林業の再生と山村復興への挑戦 対談 大谷恵理VS塩地博文 周辺事業利益を取り込む国産無垢材大型パネル(その1)

☆巻頭の一言

塩地博文さんと大谷恵理さんとの対談の第二弾が、いよいよ、発信されます。世界に誇る日本の美術建築、伝統的な和風住宅と和室が、大型パネルで、合理的に出来ることになりました。

 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2022年4月(№197)

 

□ 椎野潤(新)ブログ(408) 林業の再生と山村復興への挑戦 対談 大谷恵理VS塩地博文 周辺事業利益を取り込む国産無垢材大型パネル(その1) 2022年4月8日

 

☆前書き

私が楽しみにしていたブログが、いよいよ発信です。周辺事業利益を取り込む国産無垢材大型パネル (その1)です。

 

☆引用

対談 大谷恵理 VS 塩地博文 周辺事業利益を取り込む国産無垢材大型パネル (その1)

塩地博文 大谷恵理

 

塩地 : 椎野先生の再びの許可を頂き、大谷さんとの対談を更に深めてみます。前回、国産無垢材大型パネルの開発を宣言しました。仮に、その生産が可能となり、普遍性を帯びた場合、どんな事業変化が予想されるのか、その場合、大谷さんが提唱する「森林直販」は、いかなる事業形態になるのか、対談してみたいと思います。

 

大谷 : 木材の主要マーケットである建築・住宅分野では、省エネ基準の強化、4号建築物の特例問題、JAS材認定方法の改定など、国産無垢材を取り巻く環境が大きく変化していく事が予想されます。また、ウッドショックも未だ沈静化していないと聞いています。無垢材は、加工が少なくて済み、ラミナなどの部品と違って、高い市場価格で取引されます。要は利益率が高いのです。更に、JASには目視等級という視認による品質基準があるために、強度や含水率などの品質管理において製造者に有利な面があります。無垢材の道が閉ざされたら、国産材は大きなダメージを受けてしまうでしょう。それは、再造林や森林事業の活性化が益々難しくなり、森林も山村も疲弊してしまうこと意味します。それもあって、大型パネルの国産無垢材化をお願いしたのです。

 

塩地 : 欧州などを見ても、全てが集成材化している訳ではありません。無垢材も重要な建築材料です。加工を省力化できる無垢材の価値を活かすのは、極めて自然な事です。しかし、主要マーケットで品質管理水準が上がってきているのに、無策に放置したままでは話になりません。「無垢材がいい」と祈っているだけでは、価値棄損が止められません。また、住宅では和室が急速にマイナーな存在になっています。和室の後退は、無垢材価値縮小の核なのです。構造材、それも柱としての製品で、無垢材を活かすのが、喫緊の課題です。

 

大谷 : JAS普及セミナーでも感じましたが、JAS材にする製材側のインセンティブが少ないのです。だから当局も事業者側も、本気に取り組めない、取り組まない中で、時間だけが過ぎてきました。JAS認定の手続きや生産方式はコストアップになり、認定されたからと言って、高く売れるわけではありません。だからといって無為無策では、JAS材で品質が担保されている集成材へ、市場が動いていくのは避けられません。JAS認定と無垢材活用、その延長線での無垢材大型パネル化は、是非とも成し遂げて頂きたいのです。

 

塩地 : ここでは、その無垢材大型パネル生産が成功した場合に、何が起きるのかを、話してみたいと思っています。また、国産材サプライチェーンが完成したといえども、本当に再造林にまで繋がるのかも、大谷さんのご意見を伺いたいと思います。国産材サプライチェーンが完成すると、流通改革が成し遂げられます。流通経費、トラック輸送、保管費、人件費などが省かれます。色々なケースがありますが、概ね、20%程度のコストダウンになります。それが大型パネルまで付加価値を上げると、木材価格は、中間流通価格から小売り価格へと階層を一段上げます。その双方で、1棟あたり50万円内外の利益をもたらすと想定しています。しかし、手間も増えますし、大型パネルの製造費もかかります。確かに利益は上がりますが、再造林へ充分かと言えば、疑問も残ります。

