商品名で呼びます)を、日本のD2Cの挑戦者としてとりあげています。以下のように書いています。

「日本のダイレクト・ツウ・コンシューマの先駆者は、ユニクロです。2000年代には、早くも製造と小売を一貫に手掛ける製造小売業(SPA)を提唱して、時代に先駆けました。2017年には、ICT(注9)時代のSPAとして、情報製造小売業を創出し、私仕様の服を、注文を受けてから10日で作る取り組みを世界に展開したのです。」(参考資料3から引用)

世界のアパレル産業でも、今、D2Cが急進展しています。長い間、世界のアパレルを支配してきた、スペインのインデックスとスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツは、近年、世界で大量閉店して、次世代への大転換を開始しています。世界で先頭を切ってD2Cを進めていたユニクロは、2社との差を急速につめ、先頭に立ち、コロナ下でも急拡大しています。(参考資料4、5、6を参照)

世界の産業は、今、次世代に向け急進展しています。コロナの悪魔は、次世代との間にあった障壁を吹き飛ばしたのです。この風は、林業にも及んで来るはずです。

 

(注1)ゼンリン:地図情報の調査・製作・販売を行う企業。日本国内に存在するデジタル地図調整業者の内の1社で、地図情報会社として、日本国内最大手。自社で調査した情報をもとに住宅地図などを製作・販売するほか、他社に対してデジタル地図やカーナビゲーションデータなどを供給している。

(注2)サブスクリプション:サブスクリプション方式はビジネスモデルの1つ。商品ごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として定期的に料金を支払う方式。契約期間中は定められた商品を自由に利用できるが、契約期間が終了すれば利用できなくなるのが一般的である。英語の「サブスクリプション」(英語: subscription)には雑誌の「予約購読」「年間購読」の意味がある。転じて「有限期間の使用許可」の意味となった。

(注3)ダイレクト・ツウ・コンシューマ(D2C Direct to Consumer):製造から販売までを垂直統合したビジネスモデルのうち、実店舗を介さず、インターネット上の自社ECサイトでのみで販売するモデル。インスタグラムなどのSNSを通じた消費者(コンシューマー)と生産者の情報交換が主力になる。

(注4)SNS(Social Networking Service):人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス

(注5)インスタグラム(Instagram):写真や動画の共有に特化したソーシャルネットワーキングサービス(SNS)。

(注6)コンシューマー(consumer):商品やサービスの最終使用者や、商品・サービスを購入する可能性のあるすべての人を指す。

(注7)AI(artificial intelligence)=人工知能:「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。人の頭脳の代わりに、記憶し考える機械システム。

(注8)IoT(Internet of Things):モノのインターネット:あらゆる「モノ」がインターネットで接続され、情報交換により相互に制御する仕組み

(注9)ICT (Information and Communication Technology):「情報通信技術」 の略語。IT (Information Technology)とほぼ 同義。

(注10)ディープテック:科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組みのこと。産業・社会に大きな影響を与える科学面での重要で深い発見や、最先端革新技術の総称。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年3月16日。

(2)ゼンリン(注1)フリー百科事典 ウィキペディア出典。

(3)椎野潤ブログ: ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)で米小売を揺さぶる 寝具販売キヤスパー 日本での先駆者ユニクロ 情報生産販売業、2019年11月17日。

(4)椎野潤ブログ:ユニクロ「服作り」抜本改革 私仕様の服10日で届く、2017年4月1日。

(5)椎野潤ブログ:ユニクロ 世界展開 ネットでセミオーダー衣料、2017年12月25日。

(6)椎野潤(続)ブログ(264) ユニクロ 中国で爆進 店舗3000店目標 売上高も日本国内を超える 内需産業の新モデル形成 2020年11月20日。フォレスト・サポーターズに登録 | フォレスト・サポーターズ (mori-zukuri.jp)

 

[付記]2021年5月21日。

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