日本の新エネルギー産業の展開を目指す(その1) 鹿児島県錦江町の木質ガス化発電

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年5月(№103)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(314)新エネルギー産業の展開を目指す (その1)鹿児島県錦江町の木質ガス化発電 2021年5月14日。

 

☆前書き

ぎふフォレスター協会の小森胤樹代表理事から、魅力溢れたブログか送られてきまました。ここでは、これを紹介します。

2021年3月19日のブログ(参考資料2)では、小森さんからの楽しいお便りを紹介しました。小森さんは、鹿児島に講演に行ったとき、興味深い青年と出会ったのです。おおすみ半島スマイルエネルギーの社長、村上博紀さんです。小森さんは、これからの九州南部の林業再生・山村新興を、牽引してくれる方だと、多大な期待をかけていました。私は、この村上さんを紹介するブログを書くのを、大変、楽しみにしていました。

 

[村上博紀さんのプロフィール]

村上博紀さんのプロフィールは、以下です。

「鹿児島県志布志市出身。国立都城工業高等専門学校を卒業後 鹿児島のコンクリート・二次加工製品メーカーインフラテック株式会社に入社。技術部や技術営業部で勤務。2017年3月に同社を退社した後、同年4月より、おおすみ半島スマートエネルギー株式会社に入社し 2019年より現職の代表取締役として、同社の運営はもとより肝付町や大隅半島全体の地方創生に取り組んでいる。」

 

[鹿児島県錦江町「未利用資源の活用」と「防災」を両立する木質ガス化発電]

鹿児島県錦江町が、先駆けて実施している「木質ガス化ガス発電」に関する貴重な資料をいただきました。(参考資料1)

 

[木質ガス化発電装置]

 

[調査実施]町面積の75%を占める山林の資源を有効活用するため、環境省補助事業を活用して木質バイオマス資源のポテンシャル調査を実施。

 

[事業検討]調査結果を受け、役場敷地内への木質バイオマス発電設備の導入を検討していた2018年、北海道で地震が発生し、国内最初の「ブラックアウト(災害時全域停電、注1)」が発生。

 

[方向転換]北海道のブロックアウトにより、町内でも、災害時の防災意識が向上。未利用資源だけでなく、災害時の防災にも、貢献する電力事業に方向転換。

 

[目標達成]発電事業によって、災害発生時の拠点(役場)、避難所(保護福祉センター)、ライフライン(水源地)の電源を確保。未利用資源の活用と防災の両立を実現。

 

「設備概要」

発電種類:ガス化木質バイオマス発電。

45kw。

発電量:32万4千KWh/年。

燃料:山林未利用材(500トン/年)。

総事業費:2億円(補助金4分の3、注2)。

運転開始:2020年2月。

 

[事業経過]

2018年:「錦江町木質バイオマス資源活用計画策定事業(環境省補助事業活用)」を実施。町内の木質バイオマス賦存量を明らかにした結果、発電事業によって、「未利用資源の活用」及び「低炭素化」に取り組むことに。

2018年9月:北海道で国内初の「ブラックアウト(注1)」が発生。これを機に事業目的に災害時の「防災」が加わり、売電から自家利用型に方向転換。

2019年7月:施設整備に係わる工事着手。送電線については、防災に貢献する設備であることから、地中送電方式を採用(台風対策)。

2019年12月:ドイツ(スパナー社)より発電設備が到着。設置・調整の後、翌年1月よりテスト運転を開始。

20204月:隣接するレンコン畑に温水を供給開始。水温をあげることで早期栽培が可能に。

 

[事業スキーム]

[事業目的]林業整備の促進、林業所得の向上、雇用の創出

 

林業事業者−(山林未利用材)−チップ工場−(木質チップ)−ガス化発電設備−(電力)−拠点、錦江町田代支所、避難所、保険福祉センター、(温水も)−ライフライン、宮前水源地(ポンプ場)−(温水・焼却灰)−農業(温水は近隣農地へ、焼却灰については、成分調査を実施後肥料利用を検討。

 

[今後の展開]

余剰のエネルギー(夜間・休日の余剰電力や温水)があることから、地元企業及び大手企業参画による「錦江脱炭素スマートグリッドエリア(注3)」を構築し、発電設備で生産した全てのエネルギーをエリア内で活用することを計画中。農業分野では、レンコン、イチゴなどの施設園芸への熱供給も計画している。

この事業により、町内における『しごと(雇用)』、『仲間(連携)』、『人(人材)』づくりを誘発し、地域における産業間の連携及び環境に配慮した自発的な産業の新興を図る。

 

☆まとめ

錦江町木質ガス化発電システムの挑戦は、この「おおすみ地区」全体を、積極的に次世代に導く活動でした。この地域を次世代に導く先導者として、凄く貢献してきたのです。今回の鹿児島大隅半島南部の林業再生・山村新興の推進に、皆が結束できたのも、この先行的な活動の影響が大きかったと思います。

このあと、この地域を次世代へ向けて、熱い熱意をもって牽引している村上博紀さんの活動を、もっと詳しく知るために、ネット討論をします。これを次回のブログで報告します。村上さんが、スタートアップとして、目指してきたもの、「おおすみ」の未来にかけている希望に満ちた思いなどが、明らかになると思います。私は楽しみしております。

 

(注1)ブラックアウト:災害時の全域停電。

(注2)補助金:環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」。

(注3)スマートグリッド:双方向の情報通信制御技術を駆使して、発電電力・送電電力・消費電力を監視・制御しながら、エネルギー効率・電力品質・安定供給面から全体最適で運用・管理される次世代電力ネットワーク。

 

参考資料

(1)鹿児島県錦江町−「未利用資源の活用」と「防災」を両立する木質ガス化発電、錦江町。

(2)椎野潤(続)ブログ(298) 鹿児島県大隅半島での「林業再生・山村振興」の動き(その3) 鹿児島の森林経営管理制度の講演録 2021年3月19日。

 

[付記]2021年5月14日。

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