地域における森林・林業のポテンシャルについて

椎野潤ブログ(大隅研究会第13回) 地域における森林・林業のポテンシャルについて

 

私は、大隅森林組合の代表理事組合長の下清水久男と申します。よろしくお願いいたします。私は、東京の大学で農業を学び、地元の鹿屋市役所に就職し36年間、農政一筋で業務に携わってきました。退職後、現在の大隅森林組合の役員に就任しました。

当組合は、平成23年に3つの組合が合併し、現在に至っております。組合員は、12,000人となっていますが、高齢者が多数を占めており、林業で生計を立てている組合員は殆どいません。ただ、小規模ながら面積は大きく、組合員の山の整備・保全に努めております。

この地域は、農林水産業が基幹産業であります。私は、代表理事になって直ぐ、3つの協同組合(JA・漁協)による協同組合協議会を立ち上げました。この農・林・水産はそれぞれに関連性があり、別々では大きく前進、発展はあり得ないと考えたからです。行政経験から言える言葉でもあります。

農業と水産業は食を持っています。林業も林産物がありますがインパクトに欠けます。しかしこの農と水産を助け、源は林業であることを確信しています。山から生み出される「美しい空気と美しい水」がこの2つをいかしていることは、過言ではないと思っています。だからこそ山を大事にする事が全てに恩恵を受けております。林業の必要性を伝える為、3組による組合としてもイベント・研修会等連携をとりながら、実施しております。

また、この地域でも、戦後植栽したスギ・ヒノキが利用期に入っており、主伐が盛んに行われております。「伐ったら利用し植える」森林資源の循環利用、つまり再造林に取り組んでおります。ただ、国の政策になっている2050年カーボンニュートラルの為には、伐ることだけが良いのか、山を育む事による山の多面的機能が果たして生かせるか、疑問を持っております。利益追求だけの世界で良いのか? つまり、生産面と環境面、平衡の取り組みが大事ではないかと思います。国が最後のチャンスとして、令和元年度から借入金や基金等を財源として前倒しで始まった森林環境譲与税の財源が、来年度より国民から千円ずつ徴収する森林環境税となります。現在の譲与基準で果たして、地方の山を完全なる整備・保全が出来るのかを検討する事も大事ではないかと思います。この制度が確実に活用されていない状況にあります。川上~川下への活用方法もお互い勉強していく必要があります。とにかく山は大事な物を沢山生み出す源であると考えます。この事を大事にして欲しいと思います。

 

まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫

アフリカ大陸で生まれ、ヒマラヤ山脈で分流したモンスーンが、「深々しい」日本列島でキャッチされ、恵みの雨となって多様な森林と土壌を育み、養分を含んだ河川や伏流水が水田に流れて世界屈指の稲を育て、さらには海藻や魚介などの豊かな水産資源に資してきました。日本列島は地球上の奇跡の島です。ところが、近年は地球の大気や海流の流れが不安定になり、気候も凶暴になってきました。ますます森林の二酸化炭素吸収能力と公益的機能の維持と発揮が求められています。

大隅森林組合の代表理事組合長を務められる下清水久男さんは、行政経験から、農・林・水産の3つのスクラムの重要性を認識され、協同組合協議会を立ち上げられました。EUもアメリカ合衆国も、基本的には農業国だと思います。国の基礎体力にとって、第1次産業がしっかりして、食料やエネルギーの自給率を上げ、地域が栄えていくことが必要です。農・林・水産が一体となって森林環境譲与税制度の活用方法が、日本を立ち上げていく上で極めて重要になっていくと思います。

高齢者が多数を占め、12,000人おられる森林組合員をどう束ねていくかは容易なことではないと思いますが、これら森林組合員の信頼をバックに、農や水産を巻き込んだ地域の改革を進めていただければと思います。

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