コロナ禍の中でスタートアッブが躍動(その3)米カーネギーメロン大学卒のスタートアップ 完全自動実験で世界を牽引

林業再生・山村振興への一言(再出発)

 

2022年2月 (№180)

 

椎野潤(新)ブログ(391) 次世代産業社会の完全自動実験を革新の起爆剤に AI・ロボット使用を積極推進、スタートアップを育成・活用 2022年2月8日

 

☆前書き

日本経済新聞の2022年1月18日朝刊は、AI・ロボットの積極活用による完全自動運転を報じていました。今日は、これをブログに書きます。記事は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「研究開発に必要な実験を人工知能(AI、注1)とロボット技術で完全自動化する取り組みが本格化している。米カーネギーメロン大学は24時間365日稼働する大規模施設の建設を2022年1月に始めた。国内でも島津製作所などは、医薬品材料研究を自動化する取り組みを始めた。完全自動実験室の台頭は、生産性向上のイノペーション加速の起爆剤となりそうだ。」(参考資料1、2022年1月18日、日本経済新聞から引用)」

 

☆解説

カーネギーメロン大学の出身者が創業した、ラボ実験請負スタートアップの米エメラルド・クラウド・ラボ社(カルフォルニア州サウスサンフランシスコ市)では、テニスコート5面分の1400平方メートルの施設に、数百台の実験施設が整然と並んでいます。でも、人の姿はありません。研究者は、同社の専用システムから実験の手順を定めて指示を出します。指示を出してから、平均12時間以内に実験が始まります。同社の広報担当者は、「大学、バイオテクノロジーのスタートアップ、大手製薬会社が顧客だ」と述べています。

実験の完全自動化システムによって、研究のスピードと生産性の大幅アップが期待できます。同社によりますと、このシステムの利用により、従来の3〜5倍の実験データが得られるのです。また、研究効率を下げる原因となる実験機器のメンテナンスや故障対応などが不要になります。

顧客として、同ラボを使ってきたカーネギーメロン大学は、ペンシルペニア州ピッツバークの同大学構内に、4000万ドル(約45億円)を投じて、同社の施設よりも一回り大きい1500平方メートルの「クラウドラボ」の建設に踏み切りました。2022年の夏に完成する予定です。ここでは200の機器を配置し、材料とサンプルの準備や合成、精製、実験、特性を評価する機能があります。実験をオンラインで指示すれば、100を超える複雑な実験を、同時に実行できます。

この特徴は、AI(注1)と組み合わせることです。すなわち、このロボットはAIを組み合わせることにより、著しく効率が向上します。同社は「機械学習を使って磁気共鳴診断装置を使って造形剤の理想的な候補を、わずか1週間で見付けることができた」と、2021年10月、米学術誌に発表しました。

 

☆まとめ

ここでは、研究開発に必要な実験を、人工知能(AI、参考資料2、注1)とロボット技術で完全自動化する取り組みの実例を細かく記述しています。米国のラボ実験請負スタートアップ米エメラルド・クラウド・ラボ社が、世界の最先端実験技術を牽引している姿を見てきました。

でも、日本国内でも、実験の自動化は加速しています。島津製作所と神戸大学は、2021年12月、ゲノム編集をした微生物に、有用な医薬品原料や化合物を作らせる最先端の研究を自動化する取り組みを始めました。理化学研究所も安川電機などのロボットを生かしたバイオ系の無人実験室を稼働させます。ロボットとAIを組み合わせてAIが、人手に頼ってきた細胞の培養方法を学び、ロボットに指示を出します。

理研は、さらに高度な利用を想定し、東京大学や筑波大学など6拠点に設置した実験設備をインターネット回線を介してつなぎ、遠隔地から指示した実験を自動で実施する研究を進めます。

すなわち、日本でも、ロボットとAIが共生した最先端実験の自動化が急速に展開しているのです。この日本の最先端技術の開発・運用においても、夥しい、若いスタートアップが続々と立ち上がっています。

