林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年9月 (№138)
クラウドからエッジへ――。人工知能(AI)の活用の舞台が、利用者に近い末端(エッジ)に広がってきています。文字認識改革でもエッジAIは進みます。
□ 椎野潤(続)ブログ(349) AIデータ活用が テレビ広告の価値を磨く AIがCMプランニング 次世代社会へエッジAIが誘導する 2021年9月10日。
☆前書き
広告宣伝費や商品のターゲット(標的)などは、重要な機密情報です。これまでは、広告主や放送局と直接やりとりできるのは、営業担当者だけでした。でも、博報堂は、いよいよ、CMのデジタル化にカジをきりました。2021年6月3日の日本経済新聞は、これを書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。
☆引用
「博報堂DYホールディングスは、広告主の目的に合わせて、人工知能(AI、注1)がテレビCMの出稿プランを立てるサービスを始める。過去2年分の番組の視聴率や商品の販売データなどを解析し、最適な方法を提案。広告効果を人間より3割以上高める。テレビCMは高い告知力が強みだが、商品の売り上げ増など、その効果は分かりにくかった。データに基づき検証・立案できる事業モデルに転換してネット広告に対抗する。(参考資料1、2021年6月3日、日本経済新聞から引用)
☆解説
博報堂DYメディアパートナーズ(DYMP、東京・港)は、以下のサービスを始めました。
(1)「30代の既婚男性に保険商品を売りたい」と広告主の目標を設定すると、人工知能(AI、注1)が、「投資に関心のある人」や「高級腕時計のウェブサイトを訪問したことがある人」など、広告の対象者に近い客層が良く見る番組を探しだします。
(2)テレビ局、時間帯、番組などの無数の組み合わせから、最も効果的な出稿計画を、AIロボットの相棒(注2)が、選びだします。
テレビ視聴率や、生活者の消費意欲調査の定期アンケート、CM放映後の売れ行き変化などの調査会社のデータを、AIロボット(注2)が統合するのです。35兆バイト(テラバイト)の膨大なデータを、AIロボットが分析します。ここでは、人がCMを製作し、AIロボットが戦略を立てる分担で、広告効果の最大化を目指すのです。
2020年に、複数の商品やサービスで実証実験をしたところ、人が考えたプランに比べて、売れ行きやダウンロード数(注3)の数値が80%高くなりました。人間で48時間かかった作業時間もAIロボットなら数分で終わるのです。これは凄い生産性向上につながります。
広告代理店の営業職の仕事は、大きく分けると3つになります。広告主の目標と予算に対して、広告の出稿計画を立てる「プランニング(企画)」、計画に合わせて広告枠を買い取る「バイイング(購入)」、放送されたCMの効果を分析し報告する「レポーティング(報告)」の仕事です。ここで、AIロボットが担うのは、プランニング(企画)です。
広告宣伝費や商品のターゲット(注4)などは、機密情報です。そのため、これまでは、広告主や放送局と直接やりとりできるのは、営業担当者のみでした。そのためプランニング(計画)の仕事は、担当者の経験やノウハウに大きく左右されました。社内でデータが共有されることは少なかったのです。
でも、博報堂は、いよいよ、CMのデジタル化にカジをきりました。その背景には、ネット広告の台頭があるのです。ネットは利用者の好みや志向に合わせた追跡型の広告で急成長しました。ネット広告は広告費に関して、購買やダウンロード数(注3)の成果がデータで、すぐ検証できることが強みだったのです。2019年に、ネット広告はテレビCMを追い抜きました。
テレビCMは、大人数に告知できる強みがあるのですが、「視聴率」と「視聴者の大まかな年齢層と性別」を掛け合わせて見る位のことしか、効果が計れなかったのです。これを打破するため、いよいよ、デジタル化に踏み切ったのです。
今後は、プランニング(企画)だけでなく、広告効果を検証するレポーティング(報告作成)も、AIロボットの相棒君(注2)に任せる計画です。(参考資料1、2021年6月3日、日本経済新聞を参照引用して記述)
☆まとめ
テレビCM業界では、デジタル化の動きが、今、急速に広まっています。ビデオリサーチでは、これまで所帯ごと計測していた聴取率について、個人での計測を始めました。データの幅ときめ細かさを高めて、丁寧な広告戦略を策定するためです。でも、そのためには、データの外部への漏洩を完全に遮断し、プライバシィ保護を徹底しなければなりません。
9月7日のブログ(参考資料2)に書いた最新AI技術「エッジAI(注5)」が、ここでの最高の宝物です。いままでのように、収集したデータを外部のクラウド(注6)に送信しないですみますから、プライバシィ保護が徹底できるのです。さらに、今まであった外部のクラウトへの送信コストがなくなりますから、情報収集コストを著しく低減できるのです。
また、これまでわからなかった「商品を購入するときの顧客の行動」を詳細に知ることができるのです。良いことずくめです。ここでは「エッジAI」は、どんどん使われて行くことになるでしょう。これが次世代社会を牽引します。(参考資料1、2021年6月3日、日本経済新聞を参照引用して記述)
(注1)AI(artificial intelligence)=人工知能:「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ (computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。人の頭脳の代わりに、記憶し考える機械システム。
(注2)AIロボットの相棒:AIが計算・分析して回答してくれるスマホなどは、結局、一番頼りになる相棒である。筆者は、これをAI相棒ロボットと呼んでいる。
(注3)ダウンロード(Download):接続されたコンピュータ間に存在するデータファイルなどを上流ノードから下流ノードへ転送することを指す。ノード(node):「結び目」「集合点」「節」といった意味。
(注4)ターゲット (Target):「標的」を意味する英語。商品マーケティング上の対象となる特定の購入者層や、テレビ番組で対象とする特定の視聴者層などをさす。
(注5)エッジAI:クラウドで運用している人工知能(AI)と異なり自動車やカメラ、ドローンなど利用者に近い端末(エッジ)で画像解析などを担うAI。あらかじめ多量のデータで学習させたAIを使って予測や分析をする利用方法が一般的。小型の端末でもデータをリアルタイムに高速処理できる。
(注6)クラウドコンピューティング(cloud computing):インターネットなどのコンピュータネットワークを経由して、コンピュータ資源をサービスの形で提供する利用形態。略してクラウドと呼ばれることも多く、クラウドとは英語で「雲」を意味する。クラウドの世界的な普及でオンラインであれば必要な時に必要なサービスを受けられるようになり、あらゆる作業が効率化され、社会の創造性を高めることに成功した。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年6月3日。
(2)椎野潤(続)ブログ(348) AIの次世代 エッジAI 実店舗を大改革 契約書類作成 自動運転にも クラウドに代わり台頭 2021年9月7日。
[付記]2021年9月10日。