 

大谷 : 私が目指しているのは、再造林費用を賄える木材利益なのですが、それ以上に心配しているのは、林業や林産業で働く、現場従事者の待遇です。大型パネルは、大工さんの過酷な労働を軽減するために開発されたと聞いています。林業従事者も、大工さんと同様に、多くが低待遇です。その上、十分な教育や安全管理の欠如に起因する労働災害が多発し、毎年1000人に一人以上が亡くなっています。今でさえ少ない就労者が、今後は更に減っていくと予想されます。大型パネルは、木材利益だけでなく、サッシや断熱材などの建築部材の利益も取り込めると伺いました。その利益を、林業の現場力を維持するために、「山で働く人々」へ分配することは可能ではないでしょうか?

 

塩地 : 大型パネルは、木材だけで成立しません。その生産過程では、サッシや断熱材、防水紙、金物までも包含されていきます。それらをここでは建材と称します。大型パネルまで生産階層を引き上げると、建材利益を取り込むことが可能になるのです。さらに言えば、先月発表した、外装材の加工も、大型パネルの情報処理の中で、副産物として、可能になります。内装材も、床材も、屋根も、階段もと、次々と加工範囲を拡張していけるのです。要は、木材加工業から、木材・建材加工業、更には建築業までも、進んでいけるのです。ざっくりですが、木材取引だけだと1棟あたり100万円、プレカットして合板も加わって200万円、大型パネルではサッシ断熱材などの建材も加わり400万円、それに外装材、屋根、床、内装材なども加わると700万円となり、1棟あたりの事業売上は拡大していきます。

 

大谷 : 人口減少から住宅着工数の減少も確実視されていますが、建材分野の利益まで取り込む事ができたなら、森林への分配は急拡大していきます。大型パネルから生み出される副次的な情報が建材加工を担ってくれるおかげで、日本の森林を誰よりも高く買う原資に、建材利益も加わるということですね!木材・建材の双方からもたらされた利益が、国産材を高く買う原資になってくれると考えていいですね。

 

塩地 : そうです。だから、国産無垢材大型パネルは、大谷さんの理想の実現のために、是非とも成功させなければなりません。肩の荷が重いです(笑)。

 

大谷 : 私は、慎重な性格です。その場合、建材側で働いていた人や企業の役割を奪ってしまうのではないかと危惧しますが、そうではないと仰っていましたね。森林再生が私の最大の夢で目標なのですが、建築に関わる事業者の不利益になるようでは、拡大が難しいと思います。

 

塩地 : その心配は、(その2)でと思います。こちらも、大谷さんに、是非とも聞きたい話があります。それは、どうやって、生み出された利益を再造林へ繋げていくのかという点です。

 

☆まとめ

この討論で、大型パネルビジネスでは、その情報処理の範囲を拡大させて行けば、外装にも、内装も、床材も、屋根も、階段も、次々と加工範囲を拡大させていけることが、解りました。一棟当たりの事業売上高は、木材だけですと100万円ほどでしたが、この全てが加わると700万円にまで拡大します。事業は、木材加工業から木材・建材加工業、さらに建築業にまで拡大していくのです。すなわち、大型パネルシステムが、次世代産業社会に及ぼす影響は甚大なのです。

 

[付記]2022年4月12日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:椎野潤(新)ブログ(407) 林業テック スタートアップ スカイマティクス 生産性を高める ドローン計測 人工知能(AI)と組み合わせる 2022年4月5日

 

大谷恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

椎野先生は、大分前からロボットと人工知能、ドローンの活躍を予言しておられましたが、いよいよスタートアップの企業が現れてきました。海外でも公けのオープンデータに対してベンチャーが参入してきて、森林資源の解析から計画までを支援するようになってきています。そのノウハウは国際的で面積の広い国ほど有利です。時系列でデータを集積していけば、成長のいいところ悪いところも明らかになり、森林の機能のゾーニングも進むと思います。東南アジアの国々は農業もさかんなので、ITに優秀な人材が集まっています。これらの技術はどんどん進んでいくと思われます。日本もうかうかしていられないです。

 

酒井秀夫

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