地域企業 コミュニティ・ ベースド・カンパニー芽吹く 地元資源生かして人材紡ぐ

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年5月 (№107)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(318) 地域企業 コミュニティ・ベースド・カンパニー芽吹く 地元資源生かして人材紡ぐ 2021年5月28日

 

☆前書き

地域にある諸資源を使って活動する地域企業(コミュニティ・ベースド・カンパニー、注1)が、全国各地に誕生しています。2021年5月3日の日本経済新聞は、これを記事に書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。

 

☆引用

「地域にある資源や人材を生かして、共感をひろげながら活動する企業や団体」コミュニティ・ベースド・カンパニー(CBC、地域企業、注1)が全国各地で育っている。国や自治体が主導する上からの地方創生と違い、個人がカフェやシェアーオフィスなど、自分がやりたい事業を始めて、人の輪が広がっていくのが特徴。北海道や鹿児島県では、CBCなどが連携して、地元の資源で地域経済を回していく仕組みづくりが動き始めた。」(参考資料1、2021年5月3日日本経済新聞(宮内禎一)から引用)

 

☆解説

コミュニティ・ベースド・カンパニー(CBC、地域企業、注1)と言う言葉は、京都で産まれたのです。この言葉を発生に導いた人達が考えたことの原点は、「これからの地域を生き残らせていく企業は、企業の規模が原点ではなく、地域に根差す文化・自然などとの共生が、根幹になっている企業である」と言うことでした。

地域は、そのような企業の集成によって発展すると言う理念から、2019年4月、京都の中小企業を、「地域会社」と位置付ける全国初の条例を施行しました。

京都市ソーシャルイノべーション研究所などが、2021年3月に、初めて開催したCBCフォーラムには、北海道から沖縄までの企業や団体が参加しました。この結果、「別々の場所で違うことをしているのに、同じ方向を向いている」と、関係者は等しく驚きの声を上げたのです。

このコミュニティ・ベースド・カンパニー(CBC、地域企業、注1)は、文化の継承に、長い歴史を持つ、京都の老舗企業の暗黙知の言語化だと思っていましたが、これは京都に限らなかったのです。

人口減少に歯止めが掛からず、消滅の危機に瀕している、全国各地の「地域」においても、その再生・振興の切り札だったのです。

鹿児島の繁華街、天文館地区で、撤退したパチスロ店の建物を改装して、2018年に開園した「そらまめほいくえん」が、地域の雰囲気を大きく変えたのには、地域の人達も大いに驚きました。

かって、ここは、たばこの吸殻が散乱し、空き店舗が多かった通りに面するところでした。でも、園児や送り迎えの保護者が、毎日歩くようになると、アパレルや若者向けの飲食店が、次々と出店したのです。

この街を活性化に導いたのは、その活性化推進グループの代表、古川理沙さんの「保育園を起点にして、マチをデザインし直そう」という発想でした。これがマチを変えました。

古川さんは、地域との関係を重視し、通りでイベントを開きました。そうすると、ここに併設した惣菜店には、近所の高齢者らが立ち寄るようになりました。必要なものは、なるべく近隣で購入し、園児も買い物にくるのです。「私たちは遠くに憧れて、地域の良さを見失っていた。実は暮らす上で必要な物は、全部ここにある。それを紡げば良い」と気がついたのです。

 

☆まとめ

コロナの悪魔は、日本人が営々と築いてきた尊いものの多くを破壊しました。反面、地域の人達に、大きな気付きも与えてくれたのです。すなわち、「今までは、何かあると行政に進言してきましたが、自分たちが街の経営者として、街づくりに、自ら係わらねば駄目だ」と気づいたのです。

栃木県で、日光珈琲を展開する風間総合サービス(鹿沼市)の風間教司社長は、2020年、呉服屋、自転車屋店の店主ら6人で、街づくり会社、ダンナビジョンを設立しました。風間さんは、もともと、1999年に、実家の隣の空き家を自分で改修し、1店目のカフェを開いていました。その経験を聞いた客から、起業の相談や空き店舗の情報を聞くようになっていました。起業希望者と空き物件をつなぎ、これまでにレストランなど20店を市内で開業していました。

それでも、人口減少や高齢化で中心市街地の衰退は進んでいたのです。コロナの襲来で、やるべきことに気がついた「ダンナビジョン」は、2020年末、中心地で廃業した呉服店の建物を買い取りました。今、これを改修しており5店を入れます。今後も買い増していきます。

「コロナで県外資本は、簡単に撤退する。小さくても、地元に根差した企業が伸びていかないと、地元は生き残れない」と、ダンナビジョンの経営者は、断言しています。

 

全国各地の中山間地の市町村において、「ダンナビジョン」のような地域企業(コミュニティ・ベースド・カンパニー、注1)が、どんどん、湧出すれば、地域創生(山村振興)は、自律的に成長して行くはずです。

 

(注1)コミュニティ・ベースド・カンパニー(CBC、地域企業):地域にある資源や人材を生かして、共感をひろげながら活動する企業や団体。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年5月3日。

 

[付記]2021年5月28日。

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