「酒井秀夫ブロク」3月ブログ(その2) 森林は知的ビジネス

林業再生・山村振興への一言(再出発)

 

2022年3月 (№193)

 

□椎野潤(新)ブログ(404) 「酒井秀夫ブロク」3月ブログ(その2)森林は知的ビジネス 2022年3月25日

 

☆前書き

今日のブログは「酒井秀夫ブログ」2022年3月ブログ(その2)「林業は知的ビジネス」です。ここでは、酒井先生の森林に対する深い尊敬の念と、森林に対する暖かい愛情が語られています。

 

☆本文

[森林は知的ビジネス]

林業は本来知的ビジネスです。自然が相手ですので、自然に対する知識や観察力が求められます。先人はその努力をしてきました。

しかし、林業の現場では非科学的な現実がまかりとおっていることがあります。例えば、木質バイオマス発電所がチップを重量で買う場合があります。エネルギー源として発電所が欲しいのは燃料となる炭素です。炭素の塊が石炭や木炭ですが、木炭にするには人手とコストがかかります。木質燃料の場合、チップやペレットを買うことになりますが、水を含んだ生重量では、水の分安く買われます。発電所の敷地内で乾燥させれば、その手間賃は発電所の従業員に支払われ、バリューは発電所に生まれます。山で乾かせばバリューは山で生まれ、その分高く買ってもらえるはずなのですが、重量が軽いからということで安く買われることがあります。炭素の含有量で価値を決めるべきなのに、これでは長続きしません。石油を使って水を運ばないためにも、なるべく山元で乾燥させるべきです。

今のFIT制度(注1)では間伐等由来の木質バイオマスが高く売れます。間伐のインセンティブになりますが、一方で、都市で立派に役目を果たした古材も炭素を多く含んでいることに変わりはありません。本来は、循環資源で再生可能な木材のエネルギー含有量を評価すべきですが、このエネルギー含有量の価値は化石燃料との比較になります。将来、風力や太陽光のエネルギーがもっと安くなれば、木質燃料の価値が下がるかもしれません。しかし、そうなったからと言って、二酸化炭素を吸収する森林が不要になるということではありません。

森林には計り知れない効用があります。森林を維持していくために、補助金が必要な場合があります。しかし、ややもすると補助金が現場のコストを不明確にしたり、原価意識を麻痺させたりしています。補助金で成り立つ産業は、産業としての社会的意義はあるかもしれませんが、高収入が見込めないとなると若い人は入ってこないと思います。農家に手厚い補助をして、大量生産した農作物を輸出している国もありますが、補助金で成り立っている産業の生産物を輸出することには海外から異議が出る可能性があります。

補助金が不要であると言っているわけではありませんが、メリハリのある使い道にして、林業事業体自身、補助金に頼らない体質にしていく必要があります。国家予算の約1/4が国債でまかなわれていますが、外貨を稼いで、長年いただいてきた補助金を返して、国民に報いていかなければならないと思います。

 

☆まとめ

酒井先生から、林業の根源的な特徴を的確についた言葉をいただきました。「林業は知的ビジネス」だと言う言葉です。凄く素敵な言葉です。ここで、その言葉について確認させていただきました。「林業は知的ビジネス」の「知的」とは何か、直感的に短い語で、お示し下さい。お願いします。お答えは以下でした。

「森林には一木一草、石ころに至るまで無駄なものは何ひとつありません。森林は宇宙です。そして、偉大な沈黙を保っています。その姿は美しく、林業をしていく上でその調和を崩さないためには、科学に則った扱いと森林と対話していく日々の研鑚が求められます。森林を経営管理していくためには、工学的技術や、社会、経済も熟知していなければなりません。森林に接していると、毎回発見のよろこびがあり、そのレベルは人によって様々であり、森林に育てられているようです。」

 

また、酒井秀夫先生は、本来知的ビジネスである林業の現場では、非科学的なことが、まかり通っていると鋭く指摘されています。

発電所の燃料チップで発電に必要とするのは、含有している炭素です。ですから、本来その価格は、炭素の含有量で決めるべきです。また、石油を使って水を運ばないため、チップは山元で乾燥させるべきだと指摘されています。

現在、森林を維持していくため、やむを得ず補助金に頼っています。でも、林業事業体自身は、補助金に頼らない体質にしていかねばならないと、厳しく指摘されています。

 

森林には、計り知れない効用があります。先生は、知的ビジネスである森林の魅力を増強し、育てていくために、「日々の観察と科学的思考、目の前の森林の過去から未来までの時間的、空間的姿の想像力」が重要であると指摘されています。酒井先生は、日本の森林を、一層魅力ある知的ビジネスに育て、後世に遺していくために、貴重な提言を示してくださいました。

 

(注1)FIT制度(Feed-in Tariff)=固定価格買い取り制度:エネルギーの買い取り価格を法律で定める方式の助成制度。地球温暖化への対策やエネルギー源の確保、環境汚染への対処などの一環として、主に再生可能エネルギーの普及拡大と価格低減の目的で用いられる。

 

[付記]2022年3月25日。

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