情報共有による地域発展を目指して

椎野潤ブログ(伊佐研究会)  情報共有による地域発展を目指して

 

2022年9月29日の日本経済新聞(参考資料1)に「城崎温泉復活へ 宿泊データ共有」という記事がありました。

☆引用

「温泉地が生き残りをかけて、『虎の子』ともいえる宿泊データを地域内で共有し始めた。城崎温泉(兵庫県豊岡市)は各旅館の予約データを自動で収集・分析するシステムを構築。旅館は他社や地域全体のデータを参考にしながら、需要予測や宿泊プラン作りなどに生かす。温泉地では宿泊施設の廃業が続く。各社がデータに基づく緻密な経営にシフトすることで、地域の地盤沈下を防ぐ。(中略)このプラットフォームはエリア内の旅館から、自社サイトやオンライン旅行会社を通じて入った予約の日程、人数、金額、予約者の居住地域などを自動で収集。温泉地全体の予約状況を可視化し、数カ月先までの需要を予測できる仕組みだ。」(参考資料1 2022.9.29、日経、田村峻久から引用)

☆本文

勘と経験だけによる経営を脱却し、どのような宿泊客がその地域に訪れる予約になっているかをデータ化し共有することで、広告のターゲットをより具体的にして訴求でき、またプラットフォーム参加旅館の宿泊プラン作成に活用することにつながり、地域全体の集客力アップ、コストダウンにつながっているということです。その中でさらにそれぞれの旅館の良さを発揮して、宿泊客に満足してもらい、良さが拡散、共有されて、益々宿泊客が増え、地域が活性化していくことを切に祈ります。とてもヒントにつながる記事として大事にしたいと思います。

国産材・地域産材木材流通の業界内に置き換えても、やはり情報の共有が重要で今後はますます要となります。当社森林パートナーズの既存システムでは工務店の予定製材需要量をプラットフォーム内で共有し内訳を分析し、無駄が少なく出口の見えた原木生産に結び付け、実運用しております。ただ山からは木造住宅の構造材(製材用:A材)の生産に伴い、構造材に適さない材(合板用・木材チップ用バイオマス用など:B、C、D材など)がどうしても生産されるので、構造材以外の補足材、また工務店家具製作や合板工場、バイオマスなど製材用以外の需要情報も収集し生産プラン、加工プランなどをプラットフォーム内で最適化し木材の総合的な活用につなげる必要が有ります。また、城崎温泉の例と同様に、地域の産業を、その地域の方々で運営できるように、林業家の規模に限らず、また小さな製材所も情報をフラットに共有し参加できる、その地域の事情に合わせたプラットフォームを構築しなければなりません。ストックヤードや滞留在庫の処理などの問題はありますが、森林パートナーズは、地域内需要情報を細かく収集し、プラットフォーム内の生産量、加工量を可視化し、参加する企業体のそれぞれの特徴、技術を活かすネットワークで共存し発展できるように、これからは地域行政とも強く連携してプラットフォームを深化して参ります。

プラットフォーム内で共有される情報をプラットフォーム内で終わらせないために、CO₂排出削減、炭素貯蔵、資源の持続可能性、また木の魅力を評価する指標などに可視化して木材消費者と共有、共感できるような価値情報に結び付けたいと計画しております。そして指標を介して消費者が参加型のプラットフォームになるように分散型自立組織(DAO 注1)の概念も取り入れる必要があると考えております。

将来的には森林資源の成長データや災害リスクデータを共有し、造林育林メニューや、新しい需要創出の長期ビジョンを共有して長期連携による持続的産業になるように皆で協同できる仕組みをつくり、さらにそれぞれが成長し新しいサービス形態をつくり発展することを目指します。

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年9月29日

注釈

  • DAO:「Decentralized Autonomous Organization」の略。ブロックチェーンの仕組みを使って作られたコミュニティや組織のこと。

 

まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫

宿泊データの共有ということで、お互いの手の内を見せ合うことになりますが、メリットも大きいと思います。利用者にとっては、各旅館のリピータ率からサービスの質を予想することができると思います。データ共有のメリットがどうしたら利用者のメリットにつながるのか、さらには地域の交通や飲食業、土産屋なども巻き込んでいければと思います。後継者がいなくて廃業するケースもあると思いますので、従業員の新たな就職先を見つけやすくなれば、地域の暮らしも安定していくと思います。

地域産材木材流通の業界に関しても、材料調達やメンバー間の融通性だけでなく、施主さんの発注のタイミングや予約確定にも威力を発揮すると思います。各メンバーの得意な技術や個性などの情報の共有がなされ、業界全体が地元で信頼を生み出し、それが世代が変わっても受け継がれていけば、森林・木材産業も社会のリノベーションに貢献していくと思います。

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