ユニクロは、日本の小売で唯一、世界の先頭を、攻め切って保持しました。コロナ禍の基で急展開が期待されます。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2020年11月(№53)
□ 椎野潤(続)ブログ(264) ユニクロ 中国で爆進 店舗3000店目標 売上高も日本国内を超える 内需産業の新モデル形成 2020年11月20日
☆前書き
ファストリテーリングは、コロナ禍のもと、中国事業に積極展開しています。2020年10月10日の日本経済新聞は、これを記事に書いています。記事は以下のように書き出しています。
☆引用
「ファストリテーリングの中国事業が、存在感を増している。新型コロナウイルスの感染が落ち着き大量出店を再開し、『ユニクロ』の店舗数(直営)が初めて日本を逆転した。中国は電子商取引(EC)と実店舗の融合モデルで先行し、国内事業の参考とする。成長の原動力となる市場だが、外交的な対立などによる集中リスクに目配りすることが課題になる。」(参考資料1、日本経済新聞、2020年10月10日から引用)
☆解説
ここでは、私が未来に向けて多大な期待を寄せているファストリテーリングについて書きます。でも、このブログでは、読者のわかりやすさを考えて、皆の知っている「ユニクロ」と書きます。
会長兼社長の柳井正さんは、日本経済新聞の取材において、「中国には13億人の人口があるのだから、3千店ぐらいは行けるでしょう」と話されていました。実際に、2020年8月末の中国での店舗数は、767店で、日本国内の直営店(764店)を、初めて超えたのです。5月末には745店でしたが、中国で新型コロナの流行が沈静化した6月以降は、月平均7店のペースで、地方都市にも店舗網を拡げました。さらに、9月末には782店まで増えました。
すなわち、新型コロナ危機で、世界全体が大きな恐怖に包まれ、経済が沈んだ中で、ユニクロは、着実に実績を残したのです。2020年5月末から8月末までの3カ月間で12店、8月末から9月末までの1カ月では、実に15店/月まで増えたのです。これは、凄いペースアップです。
私は、今、書いているこのブログシリーズで、未来に向けて積極的な経営をしている企業は、このコロナ危機のもとで、一気に成長を加速するはずだと、述べ続けてきました。ユニクロも、それが期待される代表選手なのです。
この新聞が指摘しているように、「中国内の店舗数が2020年内に、日本国内でのフランチャイズ店を含めた総数を超えるのは」間違いないと、私は見ています。2017年8月、ユニクロは2020年に、中国の店舗数が国内を越えると予見していました(参考資料8)。(参考資料1、日本経済新聞、2020年10月10日を参照して記述)
☆まとめ
私は、ユニクロについては、17編のブログを書いています。この内12編を参考資料として掲載しています。(参考資料2〜14)。ユニクロは、世界のアパレルのビックツウ、スペインのインデックス「ZARA(注1)」とスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M、注2)の後を猛追し、世界3位を続けていました。そして、コロナの来襲の直前には、先頭2社との差を、にわかに、詰めていました。そんなとき、コロナ危機を迎えたのです。そのコロナ危機を迎えてからは、前記のように好調でした。
そこで、ここでは、ユニクロの2015年から2020年までの昔ブログを辿ってみます。これで柳井さんが何を目指してきたかを、改めて直視し、これに基づいて、今回のユニクロの中国再挑戦を、よく考えてみます。
こうして、昔ブログを辿ってみると、柳井さんが目指してきた経営モデルの未来像も、コロナ禍の襲来で、一気に身近かに近づいて来たことがわかります。そして、ここで、ユニクロが一気に前進するには、中国を舞台にするのが、とても良いように思えます。
でも、中国では3000店位はいけると、昨年から思っていたとしても、2020年1月に「新型コロナが来た」と、突然、認知してから、中国店の急増をはじめたのでは、先に述べたような急増は、不可能だったはずなのです。周到に準備してきたものが、コロナの爆風で、中国国内の障壁が吹き飛んで、一気に進展したと見るのが、自然なのです。昔ブログを再読してみますと、ユニクロは、着実に進化してきているのです。世界が急変しても、決して動揺しないでしょう。(付記「コメント」ユニクロの着実な進化に注目)。
ユニクロは、商品企画から、生産販売までのリードタイムを、「従来は、全世界が皆、1年ほど」だったものを「先頭を切っての短縮」に転換し始めていました。これを迅速に縮めるには、中国モデルが好都合なのです。具体的に言うと、中国モデルの以下の諸点が、とても重要です。
中国では、ネット通販の販売管理や在庫管理が、店舗と連携しています。ネット注文品は、店内の在庫を梱包し、できるだけ来店してもらい、手渡ししています。これは、物流拠点を別途に設けるより配送効率が良いのです。
柳井さんは、中国の店舗で、これを実体験し、これを自身の未来に向けたシステム改善に活用したいのでしょう。ユニクロは、現に日本国内では、ネット通販品はEC専用倉庫から全て発送し、実店舗とネットは連動していません。
日本には、完成した、この店舗網が実在しており、これをやめて、新しいシステムに移行するのには、大きなエネルギーと再投資が必要です。この改革を進めるには、コロナが既存システムを破壊した、今がチャンスですが、柳井さんは、今は直ちに中国での改革を急ぎ、これの日本への移管を、断固、実行するのだと想像しています。
これは、日本の内需産業の未来に向けた貴重なモデルになるでしょう。ユニクロのコロナ後の進展について、私は、今、多大な期待を寄せています。(参考資料1〜13を参照して記述)
