森田俊彦ブロ グ 南九州の森林再生・山村振興(その5)「おおすみ100年の 森」の本格的な出発に当たって、今、考えること

☆巻頭の一言

2022年4月には3回にわたって、南九州鹿児島の南端に成立した「おおすみ100年の森」について、報告しました。そして前回は、その4回目として、フォレスターズ合同会社の小森胤樹さんと、3回の討論で主役だったNPO法人「大隅100年の森」の代表理事、大竹野千里さんとの対談をとりあげて報告しました。

ここで、先月3回のブログをまとめて下さった森田俊彦さんに、「さて、この後、どのようにまとめたら良いか」を相談したのです。すると、立派な報告書を送って下さったのです。今回は、これを引用してブログを書きます。「椎野潤記」

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2022年5月(№205)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(416) 森田俊彦ブログ 南九州の森林再生・山村振興(その5)「おおすみ100年の森」の本格的な出発に当たって、今、考えること 2022年5月6日

 

☆前書き

森田俊彦さんから[[おおすみ100年の森]について、今、考えていること]と題する原稿が送られてきました。今日は、これを引用して報告します。(椎野潤記)

 

☆本文

 

[「おおすみ100年の森」の出発について、今、考えていること]  森田俊彦

 

[近況報告から]

森田俊彦です。先ずは、「おおすみ100年の森」の近況報告から始めます。少しずつではありますが、構成メンバーの意思統一がなされてきました。組織の体裁になり始めると共に、対外的に各市町の首長をはじめ関係者から、「おおすみ100年の森はどんな森ですか?」と関心を寄せられるようになってきました。

今後の広域での予算獲得、行政との連携組織の構築の方法などを模索中です。また、2022年5月には、国会議員や、鹿屋市、垂水市、肝属町、錦江町、南大隅町、東串良町の2市4町の来賓、関係者をお招きして、設立祝賀会を催すこととなりました。

 

[前回の対談の回想]

次いで、2022年4月の「おおすみ100年の森」の各対談を通しての回想を書きます。

まず、次の一言を置きます。「心髄万境転 (心は、世の中に従って変わっていくが、根底にあるものは変わらない。)」この一言が、私が、今、痛感することです。

 

もう、十数年前の昔の話になりますが、森林管理データベースシステムを構築いたしました。この事を先ず話したいと思います。当時の私の立ち位置は、川下側の製材業と木造建築、設計を生業としていました。製材組合を立ち上げた時に、システムを発案しました。

このシステムについて簡単に説明します。それは、建築のオーダーを受けて、その建設に必要な木材を川上の伐採事業者に、径級、長さ、本数を知らせて、川上の人達が、誰がいつ、どれだけ搬出できたと送り返して貰うシステムでした。

 

これは十数年前のことですので、当時は、エクセルとメール、ショートメール等を駆使して実施するような状況でした。今なら通信状況や各種アプリで、もっと便利なことができると思います。ここで実施したのは、特注材を中心に、細かな発注と規格品のための大雑把な発注でした。

 

その後、川上の森林の状況把握のため、県森林組合と山主さんのご理解のもと、森林データを構築していくという作業をしました。でも、これは国をあげて行う改革でしたから、建設省がとるか、林野庁がやるかとか、大きな競争になりました。自民党から民主党、そしてまた政権交代と、我々も凄く振り回されたのです。

この時代に出来ていたのは、川下と川上との信頼関係と情報の一方向の伝達のみでした。まだ森林データが極めて希薄であったと思います。もちろん、その間に木材価格は、常に上下高します。ですから民間事業者の仕事は、あっちへ行ったりこっちへ来たりと、とても不安定でした。

 

[これから進めること、数々の問題点]

この度設立した「おおすみ100年の森」の構成メンバーの方々は、この古いシステムを良く理解して下さっています。理解者が6割に上ります。「今こそデータベースシステムだよね」とみなさんが言ってくださいます。

私としては、過去の経験と教訓に鑑みると、手前勝手な流通システムを作って型にはめるのではなく、それぞれの立場から一つずつ納得ずみのものを積みあげて、そのシステムでスタートし、変更、バージョンアップしていければ良いと思っています。それが時代の変化と共に長期にわたり存続しうるシステムになると確信しています。また同時に、同じ考えを持つ者、理解者と継承者を作っていく事が、現在の主な仕事であると思います。

今心配していることは、ウクライナ情勢のためロシアの木材の輸入が止まり、木材価格が高騰することです。これにより各企業として、利益確保が優先事項になり、大義よりも、各企業が守りの姿勢になることが心配です。ここでは長期的な視野に立って、お互いを信頼して進めていかねばならないと思っています。

 

