□ 椎野潤ブログ(塩地研究会第13回) 山仕事を夢みて流れついた先は島根県の離島だった(その3)
文責:藤本 淳
意識改革。その為の徹底的な現状把握・情報発信が必要と考えます。
地域課題について生活環境を考えた時に優先順位をつけたとしたら『森林環境』とは果たして何番目に上がってくるのでしょうか。居住地が都市部の人と中山間地に住む人ではその順位に大きな差が生まれそうです。でもその差を生んでいる原因は単に情報が足りていないからなのではないでしょうか。
防災(水害)の視点から考えたとき、河川を中心とした流域で検討する必要があると教えられました。大都市圏は主要河川の河口域に広がっているので当然です。都市部で降っていないからと油断していると川の上流で降った雨が勢いを増して下流の生活圏を飲み込んでしまう事は想像に難くないでしょう。であるならば如何にして上流部でその勢いを削ぐのか。ここでの森林の役割は非常に重要です。
と、ここまでは近年の異常気象、それに応じて繰り返される毎年の報道で多くの人が意識してきている事だと思います。ならば実際にその現場で災害を防ぐような有効な手がうたれているのかというとどうでしょうか。この辺りから個人によって情報量の違いが顕著に出てきそうです。そもそも防災関連なので行政の計画によるところが多い訳ですが都道府県の林政部には必ず治山事業を管轄している部署があり、毎年主に保安林に対して森林整備を行っています。離島地域においても規模は小さいながらも整備されていますし、危険な谷筋には治山・砂防ダムが建設されています。都市部の人にとってはなかなか実感できる事ではないでしょうが、災害を拡大させないよう防ぐ事が重要です。起きてからでは遅い。都市部住民に限った事ではありませんが自分の生活している地域の課題として少し広い視野でみてもらえれば今の時代ちゃんと情報は得られます。そして中山間地で生活している人はできるだけ分かり易く現場の課題を伝える事が必要だと思います。
自分の働く隠岐島前森林復興公社では島前地域3町村にまたがった森林の管理をしています。とはいっても地域全体の森林面積約8600haに対する人工林面積約1800haそのうちの復興公社管理地は約500haです。地域全体からすると2割に満たない面積です。残りの森林の一部は治山事業で整備されつつもその多くは自然の成り行きに任されている状態です。特に注意したいのは人工林であるにも関わらず継続管理されていない森林です。防災の観点からは大雨で崩れやすい条件になり、また地域の貴重な資源と捉えればこれを活かす手段を考えなければなりません。
しかし、ただでさえ人手不足な状況に加え産業とは呼べないような森林整備に意識が向く人が果たしてどれだけいるのでしょうか。
現状いないならば創るしかありません。まずは地域の森林を知ってもらうこと。果たしてどう伝えればいいか、ただ単に数字で表しても結局はデータとして納得して終わるだけなのではないか。一番は実際に山を歩いて感じてもらうのがいいように思うのですが実際は山を歩く道もない状況。現状を伝えるべく情報発信をするにしても簡単にはいきませんね。できることから始めていこうと思います。
その先の木材の島内利用や森林サービス産業に繋がる動きを見据えて。
☆まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二
しっかりと問題となっていることを考えておられて、頼もしい限りです。森林整備に人々の意識が向いてもらえないという呆れや苛立ちから、立ち上がり自ら発信者になることを決意されたことに応援の言葉を贈ります。フレー!フレー!
国民参加の森づくりという活動が40年ほど続けられてきました。植えることは面白いし、苗木も用意されて、植える穴も一度掘って植えやすくしているような植樹イベントは家族で比較的参加しやすいので、国民の皆さんに参加いただきやすく、今も毎年たくさんの取組が行われています。木を植えた記憶がその後の森の成長や木を使うことに関心を持つとっかかりになればと思うのですが、事はそう簡単ではありません。植えたあとは木が勝手に成長できるわけではなく、たいへんな手入れの結果大きくなっていくことをわかってもらうためには、そんな体験もしてもらわなければなりません。応援団になってもらうということでしょうか。それを広げていくことで、例えば、20年くらいかけて間伐の必要性をおおかたの方にわかってもらえるようになりました。ようやく、次は大きくなった木や森はどうしていったらよいのだろうという課題に直面しています。まったく気の長い話ですが、ぜひ取組を諦めずに続けてください。
しかし、情報発信といっても、受け取る人は自分の欲しい情報、自分の考えに合った情報を収集するので、あなたが発信したいことだけを発信するのでは、情報の波は広がりません。広くたくさんの方向けのような地域情報、観光情報、趣味情報のようなところに、森林の現状や森林が役割を果たしてきた歴史などの情報を盛り込んでもらうようなことも必要ではないかと思います。多くの人々が関心を持つ事柄から伝手を広げていくことも考えてみられてはいかがでしょう。