事業継承で突然 社長に 夫や父から妻や娘へバトンタッチ 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年3月(№90)

□ 椎野潤(続)ブログ(301) 事業継承で突然 社長に 夫や父から妻や娘へバトンタッチ  2021年3月30日

 

☆前書き

次世代に向けて、新しい発想で新世界を拓く、女性経営者を見かけるようになってきました。特に、夫や父の事業を継承する妻や娘の社長就任が目立ちます。今日は、これを取り上げます。日本経済新聞の2月22日の朝刊は、以下のように書いています。

 

☆引用

「日本の女性社長比率は8%。半分以上は夫や父など身内から事業を引き継いでいる。想定外で社長になる例が多いのが特徴だ。身内に相談できる人が少ないなか、女性社長同士で情報交換や相談し合えるコミュニティーづくりが広がっている。」(参考資料1から引用)

 

☆解説

リフォーム会社、キャッチアンドリビング(千葉市)を率いる小泉裕美さんのケースは、ここでのテーマにぴったりの実例です。小泉さんが社長に就任したのは3年前です。それは創業社長である夫が亡くなる20日前のことでした。小泉さんの生活は、2人の子の育児とパート中心の生活でしたが、4年の闘病の間に、事務や経理を手伝うようになっていました。でも、社長を継ぐことになるとは、考えていなかったのです。

夫は復帰を目指して治療に挑んでいましたし、家族や社員も元気になると信じていたからです。しかし、最後の入院の前に、夫婦で社員と相談して、交代を決めました。そのとき会社は、長期案件を複数抱え、1日も現場作業を止められない状況だったからです。

社長業は決断の連続でした。思いがけない出来事に遭遇し悩みました。迷い苦しんだ経験を、同じ境遇の女性と共有したいと考え、事業継承した女性社長のためのサイト「女性社長のココトモひろば」に登録しました。一年前に立ち上がったココトモひろばでは、不安なことを調べ、相談できるのです。相談には、ベテランの女性社長が答えてくれます。現在、49人の女性社長が登録し、毎月、5500人が閲覧しています。

昭和女子大学は、2018年、「女性事業継承者育成プログラム『跡取り娘』人材育成コース」を始めました。社長を継ぐ予定の女性達は、半年で、組織マネジメントやファミリービジネスの心得を学びます。(参考資料1、日本経済新聞、2021年2月22日朝刊、中村奈都子を参照して記述)

 

☆まとめ

女性社長の多くは同族継承です。でも、その流れは近年、変わってきているように思います。帝国データーバンクによりますと、直近の1年間に限って見れば、女性社長では創業社長が63%を占め、2020年の41%の1.5倍に達しているからです。

世界の次世代へ向けた進化が、急速に早まっている中で、新しい発想での新規事業創出者の活動が、社会にとり産業にとって、きわめて重要になってきています。私は、ここへきて、女性の活躍が鍵を握っていると考えて、3月のブログでは、女性の経営での活躍を中心に書いてきましたが、それが、実績数字でも現れていたのです。

次世代に向けて、新しい発想で新世界を拓く、女性経営者が、続々と登場してくることを、私は熱望しています。

 

しかし、一方で既存企業の継続・死守も重要です。中小企業庁によりますと、後継者不足などにより、休廃業する企業の61%は黒字なのです。この黒字企業の倒産は、なんとしても防がねばなりません。

それには、企業の同族継承が、とても重要なのです。帝国データバンクによりますと、2020年4月末時点で社長の女性比率は8%と2010年に比べて1.2ポイント上昇しました。そのうち、同族継承は51%で、男性社長の39%に比べて、かなり多いのです。これからも続発すると思われる、中小企業の黒字倒産を防いでいくためには、妻や娘へのスムーズな事業継承が、きわめて重要だと思われます。この支援も、真剣に考えていかねばなりません。(参考資料1、日本経済新聞、2021年2月22日朝刊、中村奈都子を参照して記述)

 

なお、林業・山村分野の中小企業で、社長の妻・娘への事業継承を考えてみますと、このブログで取り上げた小泉裕美さんが継承した、夫の会社は、建設業のリフォーム分野でした。これは林業・山村分野と事業の業態が類似しています。ですから、これを参考にして実行するのは、比較的容易だと思います。

さらに、最近書いた一連のブログを回顧して書きますと、林業・山村分野で、未来の大改革を目指して、子供たちに事業を継承したいと考えている積極的な社長は、男の子ではなく娘に、3月6日のブログ(参考資料2、注1)に書いたSTEM女子を目指させ、AI(注2)、IoT(注3)などの先端ITの専門教育を受けさせ、しかるべきタイミングで、突然、想定外の事業継承をするのが、とても、面白いでしょう。これにより「瓢箪から駒が出る」可能性は大いにあります。

 

(注1)STEM:科学・技術・工学・数学の4つの英単語の頭文字を組み合わせた造語。科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学び。

(注2)AI・I0T:AI(artificial intelligence)=人工知能:「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。

(注3)IoT(Internet of Things):モノのインターネット:あらゆる「モノ」がインターネットで接続され、情報交換により相互に制御する仕組み

 

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年2月22日。

(2)椎野潤(続)ブログ(297) いでよ 女性のSTEM人材 科学・技術・工学・数学 革新の鍵 積極推進すべし今がチャンス 2021年3月23日

 

[付記]2021年3月30日。

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