林業・山村スタートアップの先導者たち(その2) 株式会社百森

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年3月(83)

□椎野潤(続)ブログ(294)林業再生・山村振興ブログ 林業・山村スタートアップの先導者たち(その2)株式会社百森 2021年3月5日

☆序文

森林パートナーズ株式会社(注9)の小柳雄平社長から、次の魅力溢れたブログが、送付されてきました。ここでは、それを紹介します。

 

[小柳雄平著のブログ、株式会社百森]

☆前書き

林業を軸とした地域再生の成功モデルとして注目を集める岡山県西粟倉町。そこで活躍する株式会社百森について記載いたします。その西粟倉村が、また新しく前進し始めています。西粟倉村のホームページ(参考資料1、注1)から引用して記述を開始します。

 

☆引用

西粟倉村は2008年に「百年の森林(もり)構想(以下、百森)」を掲げ、2058年を目標年として「百年の森林(もり)」の実現に向けて村ぐるみで挑戦を続けていくことを宣言しました。それから約10年が経過し、百森は村づくりの幹となり、再生可能エネルギーなどの様々な枝葉がそこから成長しつつあります。

百森2.0(注2)は、百森という幹から意図的に多様な枝葉を成長させ、持続可能な西粟倉村を実現していこうという挑戦です。

人工林、天然林、田畑、川などの多様な自然資本を相互に連関させながら価値を生み出していくことに挑戦します。これを成功させるためには、世代を超え、そして地域を超えて、百森2、0(注2)に関わる仲間が必要です。

多様な自然と多様な人々との相互関係の中から、それらの可能性を引き出し多様な価値を生み出し分かち合っていく。そんな村づくりを目指していきます。森づくりから、村づくりへ。百森2.0が始まります。(参考資料1、注1を引用して記述)

 

☆中間まとめ

西粟倉村は、2008年に「百年の森林(もり)構想(注4)」をたて、明確なビジョンの設定とそれを地域内外へ発信し、また林業の六次化など、構想を具現化する動きを起こしました。その構想への共感が高まり、林業関連のローカルなベンチャー事業などの起業が活性化し移住も増えてきております。今では村人口の約1割が移住者となり、人口は減っているものの、生産年齢人口は増加していっているとのことです。これは驚くべきことです。そのような西粟倉村が新たな目標「百森2.0(注2)」を立て森林資源のみならず自然資本を総合活用し、それぞれに関わる事業を連携させ社会資本を充実させ、持続可能な森林環境を実現し「上質な田舎」を目指すということです。

そして西粟倉村内の事業者が一丸となってタッグを組み2020年8月に最先端の持続的林業を目指すチーム「西粟倉百年の森林協同組合(注3)」が結成されました。林業、製材業、加工業、家具製作、バイオマスなど木材産業の川上から川下までのメンバーで構成される組合のユニークなサービスや、結成されるまでの熱意、多くのご苦労は当組合のホームページ(参考資料1、注1)に記載されております。まさに顔が見える産業の連携を実践されており、組合自体が六次産業化された、類まれな最先端な組合です。その一員で森林の計画・管理を行っているのが株式会社百森です。

中井照大郎さんは大学卒業後商社でエネルギー関連の仕事に従事された後、再生エネルギーのベンチャーに転職。その後一念発起し、2017年に幼馴染の田畑直さんとともに共同代表として株式会社百森を設立。岡山県西粟倉村の「百年の森林構想(注4)」を受け継ぐ形で事業をスタートされました。「新時代の山守」としてテクノロジーを駆使し、所有者700名を越える民有林および公有林を包括して受託管理し、間伐や植林などの事業を展開。そのかたわら木材の生産流通以外にも森林を使った新規事業を支援し、既存の林業の枠組みを拡げることで、日本の林業を産業として成り立たせようと活動されています。西粟倉から「森と人が豊かに交ざりあう世界」を発信しています。

 

[株式会社百森のコンサルタント事業]

☆前書き

株式会社百森は、所有者個人では管理しきれない小規模な森林を、行政と連携して、700名以上の方々の森林を受託管理してきました。そのノウハウを活かし、全国で同様の問題意識を持つ行政・地域の方々を支援すべく、コンサルティング事業を開始します。ここでは、

中井照大朗、田畑直著:森林管理専門会社「株式会社百森」。地方自治体、森林組合向けコンサルティング事業を開始、2020年4月10日を引用します。

 

