丸井は次世代商業へ先行して移行しています。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年10月 (№145)
□椎野潤(続)ブログ(356) 丸井いよいよ「売らない企業」に 非物販売り場面積3割から2026年3月期7割に 2021年10月5日。
☆前書き
丸井は「モノ」を売る小売業から「モノ」は売らない商業へ業態転換しています。2021年7月13日の日本経済新聞がこれを書いていました。私は、丸井のこの動きは、次世代商業に向けた注目すべき動きだと感じ、10月のブログ発進の先頭に掲げる一文として、7月から書き始めていました。しかし、2021年8月27日の日経は、「衣料品プライベートブランドから撤退」という見出しで、新鮮な記事を発信しました。この記事では、非物販の売り場面積の割合を、現在の3割から2026年3月期に7割に高めると報告していたのです。今日は、一旦、まとめていたブログを、新しいデータで修正して発信します。このブログでは、7月13日の記事(参考資料1)の引用から書き始めます。
☆引用
「丸井グループは売り場面積の約3割を「売らないテナント」に転換する。通販など話題のネット企業を誘致し、商品やサービスを体験してもらう場にする。新型コロナウイルス禍で消費のネットシフトが加速している。大型商業施設がライバルのネット勢と共存する先駆けとなる。」(参考資料1、2021年7月13日、日本経済新聞から引用)
☆解説
かって消費の主役だった大型商業施設は苦境にあります。百貨店の市場規模はコロナ禍前の2019年にはピークの6割に落ち込みました。主力テナントのアパレルは大量生産・大量消費が時代に合わず、若者は流行を素早く反映するネット企業に流れました。リアル店舗で商品を確認し安いネット通販で買う「ショールーミング」も、商業施設にとって打撃になっていました。
このような中で丸井は、2019年から通常の物品販売の比率を減らし、飲食店やサービス店を増やしてきました。私は、これを2021年4月27日のブログ(参考資料2、注3)に書いています。ここでは好立地の店舗を舞台にして、海外の最先端スタートアップと連携して、ネット上では得られない店舗内での顧客の動きを分析し、これを商品開発や販売戦略に生かしていました。(参考資料1、2021年7月13日の日本経済新聞、参考資料2、ブログ(309)を読んで記載)。
また、日本経済新聞の2021年8月27日の記事は、以下のように書いています。以下に引用します。
「消費行動が店舗からネットに移るなか、丸井は物販に頼らない事業構造への転換を進めている。ネット通販企業の商品を試すスペースや飲食店などを増やし、非物販の売り場面積の割合を現在の3割から2026年3月期に7割に高める」(参考資料3、2021年8月27日の日本経済新聞を参照引用)。
☆まとめ
丸井は有力テナントを確保するため、スタートアップ(注1)に5年間で200億円を出資します。現時点では28社に出資し、うち12社がテナント出店しています。今後は、これを出資70社、出店34社に引き上げます。他の商業施設にないテナント構成で集客力を高め、来店客にグループのクレジットカードの作成を勧めます。
丸井はクレジットカードで、既に大きな成果をあげていました。コロナ禍前の2020年3月期に、会員数709万人、決済手数料を中心にした「フィンテック(金融関連)事業」の営業利益は383億円と、一般小売業の4倍に達していました。
すなわち丸井は、ここまでに業態の大転換をなし遂げていたのです。「物品を販売して売る」小売業から、「フィンテック事業(注2)」などへの依存度をたかめる「モノを売らない企業」に転換していました。
さらに丸井は、今、店舗内のテナントの大募集をしています。丸井は、日本の店舗商業の転換をさらに実現し、次世代商業に向けて力強く先行するでしょう。
私は、日本の「林業再生」「山村振興」においても、「森林サービス産業」における商業の大改革が大きな柱になるはずだと考えています。森林サービス産業における「サービス商品」を、大至急、品揃えして、丸井に強力に売り込むと良いだろうと感じています。
でも、丸井の募集に応募できる大学の林学部卒業のスタートアップ(注1)がいなければ、話が始まりません。大学の林学部を説得して、森林サービス産業を担うスタートアップ(注1)の卵を産む土壌を作ってもらわねばならないでしょう。
ここで、産み出さねばならないスタートアップの卵の仕事は、木材製造業の仕事ではありません。森林サービスの仕事です。森林サービス産業では、森林サービス製造業も重要ですが、森林サービス商業は、一層重要です。どう作るかよりも、何を作ったら売れるかの方がさらに大事だからです。このスタートアップの卵作りが、今、火急の大事です。ここでは、丸井のような商業改革の先駆者にも、林業・山村改革を、是非、手伝ってもらいたいのです。(参考資料1、2021年7月13日、参考資料3、8月27日の日本経済新聞を読んで発想)
(注1)スタートアップ: 新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社のこと。
(注2)フィンテック (Fintech: financial Technology):Finance(金融)とTechnology(技術)を組み
合わせた造語。ファイナンス・テクノロジーの略。ICTを駆使した革新的(innovative)、あるいは破壊的(disruptive)な金融商品・サービスの潮流などの意味。
(注3)参考資料2、2021年3月11日の日本経済新聞を参照引用して記述。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年7月13日。
(2)椎野潤(続)ブログ(309) 丸井 売らない店に変身 小売業から情報の収集・販売業へ転身 店頭は消費データを得る場に 2021年4月27日。
(3)日本経済新聞、2021年8月27日。
[付記]2021年10月5日。
[コメント][丸井 プライベートブランド(PB)事業から撤退]
2021年8月27日の日本経済新聞には「丸井、衣料PBから撤退」と題する大きな記事が出ていました。記事は、以下のように書き出していました。
「丸井グループは2023年3月期までに、プライベートブランド(PB)事業から撤退する。かって売上高全体の2割を占め、いまも全社員の2割が携わる同事業は電子商取引(EC)の台頭や新型コロナウイルス禍で売り上げが急減していた。関連する社員はネット企業の店舗運営支援や金融など成長分野に配置転換する。小売業のブランド訴求の象徴だったPBの事業戦略が転機を迎えている。」(参考資料3から引用)