椎野潤ブログ「林業再生と山村振興]林業の再生と山村復興への挑戦 対談 文月恵理VS塩地博文 再造林への道筋(その1)

☆巻頭の一言

ペンネームでの活動に踏み切られた文月恵理さん。颯爽の出発です。装い新たにした文月さんと塩地さんの待望の第三弾対談、いよいよ、出発です。心を新たにした二人が新しい深い世界へ津々と進んでいきます。難しい改革の核心部へ、一歩一歩の歩みを進めます。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2022年5月(№206)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(417) 林業の再生と山村復興への挑戦 対談 文月恵理VS塩地博文 再造林への道筋(その1) 2022年5月10日

 

☆前書き

塩地さん、文月さんから、待望のブログが送られてきました。私が楽しみにしていたブログが、念願の「再造林の高みを」目指して登りはじめたのです。今日のブログの「題」は「再造林への道筋(その1)」です。

 

☆引用

対談 文月恵理 VS 塩地博文 再造林への道筋 (その1)                             文月恵理 塩地博文

 

塩地 : この対談も三回目になりました。文月さんと今回からペンネームに変更されましたね。

 

文月 : 4月より森林連結経営という会社の立ち上げに参加することにしました。このタイミングで、文月(ふみずき)というペンネームで以降活動しようと思います。月と植物の関係の深さは多くの皆さんが知られているところです。月の満ち欠けが、植物の生長や収穫に影響を与えているように、自分も自然の力を感じ取れる存在でありたいとの覚悟を示す意味で、月という文字を頂きました。

 

塩地 : さて、本日のテーマは、一番の課題であり、この対談、ひいては椎野ブログの目的そのものとも関わる、再造林への道筋です。林業資源は再生資源であり、循環しながら、資源枯渇を制御する事が可能です。また、建築、紙、パルプ、バイオマスだけでなく、景観資源として、二酸化炭素の固定化などの環境資源という側面もあります。加えて、治山治水にも直結しと、その資源性は多面的です。ここでは、人工林の資源価値とその再生というテーマに絞って、話したいと思います。

 

文月 : 再造林というのは、ある場所の木を全部伐採(皆伐)してしまい、そこに新たな苗を植えることです。日本では50〜60年でそのサイクルを繰り返す方法が奨励されてきました。しかし、苗が育つまでの長期間、森林の価値とされているCO2吸収や水質保全、景観などの価値が損なわれることから、欧米では近年、1ヘクタールを超えるような面積の伐採は制限される傾向にあるとも聞いています。ただ、日本では50億立法メートルという森林の蓄積量に比べ、林業従事者はわずか4万人程度というアンバランス、また手入れをされず製材品としての価値が望めない森林の多さなどもあって、皆伐・再造林という手段を否定することはできません。間伐や、価値の高い木を選んで伐採する択伐といった手段で森林の健全性を維持していくことが可能なら、本来はそれが望ましいでしょう。皆伐をするのであれば、山に利益が還る、山が資産になる、だから再造林されるという循環を作ることが、私の目指しているものです。それは利潤の追求だけでなく、お金になる山々を人々は大切にし、人間が森林を活かそうとする行為が生まれていくからです。森林は、放置してしまえば人間社会への脅威にもなり得るのです。獣害被害の広がりはその予兆で、山村の荒廃は都市の荒廃へと連続していくと思っています。

 

塩地 : 国有林はともかく、民有林で再造林が活発かと言えば、それを示すデータに出会った事がありません。このブログでも再三再四取り上げてきた大分県佐伯広域森林組合さんでは「100%再造林」と聞いていますが、シカの被害による対策費など、再造林への費用負担も高く、公的補助を受けながらの再造林であり、森林事業による利潤が再造林を促した結果とは、言いきれないでしょう。一体、いくら必要なのでしょうか?

