需要情報を分析、統計して、売れる商品を生産する流通の重要性 CRM(Customer Relationship Management)

□ 椎野潤ブログ(伊佐研究会)  需要情報を分析、統計して、売れる商品を生産する流通の重要性 CRM(Customer Relationship Management)

先日、兵庫県宍粟市にある木材加工業「株式会社しそうの森の木」をご訪問させて頂きました。「しそうの森の木」は単に木材加工業というだけでは勿体なく、木材総合サービス業というべき業態であると感心致しました。最近ではウッドショックということもあり、日本の林業問題、スギをはじめとする国産木材流通における価格の低迷などがようやく社会問題として広く知られて来ました。

「しそうの森の木」は、木材流通の川上から川下の一体化を図り流通コストを削減することによる立木単価での森林(山主)への利益還元、 既存製材手法を大きく変えない商品開発、高付加価値化による木材の適正価格の実現、山の木が家になるまでにしっかり関わることで明確化したトレーサビリティによるお客様(住宅消費者)への安心提供を行っておられます。そしてこれらを、常務取締役三渡保典氏の熱い探求心のもと、一貫して緊密な需要の情報分析と統計に基づいて設備投資し工場運営していることが圧巻でした。需要数量に伴う生産計画をたてることで生産効率を上げ、木材加工では製品歩留まりを徹底的に上げるように、需要に合わせた売れる製品サイズを鑑みた木取りを、原木径級に合わせて細やかに研究し実運用しています。解説してくださる原木断面の木取り図から無駄のない木材活用が見て取れ、それも出来るだけ付加価値の高い(高価格で取引される)製品に加工しておられました。そして日本全域で抱えるスギの大径木化にも対応すべく独自の芯去り材加工の木取り方法を考案され、乾燥技術と合わせて建築での実活用に結び付けておられます。また関連会社の工務店「株式会社山弘(ヤマヒロ)」は骨太で男らしい住宅を設計施工が特徴で、構造材を表すことが多く、より木を美しく表現できるように緊密に連携しております。「しそうの森の木」は木材の付加価値を上げるため、木の表情を美しく保つ真空減圧乾燥機という木材乾燥機を導入したり、職人の手刻みをあえて残したプレカット加工をしたりと、やれることをひたすらに頑張っておられました。まことに感嘆の連続の視察をすることが出来ました。まだ稼働したばかりで課題も多いということでしたが、国内の木材活用のモデルとして成熟していくことであろうと楽しみです。

我が社森林パートナーズ株式会社は、国内森林の維持・再生と地域産材の活用促進のために、地域工務店による山元からの原木直接購入をすることで山元への適正な利益還元をし、地域工務店・木材加工業・林業のフラットな連携、六次産業化を実現する「森林再生プラットフォーム」を、需要情報を起点に構築し提供しております。「しそうの森の木」と「株式会社山弘」との連携と同様に需要情報を生産側に届けることから発することで同様です。丸太から構造材を採った残りの材の有効活用や、大径木の活用など、課題として抱えておりましたが、この度の視察で大いに参考になる技術に触れることが出来ました。「森林再生プラットフォーム」に参画する複数の工務店間での端材を活用した商品開発や材の標準化をし、使用する木材の付加価値を上げていきます。その他、材のストックの課題やデリバリーの課題などありますが、地域工務店以外の木材需要者の情報も収集、統計してビジョンを共有し、課題解決を一歩ずつ進め、また消費者との価値共感を産み、関係者全体での関係強化、獲得収益の最大化に邁進してまいります。

☆まとめ 「塾頭の一言」

需要情報を起点に森林再生プラットフォームを構築しておられる森林パートナーズ株式会社伊佐研究会の「しそうの森の木」と「株式会社山弘」の視察報告です。視察対象の両者の連携も、森林パートナーズ株式会社と同様に、需要情報を生産側に届けます。「しそうの森の木」では、一貫して緊密な需要の情報分析と統計に基づいた経営が圧巻とのことで、原木径級に合わせて無駄のない付加価値の高い木材活用をしておられました。「株式会社山弘」は、より木を美しく表現できるように骨太で男らしい住宅の設計施工が特徴で、緊密な連携は感嘆の連続でした。昨今、木材貿易が不安定になっていますが、今回の報告がこれから特殊事例ではなくなり、全国各地でそれぞれの状況に応じた取り組みが生まれれば、日本の森林・林業は勝ち残っていくことが可能です。そのための貴重な虎の巻です。

酒井秀夫

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