☆引用

.コンサルティング事業の概要

(1)地域において持続可能な森林管理体制(座組み)の構築支援。

(2)自治体業務の棚卸しおよび民間視点での業務効率化。

(3)森林管理に関わる各アクター(注6)の業務設計と移行支援。

(4)最新のレーザー測量・画像解析技術を用いた森林資源量把握と解析・ゾーニング(注5)。

(5)汎用型ドローンによる継続的な資源量解析体制の構築支援。

(6)森林所有者の集約化業務の設計および業務支援と所有者とのコミュニケーション支援。

(7)森林経営管理法に基づく意向調査等各種手続きを支援。

(8)間伐等各種施業の仕様策定・検査支援。

(9)バイオマス利用を含め搬出材を活用した新商品開発。

(10)認証の取得および運用支援。

 

.コンサルティングのメリット

(1)森林管理業務の明確化とスリム化をし、実効力のある体制へ。

自治体や森林組合の職員構成に応じて業務を再編成し、最適な森林管理体制への移行を支援します。西粟倉村では自治体業務を棚卸しし、必要な業務は除いて民間(株式会社百森)へ委託することで、人数が少なくても実効力のある体制を構築します。

(2)地域のプレーヤーで連携し、地域みんなで森林を守り育てる森林管理へ。

地域のプレイヤー(自治体、森林組合、民間の林業事業者)や森林の状況に応じて、地域の森林管理における役割を再定義し、地域みんなで森林を守り育てる「地域みんなで森林管理」への移行を支援します。

(3)データを徹底的に活用した森林管理へ。

航空レーザー等による森林資源量解析を活用し、ゾーニング(注5)やゾーニングを踏まえた継続的なデータ取得による森林の管理を支援します。

(4)森林を管理し、放置林を地域資源に転換。

それまで放置されていた森林を、管理し手入れしていくことで、特に災害抑止(土砂災害や河川の氾濫の抑制)機能を最大化し、地域の暮らしを守るだけでなく、木質バイオマス利用や森林のCO2吸収量を、カーボンクレジット(注7)として販売したり、新たな地域資源として商品開発することを支援します。(中井照大郎、田畑直著、参考資料2から引用)

 

☆まとめ

株式会社百森のサービスは、森林経営管理法の内容をすでに具現化、実施したものです。700名超の森林を受託管理してきた中で、必要に迫られ、西粟倉村内で官民一体協力して創り上げた貴重なノウハウです。まさに地方創生の成功例であり、またこれをオープンにし、他地域へもコンサルティングを展開しているのは楽しみです。そして、この森林の生きたデータ化こそが林業DX(注8)の根本です。

デジタル化とは、ただ、やみくもにデジタル技術を活用するものではなく、理念を遂行する上で必要なものをデータ化してそれを様々なものに連携できる情報としてつくりこむ手段です。明確なビジョンを持つことが重要です。

百森の中井さん、田畑さんは、東京からのIターン者であることもまた、これからの地域再生のモデルであり、お二人を迎えた村の気質にも、大いに学ぶ必要があります。

熱心な行政があり、西粟倉百年の森林協同組合の理事の方々のような村民の中心的な人々がいて、移住者ながら村を良くしたいと強く願う中井さん、田畑さんのような若者がいる、このような地域は日本の宝であると思います。このような地域がさらに地域の資源を豊かに活用しながら他産業の情報と結びつき、持続性の高い循環を生み出そうとする「百森2.0(注2)」が注目され、各地域にも同じように火がつくことを期待します。そのためにも我が森林パートナーズ(注9)も「森林再生プラットフォーム」をより深化し、森林に関わる様々な情報とリンクして森林資源を最大限活用できる仕組みづくりをしていきます。(参考資料1〜2を参照して小柳雄平が執筆)

 

☆結言

私は、実は2020年6月26日に、岡山県西粟倉村の山村改革の素晴らしい活動に感動して、ブログを書いているのです。これが参考資料3です。そして、このブログはさらに2年前の2018年8月5日に書いた昔ブログ(参考資料4、注10)を引用して書いているのです。

このブログには、2009年に西粟倉が「百年の森林構造(注4)」を掲げてから、このブログを執筆した2018年までの10年間に、村役場が総当たりでぶつかって、大きな改革を実施した「村役場の頑張り」が書かれています。この間、多くの若者が自営するスタートアップが30社も集結し、事業を開拓しました。

