いでよ 女性のSTEM人材 科学・技術・工学・数学 革新の鍵 積極推進すべし今がチャンス

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年3月(№88)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(299) いでよ 女性のSTEM人材 科学・技術・工学・数学 革新の鍵 積極推進すべし今がチャンス 2021年3月23日

 

☆前書き

日本でも「STEM(科学・技術・工学・数学)分野(注1)」で活躍する女性を増やそうとする動きが出ていましたが、今、これを積極的に推進すれば、大きく前進できる絶好のチャンスが巡ってきています。日本経済新聞の2月8日の朝刊が、以下のように書き出していました。

 

☆引用

「STEM(科学・技術・工学・数学)分野(注1)で活躍する女性を増やそうと、理工系の大学や団体などが地道な活動を続けている。イノベーション(注2)の恩恵を社会に偏りなく広げるには、女性の人材育成が不可欠だ。その将来性や魅力を伝えようと、新型コロナウイルス禍でも、オンラインでイベントを開いたり、動画を作成したりと力を入れる。」(参考資料1、2021年2月8日、日本経済新聞から引用)

 

☆解説

東大工学部は従来、オープンキャンバスなど、対面のイベントを通じて、女性研究者の働き方やキャリアプラン(注3)などを紹介してきました。でも、コロナの悪魔の襲来で、対面のイベントは出来なくなりました。そこで、オンラインの開催を開始しました。ここで、今まで手が届いていなかった、関西の高校女子を対象に、イベントを開始したのです。これは東大工学部の現役の研究者や大学院生と、関西の女子高生の交流を深めることを目的とした催しです。

コロナの悪魔の襲来で、日本の社会は多くの面で沈滞しましたが、これが逆に、未来に向けた積極的な動きも、呼び起こしたのです。東大のこの動きは注目です。

でも、天下の東大でも、工学部の女子は、現状は少ないのです。東大工学部の学生は、2020年5月の時点で、2109人いますが、女性は199人で、1割に満たないのです。大学院でも、修士・博士課程の3404人のうち、女性は2割弱の595人です。

一方、世界を見渡しますと米国マサチューセッツ工科大学は、女子学生が4割います。でも、日本の大学は、東大だけでなく、理工系の女性は極端に少ないのです。学校基本調査によりますと、保険や農学も含めた理系の学部生の女性比率は38%です。工学系では16%に止まります。

問題意識は、全国の理工系の大学で共通しています。名古屋工業大学は「女性が拓く工学の未来」と題したサイトで、女子中高生向けに動画を配信しています。同大でも、女性の卒業生が地元の有力企業で働いています。2014年に活動を始めた女子学生の団体は、トヨタ紡績や中部電力などの企業やOGの協力を得て、交流会や会社見学を続けています。

大学だけではありません。一般社団法人Waffle(東京・渋谷)は、女子高生達を対象とした、アプリコンテスト(注4)を実施しています。また、オンラインでのプログラミング講座も提供しています。これは女子高生に、IT技術者も、将来の職業の選択肢に入れて欲しいと考えるからです。

成長分野のIT産業は、慢性的に技術者が不足しています。ですから、女性が活躍する余地は、本当は凄く大きいのです。コロナ禍による自宅勤務の拡大で、今、自宅でシステム開発が可能な企業は増えています。スキルを磨いておけば、出産、育児を経ても働き続けられる環境は整いつつあるのです。でも、周囲にIT志望の同性がいないと、プログラミングに興味を持っていていても、諦めてしまう例が多いでしょう。

中高時代から、理工系志望の女子生徒のコミュニティーづくりを進めることは、女性のSTEM人材育成に、極めて有効だと私は思います。根元からじっくり育てることが重要です。(参考資料1、2021年2月8日、日本経済新聞を参照して記述)

 

☆まとめ

10年前の東日本大震災の際、被災地を訪れた外国人記者達の間で、日本人は、この大震災の中で極めて冷静で我慢強いと、桁外れの評判を取りました。ここで、日本人は凄い民族だという高い評価が、世界にあまねく定着したのです。でも、先日の東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の失言と辞職の際には、世界中から、失笑をかうはめになってしまいました。(参考資料2、注6)

これは世界の知識人から、高い評価を受けた日本人の美質と表裏をなす欠点が、露呈したのです。日本人は、空気を読めます。和の社会を作れます。これは世界に誇れる日本人の美質です。でも、この凄い美質の裏側には、大きな欠点があるのです。空気を読める。皆が動かないから自分も動かない。ですから、変化の速度が著しく速くなった世界において、対応することができず、どんどん遅れていってしまうのです。

そのような状態になると、国境の外の世界の空気には、全く鈍感で、驚くほど空気を読めない感じになるのです。国民一人一人は、かなり、海外の空気を読んでいますが、皆が動かない国内の空気が読めて、誰も動きませんから、海外の人達からは、ひどく鈍感な民族に見えるはずなのです。

でも、一旦、空気が動きだしたら、動きは一転して迅速です。その点、コロナの悪魔の襲来は、この大転換のスイッチを入れる絶好のチャンスなのです。すなわち「STEM女子(注1)」の改革にとっても、今が、大チャンスです。特に「男女平等の一番遅れた先進国」という不名誉なレッテルを、世界中から貼られた今、またとないチャンスのはずなのです。今、どんどん積極的に動けば、ここで著しく急速な革新が起っても、不思議ではないと私は思います。(参考資料1、2021年2月8日、日本経済新聞を参照して記述)

 

森林の樹は自然物であり、形状・性質などが一個一個、個別です。それで、AI・IoT(注5)などの先端技術を使った改革は、困難だと言われています。そのような分野こそ、全く先入感を持たない「STEM女子(注1)」に懸けてみるべきだと私は思います。意識が純白な中高生女子の教育から始めたいのです。科学・技術・工学・数学を駆使して、林業・山村を、中高生女子に考えさせるのです。

 

(注1)STEM:科学・技術・工学・数学の4つの英単語の頭文字を組み合わせた造語。科学(Science)技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学び。

(注2)イノベーション(innovation):これまでにない新しいサービスや製品などを生み出すこと。語源はラテン語のinnovare。イノベーションは、日本語ではよく「技術革新」と訳されるが、本来は技術に限らず広い概念を持つ。モノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新しい価値を生み出し、社会に大きな「革新」「刷新」「変革」をもたらす、それがイノベーションである。

(注3)キャリアプラン:将来の自分の理想像をはっきりと思い描き、その実現に向かって作成する具体的な計画。ここでキャリアは、人が一生を通じて経験するすべてのこと。

(注4)アプリコンテスト:アプリケーションソフトウエア+コンテストの連結語。

アブリケーションソフトウエア: ワープロソフト、計算ソフトなど、実用のためのソフトウエア。コンテスト (contest): 作品の出来や技術、容姿などを競う催し。

(注5)AI:人工智能。IoT:全てのモノをネットでつなぐIoT。

(注6) 参考資料2、「森氏の失言と日本の停滞」。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年2月8日。

(2)日本経済新聞、2021年3月3日。

 

[付記]2021年3月23日。

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