「輸入材は国産材よりも安くて良い」は過去のもの

□ 椎野潤ブログ(塩地研究会第43回) 「輸入材は国産材よりも安くて良い」は過去のもの

木村木材工業株式会社 代表取締役 木村 司

はじめまして。埼玉県で無垢造作材加工工場を経営する木村木材工業株式会社 木村 司と申します。私は、輸入材は国産材よりも安くて良いものだという木材業界の不文律が音を立てて崩れているように感じます。それは、大径木から製材される造作材の原材料輸入が大幅に減少しているのに対して、国産材の大径木化が進んでいるからです。

当社では窓枠、ドア枠などの無垢造作材を加工しており、そのうち8~9割が柾目材です。主な樹種はカナダツガですが、最近は国産材比率が上がってきています。カナダから輸入されるクリアー材と呼ばれる無節のとれる木材製品はここ数年大幅に入荷が減少し、価格も高騰しています。一番の原因は自然保護です。カナダBC州で自然保護派が政権を握り、250年生以上の原生林を保護するために伐採延期区域が定められました。さらに先住民と木材会社との間で協議をしながら伐採が行われるようになったため、カナダツガだけではなく、スプルス、ピーラー、レッドシダー、ベイヒバなどカナダの原生林から産出されるクリアー材のとれる大径木の伐採が大幅に減少しています。幅の広い柾目材は大径木からしか製材できないため、大径木のハイグレード丸太やクリアー材の価格が高騰しており、当社の3年前の仕入価格は安い順からカナダツガ→スギ→ヒノキの順でしたが、現在の仕入価格はスギ→ヒノキ→カナダツガの順になっています。今後、カナダの原生林から産出される大径木はさらに減少が予想されるため、カナダから日本に輸入される幅150mm以上の柾目材はさらに高騰するだけではなく、入手困難になると私はみています。

その一方でスギの末口直径30cm以上の大径木が増え続けていることはみなさまご存じの通りです。大径木の利用方法としては平角製材、ラミナ製材、合板、バイオマス利用、輸出などがありますが、私の提案は増え続けるスギの大径木で上小節以上の柾目板材を製材することです。以前はカナダツガの価格がスギよりも安かったため、スギ柾目材はごく一部でしか使われませんでしたが、価格が逆転し、輸入材の柾目が入手困難になってくるとスギ柾目材が見直されるのではないでしょうか。

輸入材は国産材よりも安くて良いものだという不文律には輸入材のほうが国産材よりも大きな丸太から製材されるという背景がありました。大きな丸太から製材された製品のほうが、小さい丸太から製材された製品よりも良いことが多い(例外はあります)からです。しかし、輸入材の質が大径木の減少によって落ちてきている現在、国産材の大径木から製材される製品が増えてくれば、むしろ国産材のほうが輸入材よりも品質が良く、安くなると私は考えます。

欧米では大径木が減少し続けていますが、日本では大径木が増え続けています。この貴重な大径木に高い付加価値をつけて利用することで山全体の価値を上げたい。「輸入材は国産材よりも安くて良い」は過去のものだと私は思いますし、誰もがそう思える時代が来ることを期待します。

☆まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫

無垢造作材加工工場を経営しておられる木村 司さんからの発信です。
大径木から製材される造作材の原材料輸入が大幅に減少し、仕入価格も、安い順からカナダツガ→スギ→ヒノキだったのが、現在はスギ→ヒノキ→カナダツガと逆転が起きているとのことです。一番の原因はカナダにおける自然保護の高まりと先住民との間の協議です。今後、カナダから日本に輸入される優良柾目材は入手困難になり、スギ柾目材が見直されるのではないかと予測されています。
戦後、日本にも天然林がまだ残っていました。その天然林の伐採が進みだし、減少分だけ外材が輸入されたという説があります。無垢造作材や木材の品質に対するこだわりが国民には根強く生き続けていると思います。ここにきてようやく戦後植栽された人工林が大径化してきました。木が細い間はヤング率も低くて安定しませんが、大径化することで辺材部がしっかりしてきます。大径化した人工林に天然林の姿が宿り始めてきたともいえます。この大径木に高い付加価値をつけて山全体の価値を上げたいという木村さんの貴重で心強い一石です。

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