行政の立場もある意味で理解できるところです。今回の森林経営管理制度は、首長クラスにはもう少し丁寧に説明していかねば、本当の理解には及ばず、担当課の職員も3年程度で配置換えの状況では、理解した時には移動ということになり、根本的な計画と推進には、及ばないと思います。また、本気で取り組んで、環境税を充当しようとすると事業費不足に陥ると思われます。

 

単一市町での経験豊富な職員不足と事業費不足は、その内、気が付かれると思いますが、まだ首長、議会にその認識がなく、とりあえず担当課は、基金に貯めておくという手法になります。基金をある程度の金額まで積み立て、今後の計画に、順次充当を計画されているのであればよいと思いますが、まだ、そのようになっているとは思われません。

こう考えると「おおすみ100年の森」は、極めて重要です。環境税交付額、人材不足、域内インフラの効率化等を考えた時、広域での森林経営計画と管理が、低コストでグレードの高いものにできるようにしなければなりません。そのために「おおすみ100年の森」は設立されたのです。

 

私は今、国産濃厚飼料(トウモロコシ、大豆、麦等 畜産飼料)を生産する会社をやっておりますが、昨年7月の設立時には、「鹿児島県でそんなものを作る人はいない」とか、「価格が安い海外から買った方が良い」などと、農家、行政の方々から言われました。昨年から中国の爆買いが始まり、干ばつや海上輸送費の高騰で徐々に価格が上昇しました。今回のウクライナ情勢で、世界の穀物庫として3割を占めるロシア、ウクライナ産の穀物が、凄い危機なのです。日本には直接的な輸入があるわけではありませんが、世界的には、やはり供給不足です。また円安の状況は、輸入品価格の上昇と共に物価を直撃するものと思います。最近では飼料作物を早く作ってくれと言われています。

 

戦後に植えた木材を切らずに、外材に頼っていた日本。ハウスメーカー、建材メーカーは、当時、安定して安く手に入る外材があるのに、高い国産材を買わなくてもよいと言っておられたことと、現状は凄く類似しております。

でも、幸いにも、木材(森林資源)は、唯一国内で自給できる品目です。今ここで、森林経営計画をきっちりと仕上げ、後世につないでいかなくてはならないと、思っています。

今はまだ、業界だけで、川上川下と言っておりますが、最終的には、エンドユーザーや一般の方々を川下として、皆さんとの相互理解のもと、国土を守っていかなければと痛感しております。(参考資料1、[おおすみ100年の森]について、今、考えていること]森田俊彦を引用。)

 

☆まとめ

森田俊彦さんの力作の論文で、森田さんが、今、考えておられることは、良く理解できました。私は、2022年6月には、関連する皆様と本格的なネット討論をしたいと考えています。その討論会には、私も、是非参加させていただきたいのです。

また、ここまでに連載した、南九州の林業再生・山村振興には、東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の暖かい指導文を頂きました。この討論会には、酒井先生にも是非、参加していただきたいと熱望しております。どのような討論会になるのか、とても楽しみにしております。「椎野潤記」

 

参考資料

(1)森田俊彦著:[「おおすみ100年の森」について、今、考えていること] 2022年4月24日。

 

[付記]2022年5月6日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(415) 小森胤樹ブログ 南九州の林業再生・山村振興(その4)  対談 小森胤樹 VS 大竹野千里 2022年5月3日

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

今回は、前回ご紹介いただいた大竹野さんと岐阜の小森胤樹さんとの対談でした。

 

大竹野さんの地元大隅半島では、民間の山々の多くが地域外の業者によって昔の2、3倍の速さで皆伐され、その材が地域外へ運び出され、地元製材屋さん、建築屋さんに必要とする材が回らず、地元消費者の多種多様なニーズに応えられないとのことでした。 地元には林業が生み出すお金(バリュー)が回らないことになり、このことが山離れを加速しているとのことです。このままでは「大隅に未来がなくなってしまう」という危機感がおおすみ「100年の森」構想協議会の皆さんにあり、「おおすみ百年の森」が地域の受け皿としての機能を果たすようにNPO法人として立ち上げられました。

 

大竹野さんは、「森と人との関係」も 時代と共に変わっていくと喝破され、多様性のある森とそれを守り続けるシステムを作ることによって、時代と共に変わり続ける人と、変わらない森との関わり方を、後世に残したいとされています。

 

文末に紹介されているKKB鹿児島放送「“木育”で未来につなぐ森林づくり」(https://www.youtube.com/watch?v=d16JXPFIc0Y)を拝見しますと、森林に対する考え方にはすでに世代間ギャップがあるとされ、木育の実践が紹介されていますが、「林業で結果を出したい」とのことで、公共性持続性が高い「大隅ブランド材」の地元への浸透と、各地に連帯が広がっていくことを応援したいです。

酒井秀夫

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