 

文月 : 1立法メートルあたり17,000円で買い取ると、再造林費用が捻出できるとして、工務店さんが山から直接買い取りを意図した挑戦があると聞いています。しかし、伐採費用、運搬費用、製材・プレカットの費用などを、どの量で割り出すのかで、大きくコストも違ってきます。17,000円を割り出した積算基準に詳しくないので分かりませんが、年間10〜20棟分という工務店の実績からしても、小さな発注数量では17,000円が再造林費用捻出分岐点とは考えにくく、択伐の変化形として理解しています。

 

塩地 : 要は、相場価格で変動する為に、ズバリ価格が見えづらい、伐採・運搬・製材などに掛かる人件費を含めた固定費は、量に応じて固定費比率が大きく変わるので、損益分岐点が発注量で大きく変わる、皆伐なのか、択伐なのかでも変化するので、おおよその目安さえ、金額で示す事が難しいとお考えなのですね。

 

文月 : そうです。ただでさえ、ウッドショックに伴う価格変動が大きく、また、皆伐の場合は再造林費用、択伐ならば植林費用ではなく、手間のかかる伐採・搬出費用と、詳細に原価解析しないと、一概には言い難いという事です。それでなくても、林業は伐採現場の傾斜や作業道の入り方、立木の密度や質、作業員の熟練度、高性能林業機械の償却費や稼働率、中間土場や市場への運送距離など、一つとして同じものが無い多様な世界です。そのコスト構造を詳細に分析できている事業体は少ないのが実情ではないかと思います。

 

塩地 : そのようなブラックボックスの中では、再造林のために、木材価格を引き上げようとしても、多数の支持を得られるとは思えません。また、個人の資産である木材を再生産する為に、利用者である顧客側がその負担を背負うという発想も、自由経済社会に馴染むとは思えません。課題を一度整理します。現状の価格では再造林が難しい 従って木材価格の引上げが必要 ブラックボックスになっているコスト構造を透明化すべき という前提条件を作った後に、森林資源の維持、再造林、択伐の適正量などがテーマに上がってくるという事ですね。

 

文月 : 佐伯広域森林組合さんで見たように、皆伐の場合、伐採と再造林はセットで考えるべきです。不適地を除いて「伐ったら植える」という事です。しかし、相場価格の変動で、森林資源側は再造林費用が捻出出来ない場合もある、またコストがブラックボックスになっていて再造林費用が明確に掴めない場合もあると、単純には行きません。ですから、相場変動はある程度避けられない前提で考えると、収益構造を強化するしかありません。大型パネルを活用して利益を拡大し、収益事業として安定することで、再造林や森林の維持費を自前で賄う体制こそが、必要なのだと思っています。

 

☆まとめ

文月恵理さんのペンネームでの初舞台は、颯爽としていました。すなわち、伐採と再造林はセットで考えるべきなのです。不適地を除いて「伐ったら植える」という事です。しかし、相場変動は、結局、避けられないのです。ですから、収益構造を強化するしかありません。大型パネルを活用して利益力を拡大し、収益事業として安定化して、再造林や森林の維持費を自前で賄う体制を作ることが、何よりも重要なのです。文月さんの師匠、塩地博文さんの指導力も、また、見事でした。

 

[付記]2022年5月10日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(416) 森田俊彦ブログ 南九州の森林再生・山村振興 (その5)「おおすみ100年の森」の本格的な出発に当たって、今、考えること 2022年5月6日

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

今回は森田俊彦さんの[おおすみ100年の森]について、今、考えておられていることの論文です。10数年も前に、建築のオーダーを受けて、その建設に必要な木材のデータを川上の伐採事業者に知らせて、誰がいつ、どれだけ搬出できたかを送り返して貰うシステムを発案されました。その後、森林管理データベースシステムを構築しようとされました。「今こそデータベースシステムだよね」と構成メンバーの皆さんも理解しておられます。今までこのブログのシリーズに登場された皆さんとも同じ方向性です。

単一市町での経験豊富な職員不足と事業費不足の警鐘を鳴らしておられます。

前回、大竹野さんも「森と人との関係」も 時代と共に変わっていくと見抜いておられましたが、地元の次世代の方を巻き込んで、長期にわたり存続するタフな森づくりとメンバーの柔軟で強固なサプライチェーンが構築されていけばと思います。

2022年6月のネット討論には是非参加させていただきたいと思います。

 

酒井秀夫

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