旅行・航空 地方に活路  ワーケーションによる地域交流

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年6月 (№108)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(319) 旅行・航空 地方に活路 ワーケーションによる地域交流 2021年6月1日

 

☆前書き

コロナの悪魔の襲来で、都市部の企業は、テレワーク(注2)による自宅作業の推進を余儀なくされました。また、都心部の若者たちの間では、自然環境の豊かなところへの移住の願望が高まりました。これにホームステイ増大でのストレス解消の気持ちも加わり、ワーケーション(注2)の動きが、急にひろまりました。

この動きは、これまでは、大都市部側の動きでしたが、最近は、各地の中山間地のワーケーションの受け入れ側にも、出てきたのです。コロナの悪魔により大打撃を受けた旅行業・航空業の業容回復の対策として、各地のワーケーション受け入れ地で、コロナ後の新事業の模索が始まったのです。

2021年4月28日の日本経済新聞は、これについて記事を書いています。今日は、これを取り上げてブログを書きます。

 

☆引用

「新型コロナウイルスで岐路に立つ旅行・航空業界が、地方で、新規事業を育てようと試行錯誤をしている。エイチ・アイ・エス(HIS)は、愛媛県今治市と連携し、地方に滞在しながら仕事をする「ワーケーション(注2)」を導入する企業を支援する。コロナの先行きが厳しいなか、雇用を維持する狙いがある。

HISは今治市と組み、同市でワーケーションを実施する企業に、滞在先の紹介や研修をサポートする事業を始めた。中長期でワーケーションを実施する企業が、繊維業の販路拡大や、事業のデジタルトランスフォーメーション(DT、注3)で協力する。(参考資料1、2021年4月28日(大畑圭次郎、松本萌)から引用)

 

☆解説

HIS(エイチ・アイ・エス)は、旅行に関連する様々な事業モデルを持つ企業ですが,コロナの襲来で、今、きわめて厳しい状況です。2021年2月の旅行総取引高は10億円と、前年同期比で9割減少しました。

コロナ危機の長期化で、企業の出張などの往来の減少は、さらに続く見込みです。そこで、長期滞在型事業に、シフトしたのです。

コロナの悪魔の襲来で、大打撃を受けている航空業界も、コロナの長期化や、次の波の襲来に備えて、事業モデルの再構築を、真剣に検討しています。

ANAホールディングスは、2021年4月に、子会社を再編成し、地域創生事業を担う会社を作りました。全国33カ所の支店に、地域創生に特化する120人の社員を配置し、特産品の販売開拓などを支援します。旅客需要が減少するなか、地場産品の輸送など物流事業や、地域活性化のコンサルティングなど、非航空収入を伸ばす努力をしています。

日本航空(JAL)は、2021年4月、「JALふるさとプロジェクト」を始動させました。47都道府県ごとにチームを作り、全社員横断で地方創生に向けたアイディアを出しています。

例えば、16人の客室乗務員が、実際に地方へ移住し、特産品を生かした商品開発などを担います。東京など都市部の企業や消費者に地域の魅力を発信し、二拠点居住(デュアルライフ、参考資料2、注1)やワーケーション(注2)の行き先に選んでもらうのです。

 

☆まとめ

人材サービスのエン・ジャパンの調査によりますと、35歳以上の2400人のうち、6割が「ワーケーション(注2)をしてみたい」と回答していました。一方、実際に経験した人は、全体の7%に止まっていたのです。

すなわち、観光業におけるワーケーションの現状のシェアーは、まだ、僅かですが、潜在需要は凄く大きいのです。今、すぐに対応出来れば、その地域は移住やワーケーションの訪問者を、急速に増やすことが出来ます。これにより、市町村内のホテルや民宿など宿泊施設の収入を、急増させることもできます。

これは、中山間地の地域創生(山村振興)の最大のテーマです。航空会社にとっては、ワーケーションは、ワーケーションを楽しむ顧客の航空運賃収入だけでなく、ワーケーション支援サービスの手数料収入も入るのです。それも一時的ではなく、未来に向けて、永続的な収入になる楽しみもあるのです。

私は、それ以上に、民泊に期待しています。これは各地の市町村民個人と個人顧客とが、直接つながる、ダイレクト・ツウ・コンシューマー(注4)です。SNS(注5)とインスタグラム(注6)で、ネット上で、世界の8億人と直接つながるのです。

次世代は、きっとこうなると、私は考えていましたが、コロナの襲来で、一気に直近の未来に、前倒しになりました。

今、コロナで、料理の個人宅への宅配が、急増しています。地域の特産品の宅配も、急速に拡大するでしょう。この動きは、その糸口になります。

地域創生(山村振興)にとって、これは、きわめて重要な動きです。私は、この動きが大きなうねりになることを期待しています。(参考資料1、日本経済新聞、2021年4月28日から参照して記述)

 

(注1)デュアルライフ(dual life):都市と農山漁村を行き交うライフスタイルを意味する和製語。二地域居住、二拠点生活ともいう。

(注2)テレワーク:勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT、Information and Communication Technology)を活用し時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。tel (離れたところで)とwork(働く)の合成語。

ワーケーション:work(ワーク)とvacation(バケーション)の合成語。休暇中、特に旅行先でテレワークを行うこと。

(注3)デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DT):「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱。ビジネス用語としては、「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」の意。

(注4)ダイレクト・ツウ・コンシューマ(D2C Direct to Consumer):製造から販売までを垂直統合したビジネスモデルのうち、実店舗を介さず、インターネット上の自社ECサイトでのみで販売するモデル。インスタグラムなどのSNSを通じた消費者(コンシューマー)と生産者の情報交換が主力になる。

(注5)SNS(Social Networking Service):人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。

(注6)インスタグラム:写真に特化したSNS (ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。画像や短時間動画を、共有する無料のスマートフォン・アプリとそれを用いたサービスのこと。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年4月28日。

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