「酒井秀夫ブロク」3月ブログ(その3) サプライチェーンへの期待

☆巻頭の一言

酒井秀夫先生は、このブログシリーズの最後に「サプライチェーンへの期待」を取り上

げて下さいました。でも、サプライチェーンマネジメントを、具体的に実施して行きますと、なかなか難しいのです。次々と難関に突き当たります。でも、一つ一つの問題を、熱意を持って対応していけば、道は、次第に開けてきます。希望の種は限りなく拡がって行くのです。酒井先生は、この種を熱意を持って掘り下げ、丁寧に整理してくださいました。

 

林業再生・山村振興への一言(再出発)

 

2022年3月 (№194)

 

□椎野潤(新)ブログ(405) 「酒井秀夫ブロク」3月ブログ(その3)サプライチェーンへの期待 2022年3月29日

 

☆前書き

今日のブログは「酒井秀夫ブログ」2022年3月ブログ(その3)「サプライチェーンへの期待」です。ここで酒井先生は、林業サプライチェーンの抱えている課題と解決策を丁寧に整理して示してくださっています。

 

☆本文

[サプライチェーンへの期待]

日本でもサプライチェーンという言葉が日常使われるようになってきて、このブログでもサプライチェーンが何度も取り上げられて、斬新なチャレンジが述べられています。林業でサプライチェーンが話題になってきたのは、ヨーロッパにおいて2000年ころからです。それまで林業のコストダウンというと伐採搬出の機械化が主なテーマでした。しかし、機械化だけでは行き詰まり、産業全体のコストダウンの方策として興味の対象が一気にサプライチェーンに集まりました。現在サプライチェーンの研究がさかんなのは、カナダ、スウェーデンなどですが、木材は川上から川中、川下へ価値をつけながら流れていきますので、バリューチェーンとも呼ばれています。しかし、サプライチェーンがいろいろな利害関係者が関わっている経済活動であることから、サプライチェーンの最適利益配分はまだ解決されていません。最終消費者からのお金は川下から川上へとのぼっていきますが、利益がどこにどれだけ消えていくのか。サプライチェーンの流れを強くするためには、透明化、見える化が必要です。この信頼関係が最大のコストダウンになります。サプライチェーンの一部関係者に犠牲を強いているとサプライチェーンは成り立たなくなりますが、現状ではどうしても川下側が有利になっており、最上流すなわち山元に最後のしわが寄って取り分が少なくなっています。山元の取り分が少なくなると、源泉が枯渇することになり、川の流れが干上がってしまいます。

サプライチェーンのパーツを揃えても情報という電流をどう流し、栄養となる利益をすみずみまで行きわたらせるにはどうしたらよいか。最適化に向けて流れのバルブの開け閉めを誰がするのか。そこでサプライチェーンを動かすにはコーディネーターが必要ですが、まずは関係者がプラットフォームをつくって集まることからはじまります。

そして、サプライチェーンがお題目で終わらせないようにするにはどうしたらよいか。伊佐さんと小柳さんの対談で、伊佐さんが指摘された安定需要は非常に重要だと思います。間伐補助金が出て、山から大量に間伐材が供給されると、市場の価格は下落したり、直送の受け入れストップとなります。一方で、材が足りなくなれば、運賃を足して遠くからでも集めようとします。市場の動向に翻弄されながら、塩地さんに言わせればノイズの多い情報をベテランの勘に頼ってきたのが今までの木材の供給側の姿ではなかったでしょうか。山元に補助金が出ても買取り価格が安くなれば、結局買い取った人の調達に補助金が回ってしまい、山には残りません。補助金を出さないほうが山元立木価格が高くなるのではという人もいます。いずれにしても山元にお金が残る安定需要を維持し、そのためのサプライチェーンのバッファやストックヤードを活かし、価格を安定させることができれば、山側では雇用や機械の投資ができます。大型木造建築物のプロジェクトがあれば、椎野先生のおっしゃるように、数年前にアナウンスして、必要な木材をなるべく地元で集めていけば、設計士も自由な設計ができます。

山元立木価格が上がらないのは、乾燥などのコストやラミナの普及による歩留まりの低下が原木購入価格に上乗せされているからだと思いますが、山側の安定供給のためにも、製材品にこれらの製造コストを反映させたり、製材工場の生産効率を上げたりすることができればよいですが、大谷さんの山元で高く買い取るサプライチェーンができれば、山元立木価格は上昇し、流れが一気に変わるのではないかと思います。

 

☆まとめ

酒井先生は、このブログの連作の最後として、サプライチェーンを取り上げて下さいました。林業でも、最近「サプライチェーン」と言う声を良く聞くようになったのです。でも、ここでまた、お題目に終わらないようにしなければなりません。今、このときが、一番大事なのです。この大事なときに酒井先生は、森林・林業の大権威として、豊富な経験をもとに、サプライチェーンに関する課題と解決策を、丁寧に整理してくださいました。

そして「大谷さんの山元で高く買い取るサプライチェーンができれば、山元立木価格は上昇し、流れが一気に変わるのではないかと思います」と書いて下さいました。

この酒井先生の論文を「鏡」として、椎野ブログの仲間たちが連携して、この森林・林業をめぐる空気を、今ただちに一変させねばなりません。どうか、みなさま、頑張ってください。

 

[付記]2022年3月29日。

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