AIの次世代 エッジAI 実店舗を大改革 契約書類作成 自動運転にも クラウドに代わり台頭 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年9月 (№137)

クラウド(注1)からエッジ(注2)へ――。人工知能(AI、注3)の活用の舞台が、利用者に近い末端(エッジ)に広がってきました。

 

□ 椎野潤(続)ブログ(348) AIの次世代 エッジAI 実店舗を大改革 契約書類作成 自動運転にも クラウドに代わり台頭  2021年9月7日。

 

☆前書き

米国の大手IT企業が凄い力を持っていたのは、クラウド(注1)によってでした。しかし、手元に「AIカメラロボット」を置くだけで、クラウドに画像データを送信しなくても、同じ機能を果たせる「エッジAI(注2)」が出現したのです。2021年7月30日の日本経済新聞は、これを記事に書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「クラウド(注1)からエッジ(注2)へ」――。人工知能(AI、注3)の活用の舞台が、利用者に近い末端(エッジ)に広がってきた。ロッテが来店客の購買行動を分析して売り上げ増加につなげるなど、小売りの現場に変革をもたらしつつある。電子商取引(注4)に後れを取っていた「リアル店舗」のデータ活用を後押ししそうだ。」(参考資料1、2021年7月30日、日本経済新聞から引用)

 

☆解説

来店客はどの商品を手に取り、何を買ったのか。買い物の「過程」を探るため、ロッテが2020年6月に、これを探る試みを始めました。この試みでは、スーパーのアイスクリーム売り場を、じっと見つめる「AIカメラ」がいました。ここでは、この「AIカメラロボット」が主人公です。

前回のブログ(参考資料2)に書いた米国の巨大IT企業5社は、高い効率と社会の高度の創造性を実現していました。これは、まったくクラウド(注2)のお蔭なのです。これまで、IT化システムの多くは、クラウドにデータを一旦送り、これにより顧客各自はコンピュータ機器やソフトを持たなくても、サービスとして利用させてもらっていたのです。ですから次々と開発される新しいAI(注3)IoT(注4)システムを、誰でも、どんどん、使っていけたのです。それで今の社会は、AI・IoTの急進化とともに、顧客の個々人も、共に進化していける社会になったのです。これはクラウド(注1)のおかげでした。

でも、ここで登場した「エッジAI」は、クラウドを使わないで、目的を達成できるのです。映像をクラウドに送らないですむので、通信費用がかかりません。コストが劇的に低減します。

ロッテは、この「エッジAI」を店舗に設置して、実験を開始しています。ここでの特徴は、カメラにその場で画像を解析する「エッジAI(注1)」を用いている点です。撮った映像は保存せず、すぐ廃棄します。客の年齢、性別、滞留時間などの解析結果のみをクラウド(注2)に送り、このデータでその後の詳細な分析を行います。

こうした仕組みを採用するのは、「顧客に不快感を抱かせるのを避けるため」なのです。買い物の様子を映像に記録されると、不安を招きかねないからです。カメラを入口や通路にも設置しました。分析結果を生かして、売り場への誘導や商品陳列の工夫に成功しました。カメラを導入していない同じ系列の店舗と比べると売り上げが増えました。

小売店では、レジに使うPOS端末を使って情報を取り分析しています。この情報により商品の売れ行きはわかります。でも、来店者が商品を選ぶ過程を追跡することは難しいのです。その点、電子商取引(EC、注5)は消費者の関心についてのデータを収集しやすいのです。それが、社会の高度情報化が進む中で店舗販売が、電子商取引に負けていっている理由です。

ロッテにAIカメラを使った「来店客分析サービス」を提供しているパナソニックは、「売り場の最適レイアウトや販売機会損失の最小化策を提案できる」と「エッジAI」を賞賛しています。

これまでの人工知能(AI)による解析では、クラウド(注2)で実施するのが一般的でした。ただ、通信に時間がかかり、リアリタイムの情報処理は難しかったのです。機密性の高い情報を扱う際は、セキュリティ確保やプライバシィへの配慮も課題でした。重要なデータを外部に出さないエッジAI(注1)は、こうした点で強みがあります。それで今、利用が俄かに広がってきました。(参考資料1、2021年7月30日、日本経済新聞を参照引用して記述)

 

☆まとめ

9月3日のブログ(参考資料2)に書きましたように、米国の大手IT企業各社が、圧倒的な存在感を誇ってきたのは、クラウド(注1)でAI(注3)を利用するサービスにおいてでした。しかし、エッジAI(注2)の登場で、AI利用の産業・社会の改革は、新しい局面を迎えます。

エッジAIの活用が広がる背景には、AIの計算を支えるGPU(画像処理半導体、注6)の進化があります。深層学習(注7)などの普及と相まって、小型の端末でも手ごろな価格で、高度なデータ解析が可能になりました。ロッテの取り組みのようにプライバシーへの配慮を両立できる点も、エッジAIの強みです。

小売店以外でも、エッジAIの導入が広がっています。日本生命保険はこのほど契約書類の文字をAIで認識する「AI−OCR(光学式文字読み取り装置)」での活用を開始しました。手書きの文字を素早くデータ化でき、同社では作業に関わるコストを1/2に削減できました。

エッジAIの用途で本命視されているのが自動運転です。走行中に障害物を避けるなど瞬時の判断が欠かせない状況で、強みを生かせるのです。トヨタ自動車は2021年4月、センサーで得た情報に基づき、AIが危険を認識するシステムを登載した高級車「レクサスLS」と燃料電池車「ミライ」を、発売しました。(参考資料1、2021年7月30日、日本経済新聞(落合周平、AI量子エディター 生川暁)を参照引用して記述)

 

(注1)クラウドコンピューティング:クラウドコンピューティング(cloud computing):インターネットなどのコンピュータネットワークを経由して、コンピュータ資源をサービスの形で提供する利用形態。略してクラウドと呼ばれることも多く、cloud とは英語で「雲」を意味する。クラウドの世界的な普及でオンラインであれば必要な時に必要なサービスを受けられるようになり、あらゆる作業が効率化され、社会の創造性を高めることに成功した。

(注2)エッジAI:クラウドで運用している人工知能(AI)と異なり自動車やカメラ、ドローンなど利用者に近い端末(エッジ)で画像解析などを担うAI。あらかじめ多量のデータで学習させたAIを使って予測や分析をする利用方法が一般的。小型の端末でもデータをリアルタイムに高速処理できる。

(注3)AI(artificial intelligence)=人工知能:「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。人の頭脳の代わりに、記憶し考える機械システム。

(注4)IoT:IoT(Internet of Things):モノのインターネット:あらゆる「モノ」がインターネットで接続され、情報交換により相互に制御する仕組。

(注5)電子商取引(EC、e-commerceあるいはelectronic commerce ):コンピュータネットワーク上での電子的な情報通信によって商品・サービスを売買・分配すること。

(注6)GPU:画像処理を専門とする演算装置であり、主演算装置の制御の下で用いられる動画信号生成専用の補助演算用ICである。

(注7)深層学習:人や動物の脳の神経回路をモデルにした、多層のニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)による機械学習の手法。機械学習(Machine Learning):経験からの学習により自動で改善するコンピューターアルゴリズムもしくはその研究領域で人工知能の一種。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年7月30日。

(2)椎野潤(続)ブログ(347) 米IT巨大企業5社 アップル・アルファベット・マイクロソフト・フェイスプック・アマゾン・ドット・コム 純利益急増 これはコロナ終息後も続くのか 2021年9月3日。

 

[付記]2021年9月7日。

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