□ 椎野潤ブログ(大隅研究会第九回) 「おおすみ百年の森」の課題
大竹野 千里
昨年発足しましたNPO団体「おおすみ100年の森」も、おかげ様で各メディアに取り上げられるようになり、活動が知られるようになりました。と同時に、当団体へ質問を頂くことも多くなりました。今回は、これまで頂いた質問にお答えする形で、見えてきた課題を整理してみたいと思います。
質問に、『NPOが森林経営計画を作成する場合、森林組合と競合しないのですか。また、その後の施業は誰がどのような契約でするのか?』と聞かれます。
当NPOは、流域の森林組合も民間の林業事業体も同じ会員です。NPOとして森林経営計画を立てる際は、組合と代表の林業事業体が一緒に叩き台を作ります。その叩き台を元に、川上・川中・川下の全承認の元、再造林を前提とした実効性のある計画を立てます。
次に実際に作業をしていくわけですが、その際は手数料を支払いいただきます。この手数料は川下からサプライチェーンによって再造林を前提とした取引から生まれます。この手数料は、経営に即さない森林の再生にも使われます。
森林経営管理制度に求められるのは、内容の透明性と作業が実際に可能かどうかの実行性です。この先、事業を進める中で、「透明性と実効性」が持続する組織体制を作る必要があると感じています。
また、『鹿児島県の意欲と能力のある林業経営者として申請・登録がありますか?』と聞かれることも増えました。
一般市民の皆さんの関心の高さは、私たちに対する期待の表れとも言えます。当NPO団体の(川上)会員は全て鹿児島県の意欲と能力のある林業経営者として登録がありますし、鹿児島県CRL認証においても一つ星以上を持った事業体です。今後、市民の皆さんの期待に応え続けられるよう作業員一人一人の技術向上も必要です。
まだまだ道半ばですが、「地域の未来」という同じ目標を持った仲間が今後増えていくことを願っています。
☆まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫
森林経営計画を立てる際に、森林組合や代表の林業事業体と一緒に叩き台を作って、その叩き台を元に、川上・川中・川下の全員が再造林を前提とした実効性のある計画を立てておられます。このような集まりを一般には円卓会議とかプラットフォームと呼んでいますが、カナダのポール・スチュアート氏は利害関係者が情報を持ち寄る場をデザインシアター(劇場)と呼んでいます。関係者がそれぞれ主役となって、地域の林業・木材産業をデザインしていきます。
NPO団体「おおすみ100年の森」が受け入れられているのは、意欲と能力のある林業経営者に他なりませんが、意欲だけあっても周囲からは受け入れられません。目的達成のための情熱、熱意があるから透明性と実効性が備わり、本気度が伝わって信頼が生まれているのだと思います。また、再造林費用はどうやって捻出し、誰が負担するかは、全国的に大きな課題です。経営に即さない森林の再生も含めて、「おおすみ100年の森」の取り組みが注目されます。