このブログは、日本経済新聞(参考資料3)を読んで書きはじめたのですが、詳細は、インターネットテレビ、AbemaTV(注10)の発信記事を読んで書いています。記事は以下のように書いてきます。

「過疎の山に起業が集結 IoTで木の管理も。村の面積の約9割が「山」である岡山県西粟倉村。この人口1500人ほどの小さな村では、林業の復活に取り組み、この10年で30社以上が起業。総売上は年間15億円に上っている。

子ども用の家具や遊具の販売で約2億4千万円を売り上げる『木の里工房 木薫』や、これまで見向きもされなかった、間伐材を活用した事業や、ゲストハウス事業などで、年間約7千万円の売り上げを達成した『sonraku』など、ベンチャーが活躍、『ローカルビジネスのシリコンバレー』と呼ばれている(参考資料2から引用)。」

そして、このブログの☆むすびには、以下のような、私の感想を述べています。

「なぜ、この山に、林業スタートアップが30社も集結したのでしょうか。それは、スタートアップがやりたいことを、誰にも邪魔されずに実施できたからです。全く邪魔をしないことが、実は、最大の支援なのです。そして、「これをやってくれますか」「○○を貸してくれますか」と、手伝って欲しい、貸してほしいというものを、言われた通り与えてやるのが良いのです。そうすると、スタートアップは、凄い世界を作ります。」

丁度、2018年、村内の山の木と村外にいた1300人の山主の木の育林を、総まとめする凄いスタートアップが登場したのです。それが、「百森」であり、中井さんだったのです。

 

百森は、今、西粟倉の経験を、今、日本全国に拡げようとしています。そこでは成功の秘密は、村役場の人達の熱意と、スタートアップへの対応にあったことを、丁寧に説いて進めているでしょう。これで、全国の林業・山村改革は確実に進みます。中井さんは、日本の林業・山村改革の先導者になると、私は確信しています。(結言は、椎野潤記述)

 

(注1)西粟倉村ホームページ。西粟倉村役場 (vill.nishiawakura.okayama.jp)。

(注2)百森2.0:森林資源のみならず自然資本を総合活用し、それぞれに関わる事業を連携させ社会資本を充実させ、持続可能な森林環境を実現し「上質な田舎」を目指す西粟倉村の新たな目標。

(注3)西粟倉百年の森林協同組合:最先端の持続的林業を目指す西粟倉村のチーム森林組合。

(注4)百年の森構想:西粟倉村が2008年に設定した構想。明確なビジョンを設定し、それを地域内外へ発信し、林業の六次産業化など、構想を具現化する活動方針を示す。その構想への共感が高まり、林業関連のベンチャー事業の起業が活性化し移住も増加した。

(注5)ゾーニング:農業振興計画や都市計画等の土地利用計画において、用途ごとに区分して一団の地域又は地区の指定等を行うこと。

(注6)森林管理アクター:森林管理に関わる人や物、組織、外部システムがアクターに該当する。アクター:対象システムの外部に存在し対象システムとやりとりする、人やモノまたはシステム。

(注7)カーボンクレジット(Carbon Credit): 温室効果ガスの排出相当量のうち、国家間で経済的に取引可能なもののこと。京都議定書の温室効果ガス削減目標に基づき、各国が温室効果ガスの削減に取り組む中で、目標値まで削減することが困難である場合に、目標を達成している他国と取り引きして、余剰の削減量を融通することができる。

(注8)DX: デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation; DX):「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。ビジネス用語としては定義・解釈が多義的であるが、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」 という意味で用いられる。

(注9)森林パートナーズ:森林の維持・再生を掲げて伊佐裕が設立。設立2017年。

(注10)参考資料4、AbemaPrime(アベマプライム):インターネットテレビ局 AbemaTV:テレビのニュースチャンネル。

 

参考資料

(1)西粟倉村ホームページ。

(2)中井照大朗、田畑直著:森林管理専門会社「株式会社百森」。地方自治体、森林組合向けコンサルティング事業を開始、2020年4月10日。

(3)椎野潤ブログ[山村振興] ギグワーカーの山村振興への導入を考える 過疎の村 岡山県粟倉村の改革を参考に、2020年6月26日。

(4)椎野潤ブログ(223)過疎の村に30社のベンチャー起業が集結 IoTで木の管理を実施、  2018年8月5日。

 

[付記]2021年3月5日

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