地域材を活かす木造住宅

椎野潤ブログ(大隅研究会第11回) 地域材を活かす木造住宅

 

黒松正大

おおすみ100年の森の黒松です。

㈱黒松製材建設を営んでおります。会社名で分かるように、製材から一般木造住宅の建設を請け負っております。建設業務で一般ユーザーのお客様と住宅の打ち合わせをしていて少し驚いたことがありました。当社は創業が製材所ということもあって、杉フローリング、杉壁板等をなるべくおすすめするのですが、お客様が「あまりたくさん木材を使うと森林破壊につながるのではないか」と?木造建築が自然環境に悪いのではないかとのご質問を受けてビックリすることがあります。改めてユーザー様に、森林の循環利用、co2固定量の話とかをさせて頂くと「安心しました、木は好きなのですが多用することに少し後ろめたさがありました」と言われ、あらためて木育の大切さを感じました。2000万円ぐらいの木造住宅で木材代はどれくらいの割合だと思いますか?と尋ねると「500~600万円ぐらい?」との答えがほぼ返ってきます。木材を多用する家でせいぜい1割ぐらいの200万円ほどですよとお話すると、ビックリされていました。

二十数年前の見積書を引っ張り出して眺めてみると、キャクロ、長押等、今となっては懐かしい言葉が出てきます。木材代も全体の約2割強を占めていました。昔の話をすると笑われるかもしれませんが、床間、次間と真壁の和室があり、床柱、化粧柱、天井板、キャクロ、長押、鴨居、廻り縁、欄間、障子等たくさんの高級木材が使用されていました。当然、丸太の価格も高くm3あたり10数万円することも珍しいことではありませんでした。

二十数年でずいぶん銘木等木材の利用が減ったものです。地域の木材屋の経営が立ち行かないわけです。長らく現場監督、職人さん不足が言われていますが、その問題を解決するために、大手のFCに入会される工務店も増えていると耳にします。大手メーカーさんの建物は熟練職人も必要としないので経営手段としてはなるほどと考えられるのですが、木材に携わる者としては益々地域の木材利用、経済の縮小そしてますますの熟練職人の減少が懸念されます。

地域の木材を活用して、風土や現代社会の生活環境とマッチした建築を山の循環利用と人の暮らしが、調和するためにもより多くの人々に木育等の啓発活動を広めていきたいものだと思います。

 

まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫

地域の木材を活用して、風土や現代社会の生活環境とマッチした建築が山の循環利用と調和するためには、多くの人々に木育等の啓発活動を広めて、熟練職人が腕を発揮し、地域の経済を支えていけるようにしなければとの内容です。

木材が森林破壊につながるという学生が、建築学科でさえ今でもたまにおられるようです。森林・林業白書で木造住宅1棟が消費する木材は23m3と紹介されたことがあり、それは自家用車が排出するCO2の7年分の炭素貯蔵量でもあるとうろ覚えしています。広葉樹のフローリングもよいですが、究極のフローリングはスギという方もおられます。スギの柔らかさが膝だけでなく頭部にもよいようです。

銘木の値付けは理論があるわけでもなく、流行や景気にも左右されてむずかしいですが、銘木も供給を絶やさないようにしないと市場から忘れられてしまいます。銘木は施主さんにとっては、自分へのご褒美だと聞いたことがあります。だからこそそれなりの価格なのでしょうが、住宅の一部分だけでもこだわりを持った材料を使えば、長い間、住宅に癒やされるのではないでしょうか。落語の「牛ほめ」を聴いて、国民誰しもが情景を理解して笑えるようにしたいです。

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