青森県弘前市沢田集落の「ローソク」祭り 地域が結束して祭りを守る  県の重要文化遺産に 地域の結束 中央を動かす 

もう、4年前になりますが、2014年6月に、私は貴重なブログを書いています。それは青森県弘前市相馬地区(旧相馬村)沢田集落の「ローソク祭り」についてです。当時、この祭りの継続が難しくなりました。地域の人達が結束してこの祭りを守りました。それでこれは青森県の代表的な文化遺産になりました。今日は、これをブログに書きます。

 

□椎野潤ブログ(232)弘前市沢田集落の「ローソク」祭り

2014年6月17日

 

☆前書き

 

地域の伝統を掘り起こすには、地域の人達だけの力では、力不足です。その周辺の人達に働きかけて、巻き込んで行く必要があります。すなわち、地域から中央へ、内から外へ向けたアプローチが必要です。このブログで参考にさせて頂いている書(「限界集落の真実」参考資料1)に出ている、弘前市沢田集落のローソク祭りの事例を書いてみましょう。

 

☆本文

 

沢田集落は、弘前市相馬地区(旧相馬村)に属する16の集落の中でも、特に山間の奥に位置する、10戸の小さな集落です。「ローソク祭り」は、この集落で、毎年、旧暦の小正月に行なわれています。

屏風岩という巨大な岸壁の中央に社殿をおく、沢田明神宮で、冬の間に降り積もった雪を削ってつくられた階段状の参拝道を舞台に、数百本のローソクが、山村の虚空を焦がします。

この祭りも、2005年の弘前市との合併後は、補助金の削減と、少子高齢化の人手不足から、存続が危ぶまれていました。こんな沢田の人達を支えようと、旧相馬村民が立ち上がり、「実行委員会」を作りました。沢田も相馬も、歴史の異なる独立の「ムラ」であり、本来は、それぞれ独立の存在だったのですが、より大きい相馬が、沢田を助けに立ち上がりました。これが、弘前市を動かし、青森県も動かしたのです。マスコミも、この波に乗り報道しました。

これにより、10戸の小さな集落、沢田のローソク祭りは、青森県の代表的な文化遺産になり、全国レベルの観光地になったのです。まさに、「地域」から「中央」を巻き込んだ「地域伝統文化」の掘り起こしが、成功したのです。

 

☆まとめ

 

平成の町村合併前の相馬村は、日本有数のリンゴの生産地として、また、津軽グリーンツーリズム(注1)の発祥地として、地域作りで有名な元気のある村でした。でも、合併でその誇りは、吹き飛んでしまったのです。

この時、相馬村のリーダー達が考えたのは、「沢田があぶない」沢田になにかあれば、相馬全体もあぶなくなる。沢田の「ローソク祭り」を盛り上げれば、弘前とは違う個性のある相馬地区が明確になるのではないかということだったと思われます。

この目論見(もくろみ)は、見事にあたりました。2年目の2011年には、1000人の参拝者が集まったのです。この成功に、大きく貢献したのは、今、「流行り言葉(はやりことば)」になっている「ロケツーリズム(注2)」です。NHK弘前と事前に相談して、準備段階から、綿密に打ち合わせました。この結果、出来上がった番組は、夕方の地方ニュースの特集となり、全国放送でも流れたのです。これが大きかったのです。

その後、順調に拡大し、2019年の「ローソク祭り」は、2500人が集まっています。朝日新聞デジタルは、以下のように報じています。

「青森県弘前市沢田地区にある神明宮で、2019年2月19日夜、450年以上の歴史があるとされる『沢田ろうそくまつり』があった。市内外から訪れた参拝者は雪の参道を上った場所にある祠(ほこら)の岩肌にろうそくを立て、幻想的な雰囲気の中で、家内安全や豊作を祈った。

旧暦の小正月の行事で、ろうの垂れ方で農作物の豊凶の占いもする。平家の落人の子孫が祖先の霊を供養したのが起源とも伝わる。今年は元号が変わることから「時代」をテーマに掲げ、祠の下の斜面にろうそくを並べて川の流れを表現。登山囃子(とざんばやし)が響く中、松明(たいまつ)行列も行われた。

実行委員会の発表によると参拝者は約2500人。三上優一会長は『今年も盛況でよかった。時代が変わっても祭りだけは続けていきたい』と話した。」(参考資料2、朝日新聞デジタルから引用)

 

この沢田集落の「ろうそく祭り」の成功例は、どんな小さな集落にも、「遺すべき何かがあること」を教えてくれます。また、常に続けてきたことでも、「遺すべき何か」に作り直すことが、できることを示しています。皆さん、各地域で話し会って、「その何か」を探し始めましょう。(「まとめ」は、2020年、夏、記述)

 

(注1)ツーリズム(tourism): 旅行、観光旅行、観光事業。

(注2)ロケツーリズム:フィルムツーリズム(film induced tourism)の語が原点。テレビの番組や映画の舞台となったロケ地をめぐる旅。このフィルムツーリズムの語は、日本でも、1990年代から使われた。近年はロケツーリズムと呼ばれる。

 

参考資料

(1)山下祐介著:「限界集落の真実」〜過疎の村は消えるか〜、ちくま書房、2012年1月10日。

(2)朝日新聞デジタル、2019年2月24日。

 

[コメント]

ニュースの特集番組でも、映像効果などを放映側から助言されて、祭りの会場を設定していれば、「ロケツーリズム」と呼んで良いでしょう。そうなれば、これは「ロケツーリズム」の先覚者です。

 

[付記]2020年7月24日、椎野潤記

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です