 

今日取り上げた事例は、バイオ分野の仕事でした。繊細な細胞などを扱う実験例が中心でした。このような「生き物」を扱う仕事は、とても特殊な事例です。でも、人工知能(AI)とロボットの共生による完全自動化は、このような事例に限られているわけではないのです。どの産業でも、どの業種にも、多くの実例があるのです。そして何処にも、若い人間集団スタートアップが、次々と誕生し、次世代を牽引しています。

私が一貫してブログに書いている、林業創生と山村振興でも同様です。2022年1月にブログに書いてきた林業×住宅産業とトランスフォーメーション(DX、参考資料2、注2)やロボティク・ブロセス・オートメーション(参考資料2、注3・参考資料3)でも、同じことが言えるのです。

大分県の佐伯広域森林組合で、事務作業の改革を任せられていたスタートアップの女性達が進めていた、収支管理の厳格化による育林収益の見える化も、いずれは事務ロボットとAIの共生による完全自動化へ向うはずです(参考資料2、注3・参考資料3)。

当然、森林に苗木を植えて杉の成木に育てる「育林」や、丸太から木製品を製造する「木製品産業」でも、AIと育林ロボット・生産ロボットの共生による完全自動化が、目標になってきます。

林業の中でも伐採や搬出作業は、特に危険な死亡災害が多い作業です。AIを搭載したロボット君に代わりにやってもらうことにより、林業の労働災害で亡くなる方は大幅に減るでしょう。若い人が憧れる重機に乗ったカッコいい作業も、画像処理やAIを使える重機を操って、ロボット君に伐ってもらった立木を、最も価値が高くなるよう最適な丸太に切り分けていくような、付加価値生産性の高い、さらにスマートな作業に進化させることができるでしょう。安全性も給料も上がるはずです。

ですから、次世代に向けて、林業・山村の改革を進めて行くには、このブログで述べてきた処まで視野を広げ、最先端技術の動きを注視して行かねばならないのです。そして若いスタートアップを育てていかねばなりません。(参考資料1、2022年1月18日、を参照引用して記述)

 

(注1)人工知能=AI(artificial intelligence):「計算(computation)」という概念と「コンピューター(computer)」という道具を用いて「知能」を研究する計算機科学(computer science)の一分野」を指す語。言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術。計算機(コンピュータ)による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野。

(注2)DX(デジタルトランスフォーメーション、digital transformation、略語DX):トランスフォーメーション (transformation): 物の形態、外観、性質などをかえること。変革・変形。デジタルトランスフォーメーション: デジタル技術で事業を変革すること。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの。略語がDXである理由は、「Trans」を「X」と略すことが一般的な、英語圏の表記に準じているため。

(注3)ロボティク・ブロセス・オートメーション:(Robotic Process Automation 略語RPA):ホワイトカラーのデスクワーク(主に定型作業)を、パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが代行・自動化する概念。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年1月18日

(2)椎野潤(新)ブログ(388) 伊佐裕・小柳雄平ブログ(その3)林業×住宅産業とトランスフォーメーション(DX)の展開 2022年1月28日

(3)椎野潤(新)ブログ(385) 大型パネル事業が導く林業再生(その3)佐伯広域森林組合の成長の軌跡と新たな展望(3)書き切れなかった詳細エピソード 2022年1月18日

 

[付記]2022年2月8日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:コロナ禍の中でスタートアップが躍動(その2) スタートアップ市外地で新陳代謝、2022年2月4日]

 

大谷恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

スタートアップは知的産業が多いと思いますが、オフィスビルもフリースペースなど機能が変わっていくと思います。次世代の入居者のオフィスやフリースペースの内装、インテリアに木材を多用していただけたらと思います。今までは人がすみかを選んでいましたが、これからは優良なすみかが人を選んでいく時代になっていくかと思います。ブログにもありますように、社員を集めるには建物が大事になってきました。

 

酒井秀夫

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