キューピー 食品産業の生産性向上へ  惣菜の自動盛り付けロボット 自ら開発 

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2021年4月(№94)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(305) キューピー 食品産業の生産性向上へ 惣菜の自動盛り付けロボット 自ら開発 2021年4月13日。

 

☆前書き

ここ数回のブログでは、次世代に向けた先端技術におけるデープテック(注1)について述べましたが、食品産業の生産性向上においても、ディープテックの取り組みが存在していました。今日は、これを取り上げます。2021年3月18日の日本経済新聞は、以下のように書いています。

 

☆引用

「キューピーが、生産性の低い食品産業を変えようとしている。画像データを駆使した惣菜の自動盛りつけロボット、原料の検査装置を開発し、人手が足りない地方の中小食品会社に提供する。食料品製造業は従業員数で製造業最大の産業だが、労働生産性は低い。マヨネーズだけでなくロボットも作り、食品だけを売る会社からの脱皮を目指す。(参考資料1から引用)」

 

☆解説

マヨネーズ製造のキューピーが、次世代食品産業を導く存在に、脱皮しようとしています。

キューピーは、人工知能(AI、注1)に、ポテトサラダだけで、数百の画像データを学習させました。まず、大きなケースの中をポテトサラダで満杯にし、人手で盛りつけて惣菜が、どんどん減っていく様子を何度も撮影しました。

キューピーは調味料だけでなく、惣菜事業も手掛けており、惣菜作りの知見があります。撮影する角度や明るさを変え、数百種類の画像やデータを集めました。さらに、AIにデータを学ばせるディープテック(注2)の一種である「アノテ―ション(注3)」と呼ぶ作業  で、白くて分かりにくい、ポテトサラダとケースの境界を、ロボットに把握できるようにしました。

また、数百のデータと3Dカメラを連動させ、山積みのポテトサラダの形が変わっても、狙った場所をアームでつかめるようにしました。一つの容器に盛りつける時間は十数秒で、現時点 では、ロボットは試作機ですが、誤差は10グラム程度で済んでいます。人手でなければ無理だと思っていた作業ですが、容器によっては人手より早く盛りつけられるのです。

2021年度には、ラインを使った本格的な実験に入ります。ロボットの低コスト化に挑み、2022年度には、キューピーの惣菜工場に導入します。キューピーは、300種類の惣菜を作っており、ボテトサラダ以外の惣菜にも活用していきます。

 

キューピーは、調味料や惣菜の生産・販売だけでなく、データを活用した自動化のノウハウの提供に、5年前から動いています。2017年には、原料を自動で検査する装置も開発しました。コンベアで流れる野菜のデータが必要なため、じゃがいもだけでも、100万通り良品の画像を撮影しました。変色や変形といった不良品を発見すると、空気を吹きつけて取り除きます。このように原料検査を自動化してきました。装置価格を海外製の10分の1と割安にし、外販も進めています。

今後、原料検査装置、盛り付け自動ロボットを組み合わせ、中小の食品会社に、割安の自動化システムを提供します。このシステムでは、配送品の受発注履歴や天候、イベントによる需要予測をするためにも、このデータを使います。

キューピーは、惣菜について、購買履歴など30万件のデータを保有しています。ここに、中小食品会社を含めた、様々なテータを組み合わせて、多くの企業が共有できるようにするのです。(参考資料1、2021年3月18日の日本経済新聞(逸見純也)を参照して記述)

 

☆まとめ

経済産業省の2019年の工業統計調査によりますと、食料品製造業の従業員数は、114万人と製造業で最も多く、製造業全体の15%を占めています。製造出荷額も29兆円で、輸送用機械器具製造業の70兆円に次ぐ規模となっています。

一方、2018年度の企業活動基本調査をみますと、食料品製造業の労働生産性は、654万円となっており、製造業平均(1170万円)の5割強に止まっています。食品メーカーは中小企業が多く、導入コストが高いロボットによる自動化は、進んでいないのです。

厚生労働省によりますと、求人したとき、どのくらい必要数に足りないかを示す欠員率は、「食料品、飲料・たばこ・飼料製造」は2.1%と、全製造業の1.7%よりも高く、人手不足感は強いのです。いかに安いコストで自動化を進め、生産性を上げられるかが、永年の課題になっていました。(参考資料1、2021年3月18日の日本経済新聞(逸見純也)を参照して記述)

食品産業の生産性向上おいても、ディープテック(参考資料2、注2)の取り組みが行われていました。林業の生産性向上でも、同じ取り組みが実施できます。すなわち、関連するデータを人工知能(AI)に記憶させ、そのAIの指示で動くロボットを開発し、産業の生産性を向上させるのです。これなら、どの産業でも実施できます。

 

(注1)人工知能(AI:artificial intelligence):「『計算(computation)』という概念と『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野を指す語。

(注2)ディープテック:科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組みのこと。産業・社会に大きな影響を与える科学面での重要で深い発見や、最先端革新技術の総称。

(注3)アノテ―ション(annotation):あるデータに対して関連す付加情報を注釈として付与すること。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年3月18日。

(2)椎野潤(続)ブログ(302) 京都大学発スタートアップ 脱炭素の潮流の中で頭角 「ディープテック」深い研究に裏打ちされた化学系立ち上がり、2021年4月2日。

 

[付記]2021年4月13日。

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