再造林の重要性詳述

椎野潤ブログ(大隅研究会第八回) 「再造林の重要性詳述」

 

おおすみ百年の森 理事 有馬 宏美

活動を共にする森田氏から次号のブログを依頼され、私が勤務する製材・集成材工場の立ち位置から、現状と今後の木造建築に関することでもとご指名を頂いたところですが、前回の亀甲氏のブログを読んで私も一言、再造林について触れて書くことにしました。

おおすみ百年の森の活動に参画した一つの理由でもありますが、本土最南端に位置する大隅半島は、温暖で降水量も多い地域で、杉の生育に適した気候の中、戦後営々と先輩方が山々の頂上まで植林された結果、今では山々は10齢級を超える森林が多くなってきました。最近では亀甲氏が述べたように鹿児島県内、特に大隅半島では皆伐作業が進み、至るところで緑が消える状況になっています。一例として、弊社に来訪する他県の方が鹿児島空港に降り立ち、高速道路を車で走らせて鹿屋市まで来る間に皆伐作業が終わった現場を数多く見かけるため、伐採された山についていろんなコメントを頂くことがあります。

これは、各地に大型製材工場の出現とウッドショックを背景とした製材用或いは輸出用・バイオマス用原木の生産量拡大に応えるために、地元の素材生産業者だけでなく、生産性の高い県外業者の参入によって生じたものだと思います。私も製材業の一員でありますので責任の一端はあると自覚はしていますが、現状のような秩序なき伐採はいかがなものかと問う気持ちが正直強くなっています。

当該地域の森林組合参事さんによると、地域の民有林の中で事業の対象となる山林は約3割しかないと発言されています。管理されている民有林以外の山は、所有者が解らない・境界が解らない等いわゆる放置林に近い状態ではないかと疑うしかありません。であれば、伐採された森林の2倍以上の面積を想像すると目にする山で伐採可能な森林はどれだけ残されているのだろうかと考えると大変将来が不安です。

先日近くの大型製材工場の社長さんと雑談した際の言として「宮崎県・鹿児島県の伐採できる製材用原木はもう10数年分しか残されていないのでは」と危機感を強く持っておられたが、私も全く同意見であります。

この問題解決のためには再造林課題と同様、森林経営管理制度の推進は待ったなしの課題と考えております。

もう一つ、最近の林業話題でよく耳にすることの中で、「森林の高齢化」により森林による二酸化炭素吸収量が減少し、森林のもつ温暖化防止機能が十分に発揮されないという強い表現に多少違和感があります。確かに若齢級の樹木は成長盛んにあり、二酸化炭素吸収量も高いことに異論はないのですが、現在多くの森林が10齢級前後と成熟し、植林木が高齢化して最終伐期に到達してしまったと勘違いされてしまうのではないでしょうか。

そう考える理由として、

①スギ材を無垢の構造材として、構造用集成材用ラミナとして活用することを考えると戦後70数年経過して林齢とともに強度も増すことで何とか許容できるまでに成熟し、これまで外材が多く用いられていた桁・梁など構造材の選択肢のひとつとして製品化され、供給量も少しずつ増大しています。まだまだ材質向上を図る為にも100年生、120年生へと主伐期が設定できる森林も条件によってはあるのではないでしょうか。ベイマツ強度と同等とは言いませんが、出来ればスギ材は強度が低いというイメージは払拭したいものです。強度というワ-ドで言えば、弊社が30数年前にスギの構造用集成材ラミナを調達する際の製材した40年生では適材の出現率がかなり低かったことをよく覚えております。

②一部のスギ適地では皆伐時期を120年生と仮に設定すれば、それまでの技術指針を変更し、森林所有者の長伐期による経営方針に基づいた密度管理に行うことで、60年、70年生で頭打ちとなる幹材積も上昇傾向を維持できると考えられるのでと思うところです。このことは二酸化炭素吸収量の頭打ちを解消し、長期の固定量の増大にも寄与することと思います。

③再造林率50%超え、昨年鹿児島県も皆伐が進む中、関係業界の皆さんの努力により再造林率を上げる成果を出しています。関係者の努力には敬意しかありませんが、林業従事者の高齢化・後継者不足・苗木生産者の不足と多くの課題がある中、再造林地の対象として急激な伐採跡地の増大は到底対応し得ないと推察されることから、主伐としての皆伐施業ではなく、立地条件によっては長伐期施業として択伐・間伐を選択しながら成長量を維持し、一方で造林面積と皆伐面積のバランスを取りながら、皆伐後天然更新という方法を安易に選択することなく、再生するために人の手を入れることを放棄しないように誘導すべきではないかと考えるところです。

いずれにしても、森林は木材等の生産以外にも、山地災害の防止、自然環境の保全等多面的な機能を持っており、それに対応する山の利用形態も多種多様であります。このことを前提に戦後の混乱期からの植林に始まり、下草払い、枝打ち、除伐・間伐、そして主伐期と今に至るまで莫大な労働力と資金を使って、それぞれ地域の森林・林業がようやく一巡しょうとしている現在において再検討すべきことは、それぞれ地域の森林について、立地条件や森林の現況、施業方法、加工利用状況など林業・林産業の技術的側面と森林の持つ多種多様な機能の中から地域のニーズに沿った機能を高める施業を主体的に選択し、実施していくことが必要ではないかと考えるところです。そのためには山側の人間だけでなく、川中・川下の関係者を含め居住する地域の人たちと連携しつつ共有することが極めて大切なことと考えております。そしてこれまで以上に産官学の一体的な活動の重要な時はないように感じられてなりません。

 

まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二

私も悩んでいる問題です。今もどうするのが良いか考えています。

とりあえずの私の踏ん切りは、このままの間伐主体の木材生産では、山村の衰退を抑えることができない、という見通しでした。伐る木がなくやむを得なかったとはいえ、40年間、間伐主体の木材生産の方針の下で、山村はどんどん疲弊し、林業の従事者は減る一方でした。早晩山村は消滅すると考えました。

再造林できない理由が伐採所得の不足にある、と言われていますが、それ以上に、森林所有者にとって、後継者がいないのにもう一回植えて誰が面倒みるのかという状況が変わらなければ、できる再造林もされないと考えました。その解決のために、自分としては、将来とも森林経営を続ける能力のある人に、まだ立っている森林を預けて(預け方は色々な形がありますが…)、代わりにやってもらうという考え方を選択をしました。預ける話は20年来考えてきたことでした。

預かった人が皆伐再造林を目指すのか、間伐繰り返しで施業をするのかは森林所有者の意向に沿い、森林所有者に意向がなければ、預かった人が木材の需要や売り先を踏まえて、全体として毎年の収入を得続ける持続的な経営ができるように方針を決めて行うのです。森林組合がやってくれれば良いのですが、経営センスのない所はやってくれません。近隣の森林所有者に面倒を見てもらうのは隣人ほど仲が悪いことが障害でした。今では、社会的責任を負う者として製材所が引き受けることさえ良いと思っています。製材所ならば、再造林をしないなど持続性のない酷い施業を行った時には社会的制裁もできそうだと考えているからです。

大隅地域にふさわしい預け先、持続的な経営や施業の仕方があると思います。書かれているような方針を実現できるやり方を、ぜひ、話し合って進めてください。

 

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