外国人との共生  外国籍の子供への日本語教育 地域により著しい地域振興 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年6月 (№109)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(320) 外国人との共生 外国籍の子供への日本語教育 地域により著しい地域振興 2021年6月4日

 

☆前書き

人口減少に歯止めがかからない我が国では、これから、ますます、外国人の助けを借りなければならないことは必定です。ここで、外国人に本当に世話になるつもりなら、外国人の子供の教育を、本気で考えねばならないと思います。でも、現場には、厳しい現状があるようです。

2021年5月15日の日本経済新聞は、外国人子女の教育に関して、「学校や保護者、子ども達は、どのように、言葉の壁と向き合っているか」について、学びの現場から伝えています。

 

☆引用

「外国籍の子どもへの日本語教育の体制不備が鮮明になっている。障害のある子ども向けの「特別支援学級(注1)」が受け皿になっている現状が、日本経済新聞の調査で明らかになった。外国人子女の保障がなされなければ、外国人人材の活躍はおぼつかない。学校や保護者、子ども達は、言葉の壁といかに向き合っているか。外国人との「共生」の実相と課題を学びの現場から伝える。(参考資料1、2021年5月15日日本経済新聞から引用)

 

☆解説

外国人の子供は、日本語が良く理解できないため、日本人の子供のクラスに入れておいたのでは、授業についていけないことが多いのです。外国籍の児童の多い地域では、様々な工夫をしています。

自動車工場で働く南米出身者が多く住む、群馬県太田市では、日本語と多言語を話す「バイリンガル教員(注2)」が、外国籍の子供の学習を支えています。海外の教員免許を持った人材を、月額27万円で採用し、5人がポルトガル語、1人がスペイン語を使い、日本語が苦手な子供の指導にあたっています。

太田市の学びの場となるのが「国際教室(注3)」です。市内を8ブロックに分けた上で、外国籍の子供の在住比率を参考に、小中学校41校のうち16校に配置しています。日本語指導が必要な485人のうち9割が、国際教室がある学校に通っています。市教育委員会の恩田由之教育長は、「2005年度に制度を導入してから、外国籍の子の高校への進学率が上がり、部活動などで活動する子も増えた」と効果を実感しています。しかし、取り組みが、このように、うまく行っているのは、一部の自治体に限られているのです。

 

中部地方からは、深刻な事例の報告もあります。全児童の4分の1が外国籍という公立小学校では、支援学級に在籍する50人の半数が外国籍の子供で、児童の5人に4人がブラジル人というクラスもあります。この学校の校長先生は、「日本語での指示に従って、適切に動けない子供は、支援学級に入ることを進める。クラスメートに、ついていけなければ、本人も苦しいはずだから」と話しています。

 

また、支援学級は、本来は、障害のある子供を、その個人の状況に応じて教育するのが役割なのです。文部科学省の特別支援教育の担当者は、「日本語習得の遅れを主な理由として、在籍させるのは、法令の趣旨に反する」と指摘しています。

結局、全国各地を見渡してみますと、外国人労働者の子供の日本語教育は、進んでいるところと遅れているところの格差が大きいのです。また、本当の教育支援制度が確立していないようにも思います。早急に、対策を講じなければなりません。(参考資料1を参照して記述)

 

☆まとめ

文部科学省の調査によりますと、外国籍の子供の支援学級への「在籍率(注4)」は、2〜19%と地域により大きな差があることも判ってきました。また、総務省が算出する「財政力指数(注5)」によりますと、「財政力指数」が高い自治体ほど、「在籍率」が低い傾向があるのです。

これは、一見、矛盾しているように思えますが、群馬県太田市の事例で、数字を集めてみますと、その実例がわかりました。群馬県太田市の場合は、2019年度の財政力指数(注5)は1.03で、在籍率(注4)は3.6%でした。

同市は、市内に自動車工場がある大手スバルからの税収が大きいのです。その効果により、同市の財政力指数は、全国の市町村の同指数の0.51を大きく上回っていました。ですから、「正規の教員と同等の給与でバイリンガル教員(注2)を、自由に採用できるのです。そのためか、支援学校への在籍率は3.6%と、あまり高くないのです。

 

文部科学省は、日本語指導が必要な子供の数に応じて、教員を追加配置ができるように、予算処置をしています。現在、20人の子供に対して、教員1人を配置しており、2026年までに18人に1人の水準まで増やす計画です。

でも、追加配置の教員が確保できず、予算を返上する自治体もあります。学校現場でも、慢性化する人手不足が、文部科学省の対策にブレーキをかけています。外国人の子供の日本語教育での教員の増員対策も、きわめて、重要です。(参考資料1、2021年5月15日、日本経済新聞を参照して記述)

 

(注1)特別支援学級: 小学校(軽度中度別のみ)、中学校、義務教育学校、高等学校および中等教育学校に、教育上特別な支援を必要とする児童および生徒のために置くことができる学級である。

(注2)バイリンガル:状況に応じて二つの言語を自由に使う能力があること。また,その人。バイリンガル教員:状況に応じて二つの言語を自由に使う能力がある教員。

(注3)国際教室:各地の 国際交流協会や任意団体、個人により、公共の施設の一室や個人の自宅などで開かれる教室。 毎日数クラス開かれる規模の大きなものから、隔週や月に一度1クラス開かれるものまで種々の形態がある。 日本語指導を必要とする外国人児童生徒が在籍する義務教育諸学校に設置されている教室。 または、その教室などで行われる日本語指導を指す。

(注4)在籍率:その地域の外国籍の子供が、支援学校に在籍している比率。在籍している外国人子供数を支援学校の総在籍数で除した数値。

(注5)財政力指数:地方公共団体の財政力を示す指標として用いられる指数。基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値。通常は過去3カ年の平均値を指す。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年5月15日。

 

[付記]2021年6月4日。

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