森林・林業復活への思い

☆巻頭の一言

人が生涯をかけているものとは何かこれが心の奥底に響きました。「人が生きるということ」の根源的一言です。

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2022年3月(№191)

 

□ 椎野潤(特)ブログ(402) [特別ブログ]大谷恵理ブログ 森林・林業復活への思い 2022年3月18日

 

☆前書き

ここでは、前書きは不要です。

 

☆引用

[特別ブログ]大谷恵理ブログ 森林・林業復活への思い 2022年3月18日

大谷恵理

 

森林・林業復活への思い

 

「利害関係者でも無いのに、どうしてそこまで森林や林業に関わろうとするのですか?」という質問を良く頂きます。それを一言では説明できず、長くなりますが、と前置きしてお話しても、大抵の方は疑問を払拭できずに終わるようです。

私自身のことを、成功した方々の伝記のように語るつもりは全くありませんが、強いモチベーションの背景にある思いについて、一度整理してみようと思います。

一つだけ、重要だったと感じる幼少期の体験をお話しましょう。私の実家は静岡県駿東郡清水町という、東洋一の湧水量を誇る泉が湧き、狩野川の流れる自然豊かな町です。そこにできた新しい住宅地に父が購入した家で、私は育ちました。周囲には石ころだらけの造成地が拡がっていて、近くの山から種が飛んできたと思われる、5センチくらいの実生の松苗がいくつも顔を出していました。6歳だった私にとって、それは無性に可愛らしく、愛しいものであったのを鮮明に覚えています。家から数分の山の斜面は、長い間、私のお気に入りの遊び場でした。

後年知ったことですが、松はパイオニア植物、つまり十分な水も土壌の栄養も無い土地に、真っ先に根づいて育つ樹木でした。江戸時代の浮世絵によく松が描かれているのも、自然が豊かなのではなく、人々が生きるためにギリギリまで自然を利用した結果、土壌が痩せ細り、多くの栄養を必要とする他の樹木が成長できなかったことを表しているといいます。

松が大きく育ち、本数が増えて林になり、落ち葉が溜まって土壌が豊かになると、次第に他の植物が生え、優勢になっていき、松は次第に枯れて消滅していきます。海岸などに松林がずっと維持されていたのは、人々が松葉や枯れ枝を燃料として使っていたせいで、土壌の栄養が増えなかったからです。

このような植物や樹木の移り変わりを遷移と言い、その最終段階で、それ以上変化しない状態を極相林と言うようです。東大名誉教授の岡野健氏によれば、自然が安定した状態にある極相林では、森全体での炭素貯蔵量の増加はほとんどなく、プラスマイナスゼロと言っても良いそうです。

自然は時に、台風や山火事、地震や火山噴火によって、一時的に多くの植物層を破壊しますが、その後には必ず何らかのパイオニア植物が進出し、荒れ地に豊かな緑を取り戻す仕事を始めます。植物に意図がある訳ではなく、風や鳥に運ばれた小さな種が、ひたすら生きようとして根を下ろし、芽を出して葉を広げていきます。土中ではミミズやトビムシのような小さな生き物が、枯れた植物を分解して土壌を作っていくでしょう。最初に進出した植物が環境を変え、新たな環境に適した植物に置き換わる、そのようなプロセスを通して森は更新されていきます。

椎野先生が先日のブログで仰っていたように、「生きている」という状態には内部不安定性が欠かせません。永い間、人口減少などの多くの課題を抱えながら、根本的な解決策を見出せずに停滞を甘受してきた日本という国に、一時的な混乱や軋轢を生んだとしても、新たな成長につながる変化を起こしたい、それが私の意欲の源泉です。

2006年に房総の鴨川市で、市に税金代わりに物納される古民家を何とかしようと立ち上がったNPOが主催した「家づくり体験塾」、そこで大工見習いをするうちに、日本の森林・林業の状況を知り、2007年に尾鷲の速水林業が主催した「林業塾」に参加しました。そこから15年、森林再生につながる解決策を「大型パネル」という木造建築技術に見出したのは、長い旅を経て最初の場所に戻ったように感じます。「大型パネル」は、森林の情報と住宅・建築の情報をつなぐハブとして機能することで、森林の価値を最大化するでしょう。

私自身の中で、このままではいけないと自分の成長を求めた挑戦は、小さな種から樹木へと育っていき、様々な人との出会いや経験によって豊かな森へと遷移してきました。このまま極相林として安定するのではなく、今度は私自身が地域に赴いて変化を促し、力強い種を蒔く役割を果たしていこうと思います。より良い未来に向けて変化を起こすことが、成長のエネルギーを生み出し、多くの人々と森を豊かにすると信じています。

 

☆まとめ

「椎野塾」という「生きている人間集団」は、目的を共有して生きている「パイオニア植物」です。大谷恵理さんは、椎野塾事務局長として、この一文で、それをそのまま描出してくれました。「生きている森」を最大の友として、日本人という家族と共に、大きな目標を持って生きていく仲間たち。その種(たね)が、また一つ大地に落ち、芽生えました。

 

[付記]2022年3月18日

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:小森雄平・伊佐裕ブログ 森林パートナーズのビジョン 生命的サプライチェーンとDX 2022年3月15日]

 

大谷恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

たしかに1本の木を用途に応じて最適に分解しても、需要と完全に一致させることは難しいです。余ったものに価値をつけるところに利益を生むヒントがあるかと思います。最適解に向かってサプライチェーンは生き物です。サプライチェーンの連携を想定すれば、サプライチェーンが2本あってもよいですね。その連携が複雑にならないためには、「複眼的思考で他のサプライチェーンと共鳴するDXを、また人間的な深い交流をしながらサプライチェーンを生命的に運営、成長させていきたい」というのは、大事なすごい指摘です。

 

酒井秀夫

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