日本の女性 仕事も育児も「M字」解消進む 2020年女性の労働力率 過去最高を更新

☆巻頭の一言

出産や育児で、職を離れるため、30歳代の働く女性が減少する「M字カーブ現象」は、解消が進んできました。でも、これは、古くからの日本の生活・文化と深く関連しているものなのです。いろいろと改善しなければならない点は多いのです。また、このことの改善は、日本の未来にむけて、今、最も困難な課題である「人口減少の阻止」の解決の重要な糸口になることが、改めて見えて来ました。(椎野潤記)

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2022年7月(№222)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(433) 日本の女性 仕事も育児も「M字」解消進む 2020年女性の労働力率 過去最高を更新 2022年7月5日

 

☆前書き

出産や育児を機に職を離れるため、30歳代の働く女性が減る「M字カーブ現象(注1)」の解消が進んでいます。2022年5月28日の日本経済新聞は、これを書いています。記事は以下のように書き出しています。

 

☆引用

「出産や育児を機に職を離れ、30代を中心に働く女性が減る「M字カーブ現象(注1)」の解消が進んでいる。総務省が2022年5月27日に発表した2020年の国勢調査に基づく調査によると、35〜39歳で働く女性の比率は78.2%と、5年前に比べて5.2%上がった。30代の女性の8割が仕事を続け、極端な落ち込みはなくなった。ただ、女性は非正規社員として働くケースが多く、働き方や待遇の改善には、課題が遺る。」(参考資料1、2022年5月28日、日本経済新聞から引用)

 

☆解説

労働力率(注2)は、就業者と仕事を探している人を合わせた「労働人口」が15歳以上の人口に占める割合です。女性は出産や子育てが多くなる30代の労働力率が20代や40代に比べて、低くなる傾向があるのです。これを年代ごとのグラフにすると、「M字カーブ」になります。日本は海外に比べるとM字の谷が深く、女性の就労環境の課題を映すものとされてきました。

2020年の国勢調査の就業状況等基本集計結果では、女性の労働力率(注2)のMカーブの谷になる30〜34歳が79.6%と、5年前の2015年の調査より、5.5ポイント上昇して、谷が浅くなっていました。

M字カーブが最も著しかった1985年には、谷底の30〜34歳の労働力率は49.3%でした。すなわち、2020年は、35年をへてM字カーブの谷底は、30.3%浅くなったのです。すなわち、日本の女性のM字現象は、著しく減少したのです。背景には育児休業の普及などで、女性が働きやすい環境が整ってきたことがあります。

 

でも、ここでは出産で育児休暇をとる人は、労働力に算入されるため、データの上では職を離れた計算にはならないのです。ですから、ここで数字的に現れたほど、女性の職場環境が改善されたとは言えないのです。しかし、一時的に仕事を休んでも、職場に復帰する女性が増えてきました。出産を機に退職しても、子供が成長したら改めて働き始める女性が多くなったのです。これは明るい兆候です。(参考資料1、2022年5月28日、日本経済新聞から引用)

 

☆まとめ

2020年は、30代の女性の就労が進みました。15歳以上の女性の労働力率(注2)は、54.2%と、2015年の調査より4.4ポイント上がり、過去最高になりました。これは女性の出産・育児の支援が進んだことであり、凄く嬉しいことです。

でも一方で、働く女性の待遇には、まだ課題は多いのです。すなわち、男女それぞれの雇用形態を見ると、正規雇用で働く女性は、42.4%と、男性の65.2%を大きく下回っているのです。女性はパート・アルバイトが41.5%で、正規雇用と非正規雇用が、まだ、ほぼ同数の水準なのです。女性の雇用形態には、今後さらに、著しく改善しなければならない課題が、まだ残っているのです。

非正規での雇用は正規雇用と比べると賃金が見劣りします。労働政策研究・研修機構によりますと、2021年のパートタイム労働者の月間現金給与額は、平均10万円でした。フルタイム労働者の42万円に比べると4分の1にしかならないのです。

すなわち、女性の正規雇用を、増やさねばなりません。出産・育児で退職したあとの正社員での復帰を促すには、企業は週休3日制やテレワークの充実といった柔軟な働き方を促進する必要があるのです。

育児支援が重要です。これは、近年、大分対策が進みました。男性の育休を取りやすくする改正育児・介護休業法が2021年6月に成立し、2022年4月から段階的に施行されました。女性の出産・育児での離職の防止につなげるため、男性は子供が生れてから8週間までに、最大4週間の育休を取れるようにする制度改正が盛り込まれました。このように、この対策は、着々と打たれています。これらは、今後も、どんどん、前に進めねばなりませんが、出産・育児を推進するには、まだ、様々な細かい施策が残っているのです。この改善を、今後一層、積極的に進めねばなりません。

 

この出産・育児支援を積極的に行うことは、日本が、今、抱えている最大の難題、人口減少に、歯止めが掛ける、切っ掛けになるはずなのです。今こそ、国も、日本人も、ここに全力を傾注するべきです。

これは、私のブログが、メインテーマとしている「林業再生・山村振興」にも、無縁のことではありません。関係者全員が、総力をあげて、出産・育児支援体制を支援していかねばならないのは、当然すぎることなのです。(参考資料1、2022年5月28日、日本経済新聞を参照引用して記述)

 

(注1)M字カーブ現象:女性の年齢階級別の労働力率(注2参照)をグラフで表すと、学校卒業後20歳代でピークに達し、30歳代の出産・育児期に落ち込み、子育てが一段落した40歳代で再上昇する。これをグラフに表すと、アルファベットのMに似た曲線を描く。M字カーブとはこのグラフの形態を指す。女性の就業状況の特徴を表している。

(注2)労働力率:就業者と仕事を探している人を合わせた「労働人口」が、 15歳以上の人口に占める割合。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2022年5月28日。

 

[付記]2022年7月5日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(432)  IT人材難 IT職の低賃金に拍車 求人倍率10倍 需要映さぬ待遇 転職の壁 2022年7月1日

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

日本は少子化で、どの分野も人手不足といわれていますが、林業も国産材時代を迎え、再造林していくためには、求人倍率はIT職以上かもしれません。その解消には、まずは賃金を上げる仕組みをつくらなければなりません。

IT職の国内の賃金が安いと、人材は海外や他分野に流れ、途上国のIT技術者は逆に日本にやってきて、結局、日本にはIT技術者がいなくなるのではと危惧します。

これから木が大きくなってくる日本の林業も、伐倒など能力に応じてジョブ型雇用にしていかないと人材は育たないと思います。

一方で、ITも林業も、高齢になっても高い賃金が得られる仕組みを作らなければならないと思います。

林業もサプライチェーンを回していく上で、IT技術者が欲しいところですが、そのためには、林業の仕組みもわかりやすいように簡素化しなければならないと思います。

 

酒井秀夫

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