人口減少下で税収増8町村 原石磨き住民税増やす

「次世代産業社会へ」「地域創生・山村振興&林業再生」

 

2021年8月 (№135)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(346) 人口減少下で税収増8町村 原石磨き住民税増やす 2021年8月31日

 

☆前書き

人口減少の中で、住民の収入を増大させ、個人住民税収を増加させた自治体が、8町村あります。2021年7月3日の日本経済新聞が、これを書いていました。今日は、この記事を取り上げてブログを書きます。記事は以下のように書き出していました。

 

☆引用

「産業が空洞化する地方で、住民からの税収を増やした自治体がある。住んでいる市区町村に収められる個人住民税のデータを分析すると、農業や水産で街をあげた工夫が実った自治体が目立つ。人口が都市へ偏る中で、住民の稼ぎを増やせば自治体の財源も潤い、地域の活力は高まる。」(参考資料1、2021年7月3日の日本経済新聞から引用)

 

☆解説

日本経済新聞社は、総務省の決算状況調べで、2019年度の個人住民税を2009年度と比べて、増減率をランキングしています。国内全体の個人住民税収は、景気が回復して、この間に13%伸びました。これを上回る自治体は善戦です。

市区町村別に見ますと、それぞれの努力が見えてきます。個人住民税収の増加率の上位30位のうち、8町村では、2019年の人口が2009年を下回りました。

個人住民税収の増加率2位の北海道猿払村は、10年間で人口が8%減りました。一方で住民税収は99%も増えたのです。ここでの起爆剤はホタテです。1970年から、村主導でオホーツク海沿岸に稚貝を放流しました。漁場を整備して天敵のヒトデの駆除に力を入れ、近年は天然ホタテも育ち、水揚げは安定しました。

漁師が預ける漁協の預金残高は、この期間に70億円増えて、200億円を突破しました。1人あたりの個人住民税収額でも、全国7位で、東京以外では最高です。税収伸び率が10位だった、近くの北海道枝幸町も、ホタテの効果です。

税収伸び率が6位の長野県川上村は、レタスと白菜の収穫が伸びました。作付け面積を広げ、温暖化を受けて、暑さに強い品種に切り換えを進めました。これにより、栽培できる期間が伸び、二毛作の農家も増えました。(参考資料1、2021年7月3日、日本経済新聞(山崎純、城戸孝明)を参照引用して記述)

 

☆まとめ

このブログでは、人口減少の市町村の中で税収増を達成している8町村の内、その上位の3町村の具体例を紹介しました。この3カ所は、皆、小さな町村です。でも、何処も、地域にある原石を磨きあげて、自分たちの収入を増大させていました。その原石は、ホタテとレタス・白菜でした。すなわち、ここは漁村と農村でした。

 

しかし、私は、今、ブログを通じ「森林サービス産業(注1)」を基幹とする「新産業」の中で、磨くべき原石を探さねばならないのです。私は、この難問について、いろいろと考えを巡らせている内に、読んでいる日経の記事の中で、良いヒントを見付けました。

沖縄県は、県レベルで見ると人口増加率は、東京都に次いで2位ですが、実はその人口は1%減で、人口減少自治体なのです。その中で中城村は、24%増の人口増加自治体です。しかも、この村は、住民税の増加率増の「トップ10」の4位を占めているのです。この村の事例が、とても参考になります。

中城村では、サトウキビ畑が拡がっていた丘に、25年前に、90ヘクタールの住宅地を造成しました。海が見え、那覇市に車で30分の好条件の地でした。公務員や大企業の社員が移り住み、住民税を押し上げました。医療費助成を広げ、第3子以降の保育を無償化しました。地元の小学校は、2013年の開校以来、2回増築しています。すなわち、中城村には、子育て家族が移住してきていたのです。この中城村では、まず、人口増にする対策をとり、その上で、村にあるサトウキビなどの原石を磨き上げ村民の収入を増やしていたのです。

この手順なら、「森林サービス産業」で原石を磨くことができます。しかも、原石はあるのです。原石は子育ての「子供」です。

2021年8月13日のブログ(参考資料2)で、引用して示したように、「林業サービス産業(注1)」のモニターツアー(注2)に参加した人達は、ポジティブな感情が向上し、ネガティブな感情は改善されました。つまり、人間の感性は安定し、行動は積極的になったのです。

私は、赤ん坊から幼児期、児童期に「森林サービス産業(注1)」のプログラムで緻密に育てると、「精神的に安定した、穏やかな心」を持ち、「積極的に前向きに生きる」大人に育てることが出来ると思っています。

7月23日のブログ(参考資料4)に書きましたように、子育て支援の充実で、子育て時期の家族の移住の誘致に成功して、人口を増やしている町村が、今、かなり増えているのです。ここでは子育て中の親達は、子育て時代の経済援助と、仕事と子育てが両立する勤務体勢に期待して、移住を決断していました。

でも、これに「子供を立派な人間に育てる」ことを加えれば良いのです。そして、その効果について、医学的・科学的なデータを取り、粘り強く検証して、人々に、その効果を熱く伝えていくべきです。磨くべき原石の最大のものは、「人間そのもの」でした。(参考資料1、2021年7月3日、日本経済新聞(山崎純、城戸孝明)を参照引用して記述)

 

(注1)森林サービス産業:多様な生活者を意識し、森林空間が生み出す恵みを活用したサービス。医療・福祉、教育・学習支援、観光・旅行、娯楽、林業等に関わるサービスを複合的にビジネス化。相乗効果を発揮することを目指す。

(注2)モニターツアー:観察旅行、実験成果確認の旅、ワーケーション的作業実験。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年7月3日。

(2)椎野潤(続)ブログ(341) 次世代産業社会へ向けた林業・山村(その1)希望に満ちた友との出合い 2021年8月13日。

(3)椎野潤(続)ブログ(342) 次世代産業社会へ向けた林業・山村(その2)森林サービス産業の解説  2021年8月17日。

(4)椎野潤(続)ブログ(335) 人口増 300市町村 育児支援が効果 2021年7月23日。

 

[付記]2021年8月31日。

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