植物工場 コロナで脚光 収益化に

日本は世界で、「植物工場」の数は多いのです。2020年2月の時点で、368カ所ありました。これまで設備が過剰で、実験的な小規模施設が多く、4割は赤字でした。販路開拓の甘さなどから撤退が相次いでいました。しかし最近では、収益化に光明が見え始めていたのです。そこにコロナが、襲来したのです。コロナは既存産業を、どこもかしこも破壊しました。でも、次世代を目指して伸び悩んでいた産業に対しては、背中を押しました。「植物工場」にとっても、コロナは追い風です。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年10月(№41)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(252)  植物工場コロナで脚光 収益化に道 2020年10月13日

 

☆前書き

2020年6月30日の日本経済新聞(参考資料1)は、その具体例を取り上げ、それを通じて、コロナ禍のもとでの「植物工場」について書いていました。ここでは、これを読んでブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「生育環境を制御して野菜を作る『植物工場』が、新型コロナウイルス禍で脚光を浴びている。袋詰め販売される点が衛生的だと、消費者が支持。割高だった販売価格が、生産効率化で下がってきたのも追い風だ。農業の後継者難と気候変動にも対応した食料の安定調達手段として存在感が高まる。」(参考資料1、日本経済新聞、2020年6月30日から引用)

 

☆解説

木田屋商店(千葉県浦安市)は、異業種であるスーパーから「植物工場」へ、7年前に参入した企業です。福井県と静岡県に、3工場を構えています。レタスを中心に生産し、1日の生産能力は、計3万4千株です。コロナの襲来で、外食店からの注文は減りましたが、生鮮食品販売のオイシック・ラ・大地を通じたネット通販は、2020年4〜5月には、前年の倍になり、スーパー向けは2割増えました。

同社のレタスの店頭価格は、80グラムあたり128円からです。工場野菜では、最も安い部類に入ります。でも、農地で作る露地栽培のレタスは、スーパーで110円(80グラム換算)ぐらいですから、まだ割高です。しかし、品質と生産量が安定していますから、引き合いは増えているのです。

木田屋商店は、溶液入り栽培パネルを段状に配置しても、育つ光の強さを、突き止めました。これで生産性が著しく向上したのです。混載物流で物流費も抑え、黒字を達成しました。

 

青果流通会社の傘下で、イトーヨーカドーなどに供給しているスプレッド(京都市)は、2018年、二つ目のレタス工場を京都市木津川市で稼働させました。工場生産能力は、3万立方メートルと世界最大級です。さ10メートルの棚への搬送など、工程の7割を自動化しました。リーフレタス(注1)の80〜100グラム当たりの希望小売価格は158円と、2008年に比べて4割安くなりました。NTTグループと提携して、データを収集しています。人工知能(AI)で効率化し、さらなる低価格に挑みます。

 

この動きは新規参入を誘発します。このような状況下でスプレッドは、運営ノウハウを提供するフランチャイズチェーン方式を展開し始めました。石油元売りのENEOSグループが2020年末に完成させる植物工場の建設などを支援しています。

 

また、簡素な施設で「植物工場」の裾野を広げている企業もあります。プランツラボラトリー(東京・港)です。東京大学と共同で、安価な農業用ビニールを用いた「植物工場システム」を開発しました。導入費は、従来の1/3です。西友の店舗に小型工場を設けました。JR東日本グループと連携し、高架下での栽培に取り組んでいます。(参考資料1、日本経済新聞、2020年6月30日を参照して記述)

 

☆まとめ

気候変動に直面している世界の人口は、2050年には97億人に達します。世界の食料危機のリスクは、いよいよ、表面化します。これに対して、日本人は、危機感に乏しいのではないかと、心配です。現在の日本の食料自給率は、4割を切っているのです。今回のコロナ危機で、現在、命綱である中国からの輸入が、一時、途絶しました。事情を知る一部の人達の間には、強い衝撃が走りました。でも,多くの日本人は、きわめて暢気でした。パニックにならないところは、日本人の凄いところです。しかし、「将来に対する対策を急がなければ」という緊張感が生まれないとするのなら、それは問題です。

去年(2019年)の農業就業人口は、5年前より、35%減りました。それに対する対策は、いよいよ、急務になっています。でも、この対策が、ずるずると、遅れ続けていた日本社会にとっては、今回のコロナの襲来は、むしろ、チャンス到来といえるかもしれません。

三密防止を叫ばれ、テレワークを実施せざるを得なくなり、夫の収入が不安定になり、子育て中の妻も、働かざるを得ない日常に直面しました。そうせざるを得ない社会は5〜10年後には来ると思われていましたが、コロナの襲来で、前倒しになり来年にも、その時代になることになったのです。次世代社会の到来が来年であれば、今から準備しなければなりません。そうなると、コロナのための緊急対策は、そのまま、次世代産業へ移行への出発点になるのです。

2020年9月10日の日本経済新聞(参考資料2)に、「コロナ特例を恒久化、タクシー飲食配送、10月全面解禁」の記事が出ていました。このような事例が、今後続発するものと思われます。「植物工場」の全盛時代到来も、コロナの襲来で、大幅に早まるでしょう。

このブログで書いたように、その中心産品のレタスの工場生産は、コロナ下で急拡張しています。でも、まだまだ、不十分です。去年(2019年)のレタスの工場生産量は1万7千トンで、レタスの年間シェアは、僅か3%なのです。調査会社は、10年後の2030年には6万2千トンとなりシェアは10%になると予測していますが、私は、もっともっと、増えてもらわねばならないと思っています。このコロナ危機の追い風に乗って、大幅に増大させて欲しいのです。また、出来るはずだと思います。

 

山村の至る所に、小型の植物工場が出来れば、山村の収入は安定します。雑菌が少なく清潔で、気候変動や天候不順の影響を受けず、限りなく進化し続けるAI・IoTでコスト低減が続く「植物工場」を、山村の人達が熱心に育成すれば、山村の未来は、活性に満ちた処となるはずです。

 

(注1)リーフレタス;レタスには「玉レタス(玉苣)」、「ステムレタス(茎苣)」、「コスレタス(立ち苣)」、「リーフレタス」の4品種群がある。「リーフレタス」は、結球せず葉に縮みがある品種群。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2020年6月30日。

(2)日本経済新聞、2020年9月10日。

 

[付記]2020年10月13日、椎野潤記

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