□ 椎野潤ブログ(伊佐研究会第17回) サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2024
2024年10月27日(日)、「サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2024」を開催いたしました。同イベント事務局(一般社団法人ウッドデザイン協会、伊佐ホームズ株式会社)主催で、お施主様、ご関係者をはじめとして約130名の盛大なツアーになりました。後援としては林野庁、秩父市、特別協力は長谷川町子美術館、株式会社フジテレビジョン、株式会社エイケン、NPO法人海さくらの皆様です。また東急株式会社、桜新町商店街振興組合、社会福祉法人進和学園、TIS株式会社、森林パートナーズ株式会社、大野建設株式会社、秩父広域森林組合など多く企業、団体からのご協力をいただき、公益社団法人国土緑化推進機構の助成を頂戴し実施いたしました。
「都市と森林をつなぐ、海と山をむすぶ」というコンセプトのもと、去年に引き続き国民的キャラクターのサザエさん家族と一緒に、都市部の皆さまが森林へ集まりました。このコンセプトは、現代その関係が見えにくい、感じにくくなった、木材消費地である都市と、生産地である森林を豊かに繋げ、樹々と人の生活の循環を感じ強めたいという思いから生まれました。植樹地は、2年前から継続して植樹を行っている秩父市所有の標高700メートルを超える公園跡地です。ここでは世界からも注目される「宮脇メソッド」(注1)による自然の森の再生を目指しております。今年は26種の苗木を495本植樹いたしました。一昨日植樹した苗木が大きく育った樹々、去年植えた苗木が大きく育とうとしている様子などを目の当たりにしながらの植樹でした。伊佐ホームズ単独主催の植樹ツアーから数えると、今年はちょうど10年目です。毎年継続して参加してくださっているお客様は、樹々の成長に感動され、自分たちの繋がった森になっているさまを喜んでおられ、生まれたばかりの赤ちゃんだった子が7歳になり今年も慣れた手つきで苗木を植えている姿は、植樹ツアーを継続しておこなってきた大きな喜びでした。
その後周辺の森の中では、東京農業大学の上原巌教授から森林がひとに与える物質的、精神的、さまざまな恵みについて、飽きることなくお話がありました。そして森林を出てふもとの横瀬町「TATE Lab.(たてラボ)」へ行き、木材加工の実演を見学しました。近年注目を浴びているShopBotという木工用CNCルーターキットを実装しており、デジタル技術を活用した新しい木材活用に触れていただきました。それぞれの行程で日頃の生活では感じられない、生活と植物、木材の関係を実感し、130名のご参加者が笑顔で帰って行かれました。
後援の林野庁からは木材利用課長さまや、秩父市役所からは森づくり課からご参加いただきました。また秩父市長からは駅前で挨拶を頂き、秩父市マスコットキャラクター「ポテくまくん」とサザエさんが触れ合う場面もありました。長谷川町子美術館からは去年に続きスタッフご家族がご参加いただきました。森と海との結びつきの意義から今年はNPO法人海さくらさまからご共感をいただき特別協力として参画いただき、代表をはじめ数名にご参加いただきました。障がい者の方々と丁寧に苗木を育て植樹活動をされている社会福祉法人進和学園さまは、宮脇メソッドを長年実践されている先輩で、苗木のご提供とともに今年はスタッフ側としても指導に当たってくださいました。TIS株式会社さまは自社プログラム(注2)で横瀬町の「たてラボ」と連携している中で、本企画の視察行程のご協力、また木製品加工や撮影協力などお力を頂戴しました。またジョンソン・エンド・ジョンソングループのヤンセンファーマ株式会社さまからも、苗木を育てて植樹するという企画に関心を持っていただき、ご家族を含め十数名のご参加をいただきました。また当社の取り組みに長年共感をいただいている、日本最大の山主企業である王子ホールディングス株式会社さまからは「王子の森」のご担当者さまや、日本の木造建築を牽引する竹中工務店さま、その他ウッドデザイン協会所属の多くの企業さまにもご参加いただきました。そして当社伊佐ホームズのお客様、協力会社大野建設さまのお客様にもご参加いただく貴重な会になりました。