(注1)インデックス:スペイン・ガリシア州のアパレルメーカー。「ZARA」のブランドを展開している。アバレル売上高、世界第1位。
(注2)ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M):スウェーデンのアパレルメーカー。アバレル売上高、世界第2位。
参考資料、
(1)日本経済新聞、2020年10月10日。
(2)椎野潤ブログ:「ユニクロ」通販 店舗受け取り コンビニ各社と提携交渉、2015年5月5日。
(3)椎野潤ブログ:ユニクロ バングラディッシュで新モデル、2016年6月21日。
(4)椎野潤ブログ:ネット通販対実店舗の闘い 新たな局面に ユニクロ 全国翌日配送、2016年6月30日。
(5)椎野潤ブログ:ファ―ストリティリング 店頭で電子受発注、2016年8月18日。
(6)椎野潤ブログ:ユニクロ 「服作り」抜本改革 私仕様の服10日で届く、2017年4月1日。
(7)椎野潤ブログ:ユニクロ欧州店 2倍、2017年5月15日。
(8)椎野潤ブログ:ユニクロ 中国での躍進を目指す 2020年 店数で日本を超す、2017年8月26日。
(9)椎野潤ブログ:ユニクロ 世界展開 ネットでセミオーダー衣料、2017年12月25日。
(10)椎野潤ブログ:アマゾン アパレルの陣 迎え撃つ ゾゾタウン ユニクロ、2018年2月17日。
(11)椎野潤ブログ:ユニクロ ネット通販高速化 地方も最短1日 世界で自動倉庫、2018年10月22日。
(12)椎野潤ブログ:アパレル世界の3強 東南アジアの開拓の激闘、2018年10月23日。
(13)椎野潤ブログ:ユニクロ 海外の営業利益 国内を越える 主要小売では始めて、2019年11月3日。
(14)椎野潤ブログ:ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)で米小売を揺さぶる 寝具販売キャスパー 日本での先駆者ユニクロ 情報生産販売業、2019年11月17日。
[付記]2020年11月20日、椎野潤記
[コメント−1]
ユニクロの着実な進化(2015年〜2019年)要約
(1)2015.5:ユニクロ通販 店舗受け取り コンビニ各社と提携交渉。
(2)2016.6:ユニクロ バングラディッシュで新モデル。
(3)2016.6:ネット通販対実店舗の闘い 新たな局面に ユニクロ 全国翌日配送。
(4)2016.8:ユニクロ店頭で電子受発注。
(5)2017.4:「服作り」抜本改革 私仕様の服10日で届く。
(6)2017.5:ユニクロ欧州店 2倍。
(7)2017.8:ユニクロ 中国での躍進を目指す 2020年 店数で日本を超す。
(8)2017.12:ユニクロ 世界展開 ネットでセミオーダー衣料。
(9)2018.2:アマゾン アパレルの陣 迎え撃つ ゾゾタウン ユニクロ。
(10)2018.10:ユニクロ ネット通販高速化 地方も最短1日 世界で自動倉庫。
(11)2018.10:アパレル世界の3強 東南アジアの開拓の激闘、欧州2強に圧勝。
(12)2019.11:ユニクロ 海外の営業利益 国内を越える 主要小売では始めて。
(13)2019年11:ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)米小売を揺さぶる 日本での先駆者ユニクロ 情報生産販売業。
[コメント−2(山村振興 異分野の改革から学ぶ 〜世界のアパレル産業から学ぶもの〜)]
ユニクロ(ファーストリテイリング)は、2011年に、ユニクロ製品の低コスト生産地として、縁の深かったバングラディッシュで、洋服を企画・生産する、グラミンユニクロを設立しました(参考資料3)。金融を通じて貧困を救済したとして、「ノーベル平和賞」を受賞した地元の英雄、グラマン氏を、合弁相手として得られる幸運に恵まれましたが、事業は苦戦の連続でした。最初は、グラマン銀行からの融資を受けた女性が売り歩きましたが、成果はあがりませんでした。1ドル(約107円)という低価格でも、洋服を買う文化がなかったのです。
バングラディッシュの女性の95%は、伝統服を着ていました。洋服を買ってくれる文化がなかったのです。だからと言って、単純に伝統服を売っても、差別化できません。そこで、カジュアル化を、少しづつ進める道を選びました。
伝統服はトップス(上半身の服)とパンツ、スカーフをセットとして販売するのが一般的です。ユニクロは、それぞれ別の柄を用意し、組み合わせて楽しめるようにしました。これは好評でした。現地の事情に合った商品を開発し、受け入れられる価格で生産・販売する新モデルの開発を、鋭意進めました。
この経験が、その後のユニクロの海外での成功の基となっています。各地の現地服のファッション化により、ファッションの流行を体験させ、商品ユニクロも、現地女性に、少しづつ、近づけていきました。今回の中国での挑戦でも、その流れは変わらないでしょう。その中国での成果を日本に持ち込む、内需改革は楽しみです。ユニクロは、日本のローカル文化を根強く遺している、日本各地での個人の女性の心を満たす、ダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C、参考資料13)に、チャレンジすることになるでしょう。
東京・大阪・札幌の大都市には、高度成長時代に各地から参集した地域の人達の文化が、埋没しているはずなのです。東京などは、地域文化が集合した「ミニ日本国」なのです。
ここで、ダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C)を実施すると、コンシューマー(市民・女性)個人の心の中に眠っている、古里の地域の文化が目を覚まします。ここでは、個々人の山村文化とユニクロのD2Cの関係が、大いに注目されます。」