木造の家づくりは山に恩返しをしなければならないという強い思いと、再植林が出来ない林業の衰退を解決させるという覚悟で、伊佐ホームズから森林パートナーズという木材流通プラットフォームの仕組みを作り、さらに木材消費者と共感し、木材と建築、森林と人の生活の循環を共創したいと植樹活動を継続して来ました(秩父フォレストという団体を設立)。その植樹ツアーが10年経ち、この様なかたちに成長しました。
規模はまだ大きく有りませんが、意義は大きく、これからますます共感の輪を広げて、継続して参ります。来年は同じ秩父で第75回全国植樹祭が開催されます。永い日本の歴史で大事にされて来た木と人の関係、森林と人の生活の関係が日本全国で豊かに美しくなることを祈念いたします。
(参考1)研進(進和学園)ブログ http://www.kenshin-c.co.jp/news
(参考2)海さくらブログ http://blog2.umisakura.sub.jp/?eid=2704
(注1)横浜国立大学名誉教授、生態学者の宮脇昭氏が1970代年に生み出した300年の森を30年で育てる、混植・密植による森林再生のための植樹方式。
(注2)TIS株式会社は地域の森林資源の循環利用を活性化するプログラム「WOOD DREAM DECK」を推進している。
https://www.tis.co.jp/news/2023/tis_news/20230525_1.html
☆まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二
私も植樹祭に参加して参りました。その際には、たいへんお世話になりました。
10年間、植樹ツアーを続けてこられている伊佐ホームズさん、そして森林パートナーズさんに敬意を表します。まずは、参加者の数にビックリ。また、参加者にはリピーターも多く、この植樹祭が参加者にも喜ばれていることを強く感じました。去年植えた場所、一昨年植えた場所が隣り合わせだったので、リピーターの皆さんはその成長を目の当たりにすることができます。参加者の表示はありますが、どの木を誰が植えたという表示はないことが、植えた木々全てを慈しむ気持ちを持つことにつながっていると思います。一度限りの植樹では、植えた木の成長を見届けることができないので木や森への親しみは育ちません。毎年ではなくても、5年後、10年後、20年後と植えた木々を見続けられる機会を作ることはたいへん重要だと思います。家づくりも10年保証、20年保証、最近は50年、60年保証にまでなって、あとの面倒見が必要になってきていますが、木も森も同じなのです。
今は、なかなか都市住民の方100人以上が訪れて植えられる場所を見つけるのがたいへんで、同じ場所で植樹祭を続けることは難しいと思いますが、過去に植えた場所も大事にして、成長を見届けていく植樹祭にしていただければ長続きするイベントになるものと思います。宮脇メソッドでは、密植の為、草刈りなどの保育の活動をしないで良い場合が多いので、育樹祭というわけにはいかないのですが、ぜひ、成長を見届ける機会を工夫してください。家づくりの顧客の関心を日本の森林や林業に寄せていく力にもなると思います。
顔の見える木材での家づくりというローカルサプライチェーン構築の補助事業を林野庁は続けておりますが、もともとは、このようなローカルサプライチェーンの構築の運動論は、20年以上前に始まった「近くの山の木で家をつくる運動」に端を発しています。大黒柱になる木を施主が山で選んで伐る、伐った後には施主も参加して木を植えるとった活動を行いながら森林と家を近づけてきました。この運動が定着したとは言えませんが、国土交通省の「地域型住宅ブランド化事業」や「地域型住宅グリーン化事業」にも支えられて、顔の見える木材での家づくりは着実にそのグループ数、供給戸数を増やしてきました。2022年度には584グループ、2.6万戸を超えるまで増えました。大手やパワービルダーといった住宅メーカーばかりが目立つように思われていますが、調査を始めた2001年度は120グループ、0.5万戸に満たなかったので5倍増です。このようなサプライチェーンは3年前のウッドショックの際にその強みを発揮し、ウッドショック前の2020年度に比べて2年間で供給戸数は0.6万戸増えています。その強みを更に活かしていきましょう。